
Cantinflas
カンティンフラス
メキシコの俳優。コメディアン。1911年生まれ。
この人を世界的に有名にした映画が「80日間世界一周」だ。
イギリスの名優デビッド・ニーブンを相手に際だった演技をしてゴー
ルデン・グローブ賞を受賞している。
この時代の役者の多くがそうであるように、カンティンフラスもまた
若い時にあらゆる職業を経験して来ている。一時期だがプロボクサー
やサーカスのアクロバットもやっている。身が軽かったのだろう。
当時移動テントサーカスはありふれた表現の場だった。
メキシコの映画に多く出演して後には映画会社を立ち上げ監督も務め
ている。また映画関係で得た収入の殆どを恵まれない子供や孤児施設に
寄付して子供達の教育環境の良化に熱心だったし、かなりの高額の現金
を寄付することもたびたびだった。長期にわたり援助をした。
メキシコや南米、スペインでは知らないひとがいないほど人気があった。
特徴的なのはその話し方で、何を言ってるのか良く分からない内容だが
何だか可笑しいのだ。とにかく言葉の遊びと言うか語呂合わせが天才的で、
例が悪いがタモリの国際四人麻雀みたいなところもある。スペイン語
なのでこれを英語に吹き替えてしまうとカンティンフラスの面白さの殆ど
が消えてしまいつまらない映画になってしまい英語圏では彼の魅力が半減
してしまった。日本語に訳して字幕にするひとも大変だ。言葉のノリやシ
ャレを外国語にするのは全く難しい。「80日間〜」も英語圏はデビッド・
ニーブン、スペイン語圏はカンティンフラスだが受けたのはカンティン
プラスの方だった。渋さや苦味走った演技ならデビッド・ニーブンだが
可笑しさではカンティンフラスに分がある。
様々な職業を経験してきたせいか何をやっても絵になるしダンスも上手く
手や足が動かない時は顔の表情が変わる。とにかく動きが可笑しい。
何も話さなくても笑ってしまう。エンタメの世界に入るにあたり本名だと
バレるので誰にも分からない名前をつけることを思いつき、カンティンフ
ラスと言う名前にしたらしいが定かではない。当時のカンティンフラスの
親にとって役者などは恥ずかしい職業のひとつと思われていたらしい。
本名を名乗るのは憚れたのだろう。まあ、これは日本でも同じだね。
カンティンフラスの方が目立つ名前だと思うけどね。どうだろう?
メキシコの映画界とハリウッドを繋いだ人物でもあり、エリザベス・テー
ラーのメキシコでの3度目の結婚パーティーのアレンジにも手を貸してい
る。この3度目の夫になったのはマイケル・トッドで「80日間〜」のプロ
デューサーだった。また当時のアメリカのジョンソン大統領は1966年に
カンティンフラスのロシア生まれの妻がガンで重体になった時に、メキシ
コに政府所有の飛行機を送りヒューストンの病院に送り届けている。
当時のメキシコ大統領とジョンソン大統領との間の政治的親密度に関して、
国民的に知名度の高かったカンティンフラスを大統領選に利用したとも言わ
れている。1961年テキサス州の選挙においてもメキシコ系の立候補者ヘンリ
ー・ゴンザレスをジョンソン副大統領と共に応援している。
テキサスはジョンソンの地元でありメキシコ系の住民にはカンティンフラス
の人気は絶大だったため、カンティンフラスの知名度を政治に利用して有利
に票を得るためのジョンソンのパフォーマンスとも思われる。エンタメのス
ーパースターを政治に利用するのは今でも良くあることだが、カンティンフ
ラスの場合は国を動かすほどの超桁違いのスーパースターだった。
カンティンフラスの葬儀には、メキシコや、ペルーにエルサルバドルの
大統領が参列した。国を挙げての葬儀は3日間続いた。国葬級の扱いだった。
1993年 肺ガンで死亡。かなりのヘビースモーカーだったらしい。
彼の死後に残した多くの映画の権利についてカンティンフラスの息子と
甥の間で法廷争いが起き長年も続いた。結局21年間もかかりメキシコの
最高裁はカンティンフラスの映画39作の権利の保持者を甥とする旨の
判断を示している。一方でカンティンフラスの息子とコロンビア映画と
の間でも映画の権利について法廷争いが起きており2001年に一応解決し
ている。その間息子のコカイン所持問題など起きておりプロセスが複雑、
そもそもカンティンフラスの息子は彼の妻以外の女性との間に出来た
のを受け入れ育てたらしいから話がややこしい。何億ドルとか何十億
ドルとか絡む話しになると庶民感覚では分からないね。とかくこういう
トラブルは出るものだ。
1972年の始めごろだったか、スペインのグラナダの街中の壁にカンティンフ
ラスの映画のポスターが貼ってあったのを思い出す。映画のタイトルまでは
覚えていない、「ぺぺ」だったか。子供達が、カンティンフラス!カンティン
フラス!と騒いでいた。あの親しみやすい顔は子供達には受けるね。
2014年に「カンティンフラス」はスペイン人俳優により映画化されている。
メキシコの喜劇役者と言えばカンティンフラスだったが、この名前に馴染みが
あるのはある年令以上だろうね。メキシコならカンティンフラス、フランス
ならルイド・フュネスだろう。この人も可笑しかった。随分映画を見たもの
だが最近リバイバルを見ない。お勧めのフランスコメディだ。
カンティンフラスは間隔のあいた口ひげが特徴的だ。
まあまあ上手く描けたかな。
Caballo viejo ベネズエラのシモン・ディアスの名曲。
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