52第6話自惚れ殿下
ファウンデーションの夢
第七部
アルカディア・ダレル
第6話
自惚れ殿下
あらすじ
ジータ・マロウの娘ロアには、極めて聡明な娘ベイタがいた。
ベイタとミュールの壮絶なる物語は、ファウンデーション設立から300年後に起こる。ベイタの物語はこうして始まる。
ベイタの両親がガール・ドーニックの農園を再び買い取り、住み始めた。ベイタもモーヴ(ターミナスの首都)に住んでいたのでしばしば泊まりに来ていた。
時代は、ターミナスも徐々に往時の精彩を欠いて来たインドバーの世襲政権のもと、時代の暗雲に気付いていた数名の人々がいた。
一人は心理学者、エブリング・ミス。もう一人は貿易商人のランデュ・ダレル、そしてベイタ・マロウもその一人に加えなければいけない。
ベイタ・マロウはトラン・ダレルと結婚し、トランの出身星ヘイブンに赴く。そこで、トランの叔父のランデュに新婚旅行にカルガン行きを勧められる。ハネムーンは数日で今後の銀河を揺り動かす大事件に移行する。
ミュールの宮殿から道化師がハネムーン中の両人に助けを求めて来た。
その道化師はボボと名乗った。彼らは早々宇宙船の格納庫に戻る。
そこに第三者がまた登場する。
二重スパイ!?
そのハン・プリッチャー大尉は、すでにミュール(ボボ)によって、洗脳されていた。
さらにミュールはトラン・ベイタの宇宙船でターミナスまで同乗し、モーヴ市に降り立ち、ファウンデーション軍の宇宙戦艦軍に喪失感を与え、ハリ・セルダンの出現する時間霊廟に集う人々を降伏感へ誘導し、一日に、完全占領してしまった。
最後の救いの砦であったファウンデーションの遊軍、独立貿易商人協議会連合の星々も、戦意を喪失。ミュールの圧倒的な感応力の前ではなすすべもなかった。ヘイブンに一時避難したベイタ夫婦とボボとエブリング・ミスは、トランターに赴くことになった。ランデュはボボの存在に何かを察するようになったが、ランデュは残った。
トランターでは、旧ストーリーリング大学付近の自称ヘイム人(コンポレロン人)たちの農村共同体が300年祭の催し物の準備で忙しくしていた。そこの村長、リー・センターは彼ら4人を丁重に向かい入れてくれた。
彼ら4人を、トランターの農村指導者家族は丁重に、ファウンデーション300年祭の晩餐会に、趣向を凝らして招き入れた。その席には同じくネオトランターから来ていた(?)、一応議会議長と言う立場の、ヴェナ・ビリ女史がいた。
エブリング・ミスはボボと一緒にストーリーリング大学の一室に籠って、当のミス博士は食事も絶って一心不乱に調べものに没頭していた。
事件が突然起きたのは、そんなやさきだった。エブリング・ミスは、何かを発見して、訪ねて来たベイタに口を開こうとした瞬間のことだった。
ヴェナ・ビリ女史も程なく息を引き取る(停止する)。
そのエブリング・ミスとボボがいた場所が、300年前のハリ・セルダンの心理歴史学の研究室であったことがわかるのは、ベイタ・ダレルの孫アルカディアがトランターを訪れてからのことであるのだが。
結局、ミュールはエブリング・ミスに密着することによって、第2ファウンデーションを探り当てて、撲滅を計ったのだが、ベイタと第2ファウンデーションに阻まれたことになった。
ミュールはかねてから目論んでいた第2ファウンデーションの在処をダゼンダと振り替えることにする。
のちにこの一連のミュールに対する誘導には、ベイタ、第2ファウンデーションの他に、反ミュールの勢力が関わっていたことが明らかとなる。
こうしてベイタの活躍は終わり、次の舞台に替わる。ベイタの孫、アルカディアの舞台である。
読者は『ファウンデーションの夢』の続編『ミーターの大冒険』の主人公、ミーターの姓が、マロウであることはご存知であろう。
要するに、ミーターの主人、アルカディアが、このロボットにマロウの姓をつけた理由が、祖母であるベイタの旧姓がマロウであって、そのベイタをこよなく尊敬していたからであったことがお分かりになったでありましょう。
一方、ミュールを抑えたはずであった片方のファウンデーションは、新たな次の難局が起ころうとしていた。それに備えることになる。
その時の第2ファウンデーションの指導者、いわゆる第1発言者は、次期発言者会議の候補者であるペアレス・アンソーアにその任を委ねる。
夜な夜なの会合がトラン・ダレルの屋敷で行われていた。父の名前を頂いたトラン・ダレルに元研究所の同僚の弟子と名乗るペアレス・アンソーアが訪れる。
ところがペアレス・アンソーアは、一階の玄関のドアを叩いたが、生憎家政婦が休暇中で、中に入れなかった。仕方なく彼は二階の窓を叩いて、中にいるアルカディアに開けてくれるように頼むしかなかった。
彼もその会合に加わり、モーヴの出身と偽って、電子脳写装置を四人にかけたいと申し出る。
始めから彼を怪しんだのは、トランの従兄弟で、図書館員であるホバー・マンであった。
もう一つの議決がされようとしていた。カルガンに第2ファウンデーションの基地がある、という。そこにマンが単独で潜入するという使命だった。
アルカディアの長い家出の休暇が始まろうとしていた。それはモーヴ市に隣接するアルティメット空港からの出来事であった。が、それが全銀河を揺り動かすことになる。
はたして、アルカディアの密航の目的とは?
52
ステッティン カリア、いつも言ってるだろう!勝手にわしの執務室に入るなって!それにわしの機密の話、聞いてどうする。国家機密なんだぞ。
カリア ごめんなさい、プーチー。入り口のボサッて立ってる警備兵が敬礼して、通してくれたんですから。ファウンデーションからの来賓ですって。可愛らしい女の子、アルカディアちゃんて言うんですか。後で、プーチー、お願い。会わせてね。楽しみだわ!
ステッティン カリア、いつも言ってるだろう。人の前では、プーチーなんて呼ぶなって。れっきとした称号があるんだからな。銀河連邦、第一市民、ステッティン卿だ。えへん、閣下と呼べ。
カリア わかりましたよ、プーチー。いえ、閣下。
わかったら、レヴ・メイルス第一大臣と話中だ。さっさと出ていってくれないか!
ステッティン メイルス、それにしても、とんだ鴨が葱を背負(しょ)って、舞い込んで来たもんだ。
あの諜報部のハン・プリッチャー将軍から昔、聞かされた話なんだがな。ミュールが亡くなる前に言ってたそうだ。「もう少しで、この銀河を手入れられた。もう少し、俺の寿命があれば、そしてあのベイタ。ベイタ・ダレルを手に入れられていたとしたら!」と。ミュールが出来なかったことを、わしが出来るかも知れん。あのベイタの孫が来ているのだな?
名門の。ハーディンやマロウの子孫のな。
そいつの婿になれば、ミュールの後継者のわしが銀河の支配者になれるってもんだ。メイルス、ファウンデーションをもう一度、ぶっ潰すんだ。ははは!
メイルス 閣下、先代ミュール様は、普通の人間ではありませんでした。軽く考えてはなりません。それに第二ファウンデーションの所在さえ判ればいいのですが?でもやって損なことはないかも知れません。
カリア プーチー、貴方って、私を単なるミストレス(愛人)のままにしておくつもりなんですか?悔しい!
ステッティン カリア、まだそこにいたのか?出て行ってくれって言ってるだろう!
yatcha john s. 「自惚れ閣下」
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます