点火時期 : Ignition timing
トルクとの関係;
エンジンのトルクは点火時期で変化し、最適な点火時期よりも速すぎても遅すぎてもトルクは低下する。
点火時期が速すぎる場合は、燃焼による圧力がピストンの上昇を妨げる働きをしてしまうためである。
点火時期が遅すぎる場合は、ピストンが下降している途中で燃焼が行われるために十分な力がピストンに伝わらないからである。
排気温度との関係;
点火時期が遅角(リタード)の場合、排気温度が高くなる。
(参考)触媒昇温リタード制御
早期触媒昇温制御としては、点火時期を遅角(リタード)することにより排気行程に近い段階で燃焼を行わせ、温度の高い排気ガスを触媒に導いて触媒の早期活性化を促進する技術(触媒昇温リタード制御)が一般的に採用されている。
ノッキングが起こったら;
ノッキングが発生した場合は、点火時期を遅角(リタード)させる制御が入る。
ノッキングは通常「ノック」ともよばれている異常燃焼の一つ。
エンジンの燃焼室に吸入された混合気はピストンによって圧縮された後で点火プラグの放電により燃焼させている。
燃焼中は高温の燃焼ガスとまだ燃えていない混合気の両方が燃焼室の中にあり、このとき、燃焼ガスは温度が高いので急激に膨張して、まだ燃えていない混合気を圧縮する作用がある。
例えば、燃焼室の体積の半分が燃焼ガスで残りが混合気である場合を考えると、体積的には半々ですが混合気は圧縮されているので重さは10倍以上になっている。
このとき、混合気は圧縮されることで温度もかなり高くなっていて、場合によっては自然に火がついてしまうことがある。
このように圧縮された混合気に自然に火がついてしまった場合、かなりの量の混合気がほとんど瞬間的に燃えてしまうことになるので衝撃波が起こってしまう。
この衝撃波は燃焼室の中を音速で伝わるので何度も燃焼室の壁で跳ね返って壁を叩く。
この壁を叩く音がノック音という音で、人によっては「カリカリ」とか「カンカン」などと表現される。
ノッキングはエンジンの出力が低下するだけでなく場合によってはピストンを壊してしまう。
ノッキングは点火時期の調整だけでなく、圧縮比を高くしたり、ターボを付けたりした場合にも問題になる。
ノッキングの主な原因
・高負荷条件が継続的 … 燃焼室内温度が高くなると、ノックしやすい
・エンジン冷却が不十分
・エンジン内部にデポジット(炭素塊)がある … ホットスポット(発火源)になる
・燃料が壁面に付着しやすい … ホットスポットに燃料噴霧が行くとホットスポットに
・燃料がリーン側に制御されている … 空気量比率が高いと、燃料の気化エネルギによる燃焼室内温度低下が少なくなり、燃焼室内温度が高くなる
・点火時期が進角側に制御されている … 圧縮比が高い状態に近くなる