2011年11月19日のコンサート「夜の幸いならんために」で演奏してくださるのはフルート奏者の前田有文子(まえだ・ゆふこ)さん、バスーン奏者の松崎義一郎(まつざき・よしいちろう)さん、ピアニストの坂本景子さんと田中順子さんです。
この4人に共通するのは私、野村茎一を “発見” してくださったことです。
ことの始まりは2009年でした。古い知り合いから四半世紀ぶりにメールが届きました。「近々行なわれるステージのプログラムに野村茎一作曲とあるけれど、それはあなたのことですか?」というような内容です。
曲名は「ヴェルレーヌの詩による6つの小品」。
同姓同名の作曲家がいて、同じ名前の曲を書いている可能性は限りなく低いので、それは私の曲に間違いないと思われました。
当日、その演奏を聴かせていただきました。演奏終了後、ご挨拶させていただいたのが坂本景子さんとの最初の出会いでした。楽譜の入手経路は、知り合いのピアニストの方から譲っていただいたということでした。
そういえば、以前、浦和の楽器屋さんから「ヴェルレーヌ・・・」の楽譜を探している方がいらっしゃるのですが、楽譜は入手可能ですか?」というお問い合わせをいただき、何冊か用意したことがありました。その時の1冊かも知れません。
坂本景子さんと田中順子さんは知り合い同士ですが、田中順子さんは、さらに数年前に行なわれた別のコンサートで「ヴェルレーヌ・・・」を聴いて、ぜひ演奏したいと思ってくださって、ダウンロード・マーケットからお買い求めいただいていたそうです。そして、すでに田中順子さんの同門のピアニストの方々の内輪の演奏会では演奏もしてくださったそうです。
こんなに嬉しいことはありません。
ところが私は田中順子さんの演奏を聴いたことがありませんでしたから(失礼しました)、その後、何度か演奏会に行かせていただきました。ソロも聴かせていただきましたが、ソプラノ歌手の藍原由美さんは、ピアノに必ず田中順子さんを指名なさるようで、藍原由美さんの興味深い演奏会には複数回行かせていただきました。
2009年の暮れに、坂本景子さんは大学時代の知り合いであるフルーティストの前田有文子さんと偶然、本当にしばらくぶりに再会しました。その時、前田さんが蕨市在住であることを知り、私(野村茎一)のことを話してくださったそうです。
ちょうど前田さんは、近々行なわれる小さなコンサートの曲探しをしておられたそうで、私は「フルートとピアノのためのアリア(1976)」をお渡ししました。
有文子さんも気に入ってくださったのですが、なんとご主人の松崎義一郎さんが「アリア」を気に入ってくださり「バスーンとピアノのためのアリア」に書き換え、お渡ししました。
この「アリア」はおふたりによって何度も演奏され、私もそのたびにステージに出て拍手を受けるという光栄に授かりました。
去年9月には前田有文子と坂本景子さんの共演でフルートソナタが演奏され(私の勝手な推測ですが)、その頃にお二人の中で私の評価が固まったのかな、とも思っています。
そして、今年になってから「野村茎一の世界」の話が出て、あとはトントン拍子でした。
これが「野村茎一の世界」が実現するまでの経緯です。
現代の作曲家は、往々にして演奏家を雇って自作品を演奏しなければならないことが少なくありません。かなり著名な作曲家でさえ、作曲個展は自身で開かなければならないことが多いのです。ですから、私のような無名作曲家の曲が演奏家の皆さんに好まれて公開の場で演奏していただけるとは、この上ない喜びです。
ずっと私の作曲活動を支えてくださった作曲工房関係者の皆さんや、私を励まし続けてくださったウラノメトア・ユーザーの先生がた、そして私のお尻をひっぱたいて(そんなことしませんが)応援してくださったウラノメトリア編集会議の伊藤美香さん、玉置節子さん、それからだらしない私に代わって楽譜データのアーカイブ保存をずっと行なってくださっている“ちびまゆママ”さんに深く感謝いたします。