『今日もみんなで良いモノつくります!』

『経営について』の考え方と従業員の『究極のモノづくり』に挑戦する姿を伝えたいと思います。

『成長エンジン(Business Engine)』について

2007年06月13日 | 経営の事
創業当時の話を少ししてから、表題の「成長エンジン」について書きます。

会社を創業して、間も無く丸21年(1986.10.08)になります。
本当に何も無い所からの船出でした。
ただ、‘モノづくり’をして見たい、係わりたいと言う思いからの出発でした。
それは、遡ることサラリーマン時代に友人とバイクや電車で、万葉の空気に触れて見たいという心持ちから‘奈良’に行く機会が数回あり、そんな中、訪れる先々での寺々で、多くの‘仏像’を見る機会がありました。その仏像のなかで‘木像(木で造った仏像)’は、仏師が木像を彫るのではなく、‘木の中から眠っている仏様を取り出してあげる’作業をしていると言う話を聞いた事があり、その事が、頭の中に残っていました。

そんな中で、アルミ材で加工した、完成した精密部品とその加工に使ったアルミの素材が一緒に置かれているのを見る機会がありました。その時、アルミの完成品はその素材の中から‘取り出してあげたんだ’と思いました。勿論、そうでは無い事は分かっていましたが、その時、直ぐに仏師のことが想像できました。今、思えば衝撃的ですらありました。
誇張して言えば、自分も仏師の様になれるかも知れないと思った、瞬間でもありました。
その頃は、まだ切削加工というものを全く知りませんでした。世の中に、こんな業界があるんだくらいのそう言う印象でした。勿論、機械の種類や名称、加工用語、そして工具の種類や目的、エンドミル(フライス盤に取り付けて使用する刃物)という言葉すら知りませんでした。それから、そこの場所で働かせて貰い、約1年間、現場の手伝いをしながら営業を経験させて頂きました。そして、その出会いから、1年位での創業でした。アパートの玄関に、机やコピー機、ファックスを置いての出発になりました。
当然、最初からモノが造れる訳でも無く、紹介や飛び込みで仕事を探しては、見積もり図面を預かり、直ぐにその‘加工図面’を5人~10人規模の営業マンがいない様な精密部品の加工屋さんに持って行っては、単価を出して貰い、マージンを乗せて、「見積書」を出して‘受注’に繋げて、先ずは生業を立てていました。
いつまでも‘ブローカー’のままでは、受注するにも、直ぐに限界が来るだろうと予感が出来ました。それは受注したモノを外注さんに製作して貰い、そして納品した製品に予期せぬ不具合があった場合などに、全くのギャランティができない事でした。
そう言う緊急を要する場合には、土・日だろうが、祭日だろうが、直ぐに再製作をして納入先の組立等に支障が無いように対応しなければいけません。
ところが、外注さんに不良の話をして再製作をお願いすると、他の仕事が入っているから直ぐには出来ないとか、土・日は家族旅行だとか、この一週間徹夜気味だったから日曜は休ませてくれとか、社長さんが不在だから対応できないとか、今後は他を当たってくれないかとか、の色々な言い訳をされてしまい、そこを押してまで、またお願いをするのも心苦しくて、このままでは、このビジネスの破綻は時間の問題だと悟る事が出来たからでした。
そして、創業から半年位で10坪の倉庫を借りて、先ずは一台機械を購入する事になった訳です。住まいも倉庫の2階のアパートに引越しをしました。
その最初の一台目の機械が「井上高速機械」の‘0番の立型フライス盤MR-7’と言う機械です。現在も、その機械は本社工場の片隅で、偶の活躍の時を待っています。今では、汎用機の機械と言えば、この機械だけになってしまいました。
その機械が、現在凡そ100台位になった弊社の機械群のマザー・マシン(本来は機械の中の機械と言う意味;機械を作るための機械、超高精度機械の事を言います)、スタートの一台目の機械と言う意味で、そう言っても過言ではありません。
それは、当時、少ない資金で購入できる機械はその機械しかありませんでした。確か120万円位だったかと思いますが、当時、これボール盤?と訪れた人に良く言われる位に小さな立型フライス盤です。その機械との出会いがあって、今があると言っても良い様な、会社自身にとっての‘マザー・マシン’と言う意味からも、思いを込めて、そう言う事が出来ます。
それから、その小さな機械1台と寝起きを共にすると言う、毎日になりました。
その頃、深夜、疲れてその機械に寄りかかって寝てしまい、気が付くと切削液が作業着にかかって体に沁みて、その冷たさで目が覚めると言った時もありました。
切削加工の事は、何も知らなかった人間がまがりなりにも‘職人’になった瞬間でもありました。最初の従業員(今年4月1日に取締役生産本部長になりました)が、入社するまではそんな事が続きました。
彼が入社してからも1ヶ月間位は、その‘0番のフライス盤’を2人で交替で使いました。
その頃から運よくバブルが始まり、路地裏の弊社も、その恩恵に預かれる様になり、設備の導入も拍車が掛かり、紆余曲折を経ながらも、今へと繋がっていると言う事になる訳です。
その間の事は、以前のブログでも少し書いた事がありますので、覚えていらっしゃる方もいるかと思います。

