ナルコレプシーという睡眠障害が、世界で一番日本人がかかりやすいことがわかった。
日本では周囲から見た患者の様子から「居眠り病」「過眠症」とも呼ばれる
ナルコレプシーは、睡眠障害の研究の課程で、イギリス人医師トーマス・ウィリス によって報告がされた。
「Narco=眠り」「Lepsie=発作」を意味し、「眠り発作」ともいわれる。
一般への知名度が極めて低いうえ、専門医が少ないため、罹患者に対する正しい診断・治療が受けにくいことや、まわりの人間からの理解が得られないなど、罹患者には精神的にも大きな負担がかかっているのが現状である。
症状としては、レム睡眠とノンレム睡眠の切り替わりで中途覚醒を起こすため、目は覚めても体を動かそうとする脳の一部が眠っているために「金縛り」を体験することが多い。
起床時までは、睡眠が浅くなりやすくなり、夢を見る回数が増える。
見る夢は、ほとんどが悪夢で、現実とリアルな夢の境目が分からずにうなされる場合が多い。
そして、眠りが薄いために過剰睡眠となり、また昼間に急激に眠気に襲われたりする。
発症期は主に15歳前後が多く、40歳以上の発症はまれとされる。
本病気の症状特性上、病気であること自体に患者本人が気付く場合が少ないため、ただの睡眠不足、怠け性と判断される場合も多い。
そのため、日本ナルコレプシー協会は、社会的認知度向上に向けて2009年より全国の各中学校・各高等学校にむけて『ナルコレプシーとは』とのパンフレットを配布しはじめた。
決して珍しい病気ではなく、日本では600人に1人程度(0.16%)は罹患していると想定されている。
世界の有病率の平均は2000人に1人程度(0.05%)であり、その4倍近い日本人の有病率は世界最高であるという。
また、治療を行っていない状態で機械や自動車の運転中などに発作が起こると重大な事故の原因となりうるため、日本睡眠学会では、運転中の居眠りや事故経験によっては、治療によって改善されるまでは車両運転を控えるべきであることを医師が伝える必要があるとしている。
ナルコレプシーの病因として特定されているものには、オレキシンの欠乏とされる。オレキシンは視床下部から分泌される神経伝達物質で、オレキシン遺伝子を破壊したマウスにはナルコレプシー症状が現れることが明らかになっている。
さらに、オレキシン神経細胞を破壊し人為的にナルコレプシーを引き起こしたマウスに、オレキシン遺伝子を導入したり、脳内にオレキシンを投与することでナルコレプシー症状が改善されることも明らかにされた。
また、ヒトのナルコレプシー患者においても視床下部のオレキシンを作る神経細胞が消滅していることが明らかにされている。
一方、ナルコレプシーの病因として最近関連性が注目されているものには、白血球の血液型HLAとの関連性が報告されている。ナルコレプシー患者においては、HLA-DR2がほぼ全例で陽性であるという調査結果が1983年に発表された。
これらのことから、ナルコレプシーが自己免疫疾患である可能性、遺伝性要因の可能性が示唆されているが、現在、証明はされていない。
しかし、オレキシン治療法が確立されてきているので、早期発見、早期治療が望まれる。