171第9話ふたたび 宇宙潮流
ミーターの大冒険
第七部
太陽系
第9話
ふたたび 宇宙潮流
あらすじ
ファウンデーション暦492年(西暦25059年)末、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号はアルファ星から出発して太陽系に入った。
人類の故郷の星系。懐かしい星、地球。
かつて、カビレ星系と言われていた太陽系。かつてアタカナと言われていた地球。
R・ミーター・マロウの主人アルカディアの志しを携えて、アルカディアや同士ジスカルド・ハニスらのなし得なかった志しの実現の領域に確実に入ろうとしていた。
はたして地球の放射能汚染を駆除することができるのか?
そしていよいよ太陽系外縁部のオールトの雲を抜けて待望した太陽系に突入して行く。
鋭さを増したミーターの推理力は予測通りに土星に遭遇させ、地球のかたわれともいわれる月に不死の従僕の気配を感じさせる。
そしてついに不死の従僕が太陽系第3惑星地球の大きな衛星、その名も月(Luna )にいることを確信する。
新たな天体物理学者のミーターは、不死の従僕が月にいる理由を全て「宇宙潮流」理論で纏めあげる。
そしてミーターは人類と「宇宙潮流」との関わりについて惑星環境の土壌「墾化」現象に言及する。
そして、ミーターはさらに ...
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ミーター まさに宇宙彷徨(さまよい)だ。宇宙ヒッチハイカー。別な言い方だと、宇宙ノマドだ。
イルミナ そうなんですね!シンナックス人の生き様の「新しさ」、「移動」こそ、根本、ということですね。
惑星土壌の「墾化」だ!
イルミナ ボス、さっき、ターミナスにも墾化が関係あるとおっしゃいましたね。
ミーター 大いにある!放浪のシンナックス人はどういう具合でターミナスに来て、道標まで造って、さらに、特定の未来の人物にターゲットを絞ってメッセージを遺したのか、を考えれば自ずと分かるというもんだ。
その墾化のシンボルがジンジャーの花とラヴェンダーだ!
イルミナ なるほどね、宇宙潮流ね。すべて辻褄が合いますね。もちろん、特定の未来の人物とは、ベリス・セルダンですね。
ミーター そうだ、彼女が、時間差はあれ、特殊な有り様で彷徨(さまよ)えるシンナックス人に遭遇した唯一の人物なのさ。
シンナックス人は、彼らの感応力にしたがって、宇宙潮流に乗ってターミナスにたどり着いた。いいや、もっと正確に言うなら、ターミナスを銀河系最後のジャンプ台として利用し、跳躍力を何倍にも高め、銀河外部の深宇宙に飛び出して行った、と観るべきだ。
宇宙潮流とは、ある意味で、人類或いは人間の感応力に反応して変化する存在と考えればいい。宇宙潮流と人間の意識が交流する、と言うことだ。
イルミナ おっしゃる意味が、わたしにも漸く分かってきましたよ。例のロボット第零の法則の「捕捉」にある真理律ね。
「直感、感応、触れ合い、溶け込み、融合、歓喜、充満、そしてその後の再生」ですね!
またまた驚きですこと。
ミーター そんなに驚くことでもあるまい。
種明かしは簡単さ、イルミナ。ハニスさんの発見したジョン・ナックの『歴史思想書』に出て来る概念でね、それに俺なりの推理によって展開しただけだ。
イルミナ それにしたって、よくもまあミーターさんの推理力って底なしだわ!
それに、ジョン・ナックって、シンナックスやアルファの原動力になった地球時代の科学者だと思いますけど、どんな人物だったのかしらねぇ!俄然、興味が出てきました。
ミーター 今はただ、『宇宙潮流理論』の産みの親、とだけ言っておこう。
イルミナ ミーターさん、怒るわよ!もう少しのサービスを!わたしには、それを聞く権利がありますからね。
ミーター なんたって、お前は、「銀河帝国辞書編纂図書館」だからな! ハッハッハ!
そうだな、もう少しならいいぜ!
忘れてやしないよな、オーロラのアンテンニンの洞窟のことを。
イルミナ はい、ジスカルド・レヴェントロフの頭部!
そこにも銘が打ってありましたね、「第零の捕捉律」。
ミーター それだよ、イルミナ、俺の推測だと、ダニール・オリヴォーの陽電子頭脳の飛躍の理由なんだがな。どう考えても、人間との感応交流の結果としか考えられないんだよ。
そして、そのダニール・オリヴォーもまた、ジスカルド・レヴェントロフによって精神感応力を伝授された。
その墓標に、ハッキリと印されてあったぞ。
そこから推測するに、ジスカルド・レヴェントロフは、オーロラの社会学者ロイ・ネメヌウ・サートンによって、地球の宇宙ドームに滞在している期間中に、発見された、とね。そしてジスカルドの内部構造自体を徹底的に調べた。その新たな構築が、後のヒューマンタイプの二体の製作へと進展したんだ。
その先も言うのかい、イルミナ!
イルミナ お願いします。もう少し。焦れったい!
ミーター そうだな、推理の最後の結末まで話すことになってしまったな。ハッハッハ!
つまりだ、ジスカルドの感応力とは、ファストルフ博士や、サートン博士のもとに、ジスカルドが置かれた以前から、備わっていたと観るべきだ。そして、後のダニール・オリヴォーとイライジャ・ベイリーとの親交が彼の陽電子頭脳を飛躍させたと同じように、ジスカルドの感応力も人間との交流によっている、と観るのが妥当だね。
イルミナ そうすると、件(くだん)のジョン・ナックとジスカルド・レヴェントロフとの友情関係による、とおっしゃるのね?
ミーター そうだけど、それ以上は、単なる憶測になってしまうけどな。
イルミナ 納得!納得!ミーターさんたら、宇宙潮流の話しからだいぶ飛躍しましたね!
ミーター ハッハッハ!うん。
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