姉夫婦が暮らしている
長崎県諫早市に引っ越して
数ヶ月が過ぎた。
33年間の東京暮らし。
見上げれば
首が痛くなるほどの高層ビルも
信じられないような人込みも
ズラリと並ぶ華やかなお店も
真夜中でも明るい通りも
懐かしい思い出になった。
長崎市の隣りにある諫早市は
静かで清潔。
殆んどの人が車で移動しているので
人通りは少ない。
引越しの後片付けや手続きで
バタバタと過ごした毎日。
せっかくだからと
家具なども少し新しくしたり
カーペットを敷いたり・・
くたびれた夫婦には
落ち着くのに2ヶ月ほどかかった。
歩いて15分程のところに住んでいる姉が
いろいろと世話をしてくれ
あれこれと差し入れもしてくれ
心強く有り難かった。
さて・・・・
落ち着いてみると
これからの生活のこと。
仕事を始めなければ・・・
資格があるのでなんとかなるだろう・・
と就職先も決めずに
あっさりと帰ってきたものの
65歳という年齢である。
偶然とは不思議なものだ。
諫早市で調剤薬局を営んでいる
同級生がいるよ。
と 学生時代の友人が教えてくれた。
名前と顔は知っていたが
一度も話したこともなく
学校をサボってばかりの私の事など
おそらくは 記憶していないだろう。
(どうしようか・・・ハローワークに行ったほうがいいかな・・
いきなり 電話しても迷惑かも・・・この歳だし・・)
と 迷ったが ドキドキしながら
・・・電話した。
明るい優しい声が聞こえた。
私の友人から話は聞いている・・
一度 お会いしましょう
との返事。嬉しかった。
今 その薬局に週4日
パートで働かせてもらっている。
自宅から歩いても行ける距離だ。
事務の女の子たちも
真面目で優しい。よく働く。
若くて ピチピチしている。
あれこれ 失敗しながら
迷惑をかけながら
教えてもらいながら
新しい職場での毎日。
今までの経験が
役に立つこともあれば
役に立たないこともある。
(今まで何をやってきたんだろう・・)
と 反省することもある。
それでも 一番嬉しいことは
この街の中に
「おはようございます!」
と言える場所が出来たということだ。
「お疲れ様!」
と言える場所が出来たということだ。
どこに暮らしていても
繋がりがなければ
人は寂しい。
その場所は
職場でなくても
趣味のサークルでも
小さな居酒屋でも
ファミレスでも
近所の公園でも
駅のホームでも
バス停でも
リハビリのホームでも
「おはよう!」
と言える場所があれば
人は 勇気を出して
生きていけるのだろう。
「おはよう!」
ただそれだけで
元気をもらい・・・
元気を与える・・・
その場所は
心の一歩を踏み出せば
誰もが見つけられる
暖かな空間だ。
end