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櫻坂46「何歳の頃に戻りたいのか?」MV分析 加藤ヒデジンが落とし込む“同調圧力からの救済”

2024年01月31日 21時00分00秒 | 櫻坂46
こ~んばん~わ


 2月21日に櫻坂46がリリースする8thシングル『何歳の頃に戻りたいのか?』表題曲のMVが公開から4日で100万再生を突破している(1月28日現在)。1月21日深夜放送の冠番組『そこ曲がったら、櫻坂?』(テレビ東京系)にて選抜メンバーが発表され、センターは山﨑天、そのほかも二期生と三期生のみで構成された新世代を告げるフォーメーションとなった。

櫻坂46『Start over!』

 本作は「桜月」や「Start over!」などを手がけてきた音楽制作チームのナスカによる楽曲。欅坂46時代の後期にも「エキセントリック」や「黒い羊」などを作曲しており、ファンにとってはお馴染みのクリエイターである。多彩な音楽性で様々なサウンドを取り入れるナスカの手法と櫻坂46のパフォーマンスは絶妙な相性の良さを見せている。たとえば、「Start over!」ひとつをとっても、ナスカの独創的なサウンド構成が楽曲の持つ世界観を丁寧に描き出していた。

櫻坂46『何歳の頃に戻りたいのか?』

 
「何歳の頃に戻りたいのか?」は過ぎ去った過去に思いを馳せるのではなく、未来を夢見ろと力強く鼓舞する櫻坂46らしいメッセージ性の強い楽曲。ナスカ特有の小刻みなリズムで高揚感を高めていくイントロに対して、サビは優美なピアノラインとともに流れるように駆け抜けていくメロディラインで構成されており、起伏のあるメロディが独自の感慨を生む。そんな楽曲のMVの監督が「Start over!」から3作連続となる加藤ヒデジンだ。櫻坂46特有の強いメッセージ性を高い解像度で映像へと落とし込むのが本当に上手いと感じる。
 「何歳の頃に戻りたいのか?」のMVはこれでもかと言わんばかりに加藤ヒデジン節が炸裂している。まず、冒頭ではバーに佇む山﨑天がトマトジュースらしき飲み物が注がれたグラスを飲み干し、そのグラスをテーブルに置いた瞬間に高揚感を煽るイントロが流れ始める。そこではメンバーの名前が表示されると、「ARE…」に続けて画面いっぱいに「SAKURAZAKA46」が大胆にクレジット。この手法は加藤らしい世界観と言えるだろう。加藤は自身のXの中で「自分は自分でしかないstart overの自由から、自分は何者なのか承認欲求の葛藤、そして最後は、自分は何色にも染まれる同調の支配。締めは救済で。利己から利他になっていってますね」とコメント。直接的には言及されていないもの「Start over!」「承認欲求」からの一連の作品群は3部作としてストーリーが地続きになっていることがわかる。



 加藤の言う「何色にも染まれる同調の支配」。そのことが表れているのが、山﨑の衣装七変化だ。MVには白と黒のウェイトレスの衣装を着た他のメンバーたちが、自由に自己を表現している山﨑を異物であるかのように見つめる描写がある。そんな同調圧力を振り切るように、山﨑は一心不乱に踊り狂う。その対立構造に同調圧力に屈した山﨑以外と、自己を表現する山﨑を見出すことができる。山﨑が着ている衣装の数々は「Nobody’s fault」から櫻坂46の衣装デザインやスタイリングに携わっているRemi Takenouchiが手掛がけており、MV冒頭の衣装は『第97回装苑賞』のグランプリ作品で上村英太郎が手がけたものであることも明かされている。

 
山﨑と対峙するメンバーたちのダンスも本作の魅力だ。TAKAHIROによる緻密に練られたフォーメーションダンスでは、山﨑を取り囲むようにメンバーたちが円になっている。山﨑はそんなメンバーたちの同調圧力を振り払うかのようにダンスを見せていく。寄りと引きを巧みに織り交ぜながら臨場感を生み出し、櫻坂46の真髄でもあるダンスパフォーマンスの魅力を最大限に引き出している。
 大サビ前には山﨑がメンバーに担がれ、まるで神を祭るかのように迎え入れられる描写がある。これは加藤が言う“同調圧力からの救済”を映像に落とし込んだものだろう。そして、転調とともに雲ひとつない青空が広がる外へとロケーションが移り変わる。散りばめられた枯れ葉が一気に拡散する描写や、1サビで山﨑がウェイトレス姿の増本綺良や的野美青に対して大袋に集められた枯れ葉をぶちまけるシーンでは、これまでの過去を捨てて、新しく生まれ変わるというメッセージを読み取ることができる。歌詞のメッセージを深く読み取り、映像へと落とし込む加藤の手腕が存分に発揮されていたといっていい。
 加藤の理想を表現するためには、櫻坂46メンバーのパフォーマンス力が不可欠である。櫻坂46楽曲の自由な世界観と加藤の再現性の高さによって生み出された「何歳の頃に戻りたいのか?」MVはグループの歴史にとって重要な1ページとなった。常に最高傑作を更新続ける櫻坂46のポテンシャルは凄まじい。この先、どんな景色を私たちに見せてくれるのだろうか。

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