「野里町歩紀 ~摂河泉をゆく~」

写真と簡単な文章で綴る大阪府内を歩いた足跡です。

大阪最北端の集落「天王」

2011-06-05 11:50:07 | 日記
訪問日:平成22年2月12日(金)
出 発:「天王トンネル」南口
到 着:「天王トンネル」南口

 かつては阪急バスが日に数本通っていたようだが、今では廃止され完全に陸の孤島となっている。標高500メートルの大阪最北端の集落を歩いてみた。はっきり言って観光的な要素は何もない静かな集落である。
 コースは、平坦な舗装道で「稲荷社」と「天王のアカガシ」は山に入る。途中、自販機や店、トイレは一切ない。(歩行距離5キロ)

 集落の中央を国道173号線が走っている。大阪方面からだと阪神高速池田線の終点、木部第二出口(能勢方面)から国道に下り、ひたすら篠山方面に走ることになる。


 ここは大阪の最北端、大阪府豊能郡能勢町天王。昭文社の地図「能勢・豊能町」版を開いてみたが、天王の集落は載っていなかった。地図からも忘れ去られた村なのか……(国道173号線の先にある天王は「図外」の文字が)


 天王の集落を抜け、天王峠で天王トンネルに入る手前左側に車が数台止められるくらいのスペースがあったので、そこにマイカーを止めた。少々吹雪いている。

 車を止め国道を渡ったところに「摂丹関」と彫られた大きな石碑があった。トンネルを抜けると「丹波」の国に入る。しかし、ここに「摂丹関」という関所があったわけではないらしい。裏の碑文を読むと昭和58年、この天王トンネルが開通したのを記念して建設省(当時)が建てたものらしい。


 再度、国道を渡り駐車場所まで戻ることとする。トンネルのすぐ上に鳥居がある。私は、鳥居に対して敬意と神秘性を感じる。そして「鳥居」こそが、われわれ日本人が持っている信仰心(宗教心ではない)の根源を表す「日本の原風景」だと思っている。鳥居を見るとどうしてもくぐりたくなる。


 参道と言うよりは「急な斜面」を登ると小さな社が鎮座していた。天王の村社であった稲荷社らしい。手を合わせ、滑り落ちるように(実際に尻餅をついてしまった)元の場所まで戻る。


 そこには教育委員会が設置した「天王のアカガシ」の説明板がある。稲荷社神域の樹木として崇められ、高さ22メートル、幹周り5.2メートルの巨木で、昭和58年、大阪府天然記念物に指定された。木自体は、鳥居の中ではなく鳥居の下の小さな道を簡易水道施設を左に見ながら進んだ森の中にある。特段、難路ではない。根元に小さな祠があり、ひときわ大きな幹なのですぐにわかる。巨木ファンには有名なところらしい。


 車のところまで戻り国道を渡って南に向かう。脇道にそれたり国道に出たりしながら時計周りに歩くことにした。


 能勢は湿気が多いので板塀の腐食を防ぐため漆で朱塗りされている板塀をよく目にする。


 ここは、以前酒屋だったと思うが、今は店を閉めてしまったのだろうか。


 少し進むと鉄筋コンクリート造の小さな小学校の前に出た。ここは、大阪で一番児童数が少ない(平成22年当時で9人)という「能勢町立天王小学校」だ。体育館から元気な子供たちの声が聞こえた。校舎の前に石灯籠と鳥居が見える。「高皇産霊神社」である。


 国道に出てさらに南に進む。屋敷越しに山の上に鳥居が見えたが、どうも個人宅の庭先を通らなければならないようだったのでそのまま進んだ。


 村はずれに着くと戦没者の忠霊塔や多くの石仏があった。田舎に行くとよく目にするものである。ここから国道を渡って北方向に逆戻りし、途中から村に入り国道の西側の集落を歩くこととする。


 しばらく進むと大きな茅葺きの屋敷があった。門もなかなか立派である。うっすらと雪をかぶった屋根越しに天王小学校の校舎が見える。


 地図からも忘れ去られたと書いたが、立派な旧家が多くそれなりに裕福な農村地帯なのだろうか。


 道脇に石灯籠が見えると、そのすぐ前に立派な石垣が組まれた寺がある。「臨済宗妙心寺派長杉寺」だ。


 江戸時代中期に作庭された枯山水の庭園が有名らしい。


 村を抜け田園地帯に出ると車を止めている天王トンネル方面の山が見えてくる。道沿いに「天王川」が流れるが、明らかに大阪平野とは逆の方向に流れている(ただし、日本海に注ぐのではなく、途中で水を集めながら武庫川に合流し大阪湾に流れる)。


 車に戻った。およそ1時間20分ほどの「歩紀」だった。私の「歩紀」としては、最短のコースである。天王トンネルから籠坊温泉に向かう府道を川沿いに車で2~3分走ると「女郎ケ渕」という瀬があるので立ち寄ってみた。
 昔、大蛇が棲み人々を困らせたらしいが、高僧の法力により石塊にされ、先ほどお参りした高皇産霊神社に祀られているらしい。


 ここから一路、国道173号線を南下して帰宅する。途中「山辺口」という交差点の角に「観光センターくるす」というレストランがある。この辺ではちょっと名の知れた店で「猪・雉子・鴨・鹿・熊」といった牛・豚以外の肉料理のメニューが豊富である。大きな天狗と提灯が目印だ。


 昼ご飯がまだだったので「しし丼定食(1600円)」をいただいた。
 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