今日は祖母の命日なんだけど
あの日、あの夜、、、
母から電話があって姉の運転する車で病院へ向かった
もう意識は無かった
伯母たちがその枕元で喧嘩をしていて
姉はベッドの足元に私はベッド沿いにいるのぶじいの横に立っていた
もう意識は無かったけど心臓は動いていて
あののぶじいが「おばあさんおばあさん」と声を掛けていた
ベッドの向こう側では伯母たちが喧嘩をしていて
父と母は廊下にいた
人ひとりの命が消えようとしているのに
なぜ、そこにいる生き物はお金の事で言い合いをしているのか
その汚い口から出るその言葉で目の前の消えそうなロウソクの火を消そうとしているのか
母が、帰りなさいと言ったので、祖母に一度帰ってまた来るねと耳元で言った
涙が二粒落ちたのがわかった
その時、のぶじいがいきなり「サザンカの宿」を歌い出した
意識のない愛する妻の前で、不倫の歌を歌い出してしまったのだ
のぶじいの十八番の歌だったが、祖母はその歌が嫌いだった
その時に何故にのぶじいがその歌を歌ったのか分からないが
のぶじいは更に椅子から立ち上がり、歌いながら踊り出した
時が止まり、喧嘩をしていた伯母たちも止まった
姉と私はのぶじいの歌と踊りが終わるのを待ち病院を出た
そして、何故、ん?何故だろう
夏だったはずなのに、コンビニに寄っておでんを買った
確かにおでんを買って帰ったのだ、何故だろう
家に帰りおでんを食べてうとうとしていたら、母からの電話で
また、病院へ戻った。色白で物腰の柔らかい品のある祖母だった
、、、8月15日のあの朝。