【コラム 広辞苑十段黒帯】矢崎硯水「河童文学館」より
昨年の12月30日のコラム「七五調」を最後に、硯水先生のコラムが小休止(?)でしたが、ようやく1月29日「広辞苑十段黒帯」という大変興味深いお話を読むことができました。本日は、それをそのまま記事にいたします。
850『広辞苑十段黒帯』
久方ぶりにネットサーフィンしていたら、「広辞苑十段」というタイトルを見出した。これは1994年、岩波書店の「広辞苑第四版」出版の際の販売促進のための企画で、「広辞苑段位決定試験」において100点満点で十段黒帯が付与されるというもの。
「十段の黒帯を持っている人いるのかな。知っている人いるのかな」という免状取得者の呼びかけのブログも見受けられた。
「あれれれ?」そういえば筆者も、免状を取得したような遠い記憶がよみがえった。しかし何分にも28年も以前のことで記憶があやふや、夢幻だったのではないかとも思え、書庫の奥を調べてみたら免状と黒帯と問題集が出てきた。
免状には「広辞苑十段」と大書され筆者の本名も毛筆で書かれ、「貴殿は広辞苑を常に傍らに置き日本語の執心修業に懈怠なく広辞苑段位認定試験に於いて頗る優秀なる成績を収めたり之により十段を免許すよって免状件の如し」。
1995年1月1日。広辞苑段位認定委員会とあり、十段・広辞苑・広辞苑段位認定委員会の茶朱印が捺印され、割り印までされていた。
筆者がこの企画を知ったのは書肆の店頭だったと記憶するが、「広辞苑番外第二版」という小冊子の「問題集」を耽読して問題を解いたことをお朧気ながら覚えている。
広辞苑に載っている対象語からの出題ではあるが辞書を引いて解答できるものではなく、言うならば広辞苑の言葉列のタテとヨコの理解に加え、辞書の全体を俯瞰して解答を出すような問題集だった。
免状は立派だったが十段の黒帯の素材は本絹ではなく、茶色がかった黒色の紙製なのがミソ。ちょっと残念だった記憶がプレーバックするのだった。
しかるのち何処かのムックに、この企画には20万余の応募があり、十段黒帯賞は180名だったいう記事をみておどろいた。段位が下の茶帯や白帯の人数は知らず、この企画も一回だけだったのか、何回か行われたかは知る由もない。
余談だが、広辞苑の岩波書店の創業者である岩波茂雄は諏訪市中洲の農家の出身。奉職するも教師として自信を失って退職。神田は神保町で古本屋「岩波書店」を開業し、破格の定価販売が注目されたという。
夏目漱石の知遇を得て漱石の「こころ」を出版し、事業を軌道にのせた。
諏訪市中洲には岩波書店全書籍が閲覧できる「風樹文庫」があるが、この中州地区の真言宗の卍「小泉寺(しょうせんじ)」は筆者の菩提寺だ。
ちなみに筆者、この辺は数限りなくマイカーを走らせているのである。
(2022/01/29)
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※典比古
「へ~~、こんな企画があったんだぁ~!」と、吃驚。しかしどうやらこの一回だけで終わったらしい。
漢字検定みたいに継続には至らなかったようですね。
ところで「創業者である岩波茂雄は諏訪市中洲の農家の出身。」ということも、このコラムで初めて知った。
さてネットでサーフィンしていたら、ここにもお一人、硯水先生のように20万余の応募の中の180名の十段黒帯賞のお一人が見つかった!(表彰状の写真をお借りいたしました)
※ネコ印 二百科事典 - 広辞苑十段

岩波茂雄 - Wikipedia
🔶硯水先生のホームページ(硯水コラムが滅茶おもろい!)
河童文学館
次回【俳句deひと息1】(タウンニュース・秦野版)を記事にいたします。