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野村茎一の世界

作曲家 野村茎一の作品を紹介する演奏家集団「野村茎一の世界 実行委員会」の公式ブログです。

フルートとピアノのためのソナタ(2007)

2011年08月22日 23時11分36秒 | 紹介記事

 演奏会のプログラムから「フルートとピアノのためのソナタ(2007)」をご紹介します。
 以下は、私家版の楽譜に記した献辞です。

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 献 辞

 この曲は2001年に構想がまとまり作曲を始めましたが、それはちょうど私自身の音楽的な進歩と変容の時期と重なっていました。そのため、作曲と改訂が繰り返され、第2楽章に至っては3回も完成(未完の完成)させなければなりませんでした。その後、ようやく私自身が音楽的な居場所にたどり着き、これを決定稿とすることができました。

 第3楽章だけは2005年7月に単独初演(演奏者は同じ)されましたが、全曲初演は2007年7月21日(土)に新宿区四谷の東長寺内の “きあん” でフルート・中島 恵さん、ピアノ・尾崎知子さんによって行われました。

 今まで、もっとも多くの曲を委嘱してくださった中島 恵さんと、私の音楽の深い理解者のお一人である尾崎知子さんに、感謝とともにこの曲を捧げます。

 2007年11月18日 野村茎一

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 この曲を気に入ってくださった坂本景子さんが、前田有文子さんを誘って2010年9月12日に行なわれた「武蔵野音楽大学同窓会第20回記念演奏会」で演奏してくださったのが下のリンクの演奏です。
 初演の中島恵さん、尾崎知子さんによる演奏もとても好きで、演奏者によってそれぞれ異なった魅力を発掘してくださるのは、まさに作曲家の最大の楽しみです(いろいろと教えていただけるという意味では、これに勝るものはありません)。
 
 11月19日には、さらに熟慮を重ねた演奏が聴けるのではないかと、今からワクワクドキドキしています。

野村茎一「フルートとピアノのためのソナタ(2007)」の演奏音源

(記事更新2011年8月22日、文責・野村茎一)




※ ブラウザによっては(グーグルクロームなど)プラグインの実行を訊ねてくる場合があります。その時は右クリックで「プラグインを実行する」を選んでください。
※ どうしても聴けない場合には、下記のリンク(MySpace)でPCプログラム再生版を試聴できます。

野村茎一「フルートとピアノのためのソナタ(2007)」のPCプログラム再生

 

作曲家、野村茎一とは

2011年08月02日 20時57分02秒 | 紹介記事


 作曲家の定義は曖昧です。一曲だけ作曲した曲がヒットして大きな収入となり、それで生計が成り立てば立派な職業作曲家です。また、シューベルトのように生前はアマチュア作曲家であった人が音楽史上の大作曲家となることもあります。
 ですから、作曲家の定義などどうでもよいのかも知れません。しかし、私にはちょっとしたこだわりがあります。

 私の師は土肥泰(どい・ゆたか;1925-1998)という作曲家で、ものごとの本質を捉える力のある人でした。私が教えを受けたのは1971年から1994年までの23年間。もうひとりの父親のような存在です。
 彼は「音楽作品を後世に遺すのは、その曲を聴きたいと思う聴衆と演奏したいと思う演奏家である」と言いました。
 その言葉を聞いた直後にはピンときませんでしたが、後に本当にその通りだと思うようになりました。上の言葉をよく考えると、時代が移り変わって聴きたい人、演奏したい人がいなくなってしまうとその曲は消えてしまうのです。作曲家の中には時代を超えて残る必要はないと考える人もいます。もちろん、それでいいと思います。しかし、ずっと歌い継がれたい(弾き継がれたい、聴き継がれたい)と思う作曲家は、いつの時代にも通用する音楽を書きたいと思うことでしょう。
 20世紀中葉には「前衛音楽の嵐」が作曲界に吹き荒れました。理論だけでも楽譜が書けたり、図形楽譜などが試みられて、素人でも一見すると立派に見える「現代音楽」が書けてしまうこともありました。まさに玉石混淆の世界で、分からないことが凄い曲の条件であったりして、正当な評価が与えられることの難しい時代でした。作曲コンクールで賞を撮った曲の二番煎じとしか思えない曲がいくつも書かれ、審査員の選択が次の流行を決めてしまうようなところもありました。
 そのような時代でしたから、現代音楽の作曲家と聴衆の距離はどんどん離れて行きました。
 そんな時代に生き残るには、作曲家は商業音楽の世界で活躍するか、一部 “有名” 作曲家を除けば、大学などで教鞭をとりながら作品を発表していく(多くの場合、演奏家を雇って作曲個展などを開いたり、グループで発表したりする)方法のどちらかの選択を迫られました(第3の選択として、合唱曲や吹奏楽曲の世界で活躍する道もあります。ここでは新曲の発表が、今でも熱い期待で迎えられます)。
 私は、もう一度、作曲家と演奏家・音楽愛好家(聴衆)の距離を縮めたいと思いました。
 そこで、原則として、私を認めてくださる演奏家の皆さんからの依頼を受けて作曲し、作品を発表することにしました(ただし、ライフワークとして書き進めているピアノメソード「ウラノメトリア」と、それに準ずる「ソナチネアルバム」などは別で、自主的に作曲を進めます)。

 「野村茎一の世界」を立ち上げてくださったのも演奏家の皆さんです。本当に嬉しいことで、作曲家として、いくら感謝しても感謝しつくせないものがあります。
 今回、演奏される曲のほとんどが演奏家の方々からの委嘱作です。旧作をトランスクリプションして楽器変更した曲もあります。これらの曲は、演奏家の方々からの様々な注文を反映していますから、合作とまではいかなくとも、演奏家のセンスをも取り入れた作品ということはできると思います。
 ベートーヴェンは「全ての人々のために書く」と言いました。生意気なようですが、私も同じ気持ちです。独りよがりにならないようにと、いつも肝に銘じています。また、何年経っても古びないようにと願っています。


文責・野村茎一