さて、これから本題の「成長エンジン」について書きます。

会社が成長して行く過程で、色々な壁・ハードルがあります。
それは売り上げで言えば、先ずは1億円・3億円・5億円・10億円・20億円、そして30億円と言う壁が目の前に立ちはだかります。
他のビジネスをご存知の方は、なんて売り上げが少ないんだと思われるかも知れませんが、純粋に‘モノ’を造って、それを買って貰う仕事ですので、自社製品でもない限り付加価値も多くありませんし、なかなか売り上げが伸びるものではありません。このビジネスで30億円と言えば、かなりメジャーな地位で、組立業務などを主力にされてる企業さんと比較すれば、200人以上の規模に匹敵・相当する位に、設備投資にかなり資金が掛かります。でも、売り上げ規模から比較すると、生産性や効率の上げ方次第では、期待以上の利益を出せる可能性があると思います。
それを合理的に乗り越えて成長出来れば、何も言う事はありませんが、設備や人を増やしても、必ずしも売り上げが増えて行く訳ではありません。
景気動向や自身の属する業界の状況などに左右されながら、売り上げも上がったり下がったりしながら、なかなか思う様には伸びてくれません。

その状況を打開して行くのに、何が足りないのか、何が不足しているのかを真剣に考えて見なければいけません。
弊社もそうですが、殆どの中小企業さんでは、『「人づくり」の‘システム’の構築』がなされていないと言う事です。
その話をする前に‘売り上げと組織の関係’についてですが、売り上げには、それに寄り添うかの様に、組織があります。その組織も売り上げ規模に見合っている必要があります。
例えば、売り上げが1億円や3億円の規模の会社にとって、総務部や財務部が必要ではありません。甲殻類の生物が‘殻’を破って成長する様に、企業も組織形態を変化させながら、成長して行かなければいけないと言う事です。
当然、売り上げ規模に見合った‘組織づくり’をして行かなければいけないと言う事になります。組織が大きすぎても、小さすぎてもいけないと言う事です。それは若干の相違は許されるかと思いますが、掛け離れてしまうと駄目だという事です。
現状の売り上げ規模より組織が‘大きすぎる’と、その管理費等に利益が喰われてしまい、下手をすると赤字になります。反対に、売り上げ規模に対して組織が‘小さい’と成長のタイミングや利益獲得のチャンスを逸してしまい兼ねません。
こう言う状況では、景気の波に揺られてしまい、一向に成長の軌道に乗る事が出来ないばかりか、縮小均衡の選択を迫られてしまいます。

一気にブレイク・スルーするためには、先ほど書きました、経済環境の把握以外に「人づくり」と「売上と組織の相関関係」の把握が、経営者に求められている事になります。

「人づくり」のシステム構築を怠って、「売上と組織づくり」ばかりに気を取られ過ぎると、‘戦略・戦術’がひとり歩きをしてしまいます。看板は立派でも、中身が伴っていない状態では、組織はガタガタになってしまいます。

