貝木泥舟という名に聞き覚えのある年配の方は限られるだろう。
幕末の人物?
などと真面目に考えてもらうと恐縮なので種明かしをすると
貝木泥舟は
アニメになったライトノベル『化物語』を筆頭とす西尾維新氏の『物語シリーズ』の
『偽物語』『恋物語』に登場する
怪異に対する高度な知識と技を持っている詐欺師だ。
彼の言葉に
「信じる、という事は、騙されたがっている、ということだと、俺は思っている」
というのがある。
そのセリフを聞いた時に
詐欺師の視点から見ればそうだよなぁと思わず膝を叩きたくなるような
納得がいった。
私はある人に
「箸にも棒にも引っかからないものに引っかかる才能がある。」と言われたとうり
普通の人は素通りするような事も好奇心を押さえきれず
どれどれと首を突っ込んで騙された事も一度ならず経験した。
超能力的な事や奇蹟的な事が大好きだった私は
本物の詐欺師からみれば、貝木泥舟の言葉どうり
超能力や奇蹟を信じたがりの典型的な騙されたがっている奴だったと思う。
スピリチュアルの世界は典型的な主観の世界で
客観的な評価は
預言の完全成就や超能力の実験での証明などにごく限られる。
超能力者がさまざまな科学的な実験に参加して長い間に
幾人かはその能力の存在を証明したり、冷戦時代ソ連や合衆国が
超能力者を諜報活動に使ったという特殊な事例はあるにはあるが
インドなどの聖者や巷にあふれる自称超能力者や霊能者の能力の証明は
その人の業を直接受けた人の主観に
大半は大きく左右されるものだ。
そしてそういう能力者の門をくぐるのは
私と同じように「信じたがりの騙されたがっている者」であるのが大半だろう。
詐欺師にしてみれば、
自分たちのような者はまさに鴨がネギをしょってやってきた様なもので
騙しがいのないつまらないお客だろう。
貝木泥舟のセリフの中で私の一番のお気に入り
「偽物の方が圧倒的に価値がある
そこに本物になろうという意思があるだけ
偽物ほうが本物より本物だ。」
詐欺師としての貝木自身の誇りを感じさせるこのセリフは
様々な事で悩み疲れ流されていた私に
今一度自らの手で漕ぎ出す力を与えてくれた
知恵の果実のようだった。
私は神やスピリチュアルな世界を彷徨った末に疲れ果てていた。
自分なりに真摯にその世界と向き合いさまざまな人たちと出会い体験してきた。
しかしその対価として失った普通の生活の時間のもたらした状況は
多くの虚無感と共に人生の失敗を十分感じさせるものだった。
私は長い時間をかけて目に見えず触れることの出来ない世界を彷徨っても
今だ本物になれない自分を嫌悪していた。
虚無感に苛まれる日々
深夜アニメの中で出会った詐欺師貝木泥舟は
偽物である私に
偽物としてのアイデンティティーを
「偽物の方が圧倒的に価値がある
そこに本物になろうという意思があるだけ
偽物ほうが本物より本物だ。」
の言葉と共に与えてくれた。
私はまさに本物になろうという意思のある偽物なんだと
その時ようやく顔をあげる事ができるような気がしていた。
私はスピリチュアルの世界を彷徨ったに過ぎないフェイクだ。
それ故、デンパ者と名乗るのに相応しい偽物だ。
その事を承知の上でお付き合い下さい。
これからも偽物の本気を楽しんで頂ければ幸いです。
四月一日 嘘の日 偽物のブログ主