先ずは、「人づくり」に集中する事になります。
我々の様な‘中小企業’には、スキルのある優秀な中途社員は先ず入って来ません。
そう思った方が間違いありません。諦めが肝心です。ここにこだわって、募集を何回掛けても、結果は同じです。少し機械を動かした事がある様な素人同然の人ばかりが、応募してきます。
弊社に於いても、諦め切れずに何回もそんな募集を試みては、失敗して来ました。
そうなんです、その応募して来た人の中から‘素人同然の素直な原石’を採用して、育てて行くしか道はありません。
一旦採用したら、ダイヤモンドの原石の様な人材(ロー・コスト)を、その「育てる仕組み」を構築して、その人材を教育・育成しなければいけないと言う事が重要だった訳です。
以前にも、このブログで書きましたが、弊社ではある程度までは‘量産ラインの中での教育’と言う形で構築出来ていますが、まだ完全ではありません。
それは、‘習うより慣れろ’形式からの脱却に他なりません。
自社に合った、徹底した‘人材教育プログラム’の構築とその運用が大切になります。
全従業員一人ひとりが、自分の損益分岐点(自分の給料以外に、全社的な経費を織り込んで)をしっかり越えて利益を生み出せる様な状況、赤字の社員は1人もいない状況を造り出す事です。そして、色々なタイプ・役割を持った社員の育成こそが大切だと思います。
その人の性格や向き・不向きに合わせた教育プログラムを構築し、適所に就かせる事が重要です。
野球で言えば、ホームラン・バッターばかりでなく、バントの得意な人、盗塁の上手い人、それぞれの人が力を合わせて協力し合い、点を取る事で、チームワークが生まれて来ます。
組織とは、‘連携’だと思います。
従業員のスキルの底上げを一日でも早く完了して、戦力として活躍して貰わなければいけません。

ここで大切な事が、一つあります。
それは、入社してくれた従業員に『愛社精神』を抱かせられる様な、魅力のある‘社風の醸成’に心掛けなければならないと言う事です。
会社と言うのは、‘人生観’‘価値観’の違う人たちの集合体とも言えますが、そう言う中で、従業員同士が良好なコミュニケーションを取り合い、信頼感を支えに、組織として纏まれば、大いに企業としての役割を、社会の中で演じる事が出来る様になり、市場に於いても存在価値も発揮できるのではないかと思います。
そんな中で、会社を愛してくれる様な、それぞれの従業員の人生観や生活の延長線の視界の中に、会社が見えて来る様に、社風を醸成しなければいけないと思っています。
従業員の「愛社精神」に支えられた成長こそが、一番望ましい会社の成長だと思います。
その基本となるのが、「経営理念」「社是」「ビジョン」になります。
これを理解する事を土台に、経営者も従業員もお互いに信頼感が芽生え、一つの方向、目指すべき目標に向かって、一丸となって、向かって行けるのではないかと思います。

会社の「経営理念」「社是」が、社長室や応接室に飾られているだけでは、全く役に経ちません。今一度、確認するべきではないかと思います。

私は従業員に対して、説明不足だった様に思います。
そして、今一度、弊社の「理念」「社是」を確認して置きたいと思います。
弊社の「経営理念」は、
   『誠意と技術を大切にします』と言う言葉です。
これは、名刺にも印刷されて、「モノづくり」に‘誠意で以って取り組み’‘惜しみなく技術を発揮する’と言う意味で理解して頂ければと思います。
また、「社是」は、
   『より良く働き、より良い生活』です。
これは、会社は従業員が働きやすい環境を造り、その環境の中で大いに力を発揮して社会に貢献して貰い、その見返りとしての報酬で、少しずつ良い生活がして行ければと言う意味になります。

こうして、組織戦で確実に成果を出せる様になれば、時代の激しい‘環境変化’にも、決して遅れる事無く荒波を乗り越えて行ける自信が、組織にも従業員にも、身に付いてくるのではないかと思います。

『成長エンジン』とは、従業員の皆が‘愛社精神を抱ける様な企業風土の醸成’の中で、「人材を育成、育てる仕組みの構築と運用」する事こそが、そう言えると思います。
『成長エンジン』の構築は、簡単ではない事は良く理解していますが、必ず成し遂げなければいけないハードルになります。
弊社では少しずつですが、その第一歩を踏み出しています。
この7月から‘オリジナルの成長エンジン’を構築する中で、外部の機関の協力を有効に使いながら従業員全員の‘スキルの底上げ’を行い、また確実に根付かせて行きたいと思います。協力して頂ける企業の皆様方には、従業員一同、心より感謝したいと思います。

今日もみんなで良いモノつくります!

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