【陰陽五行の世界観】20「花見と月見」
いよいよ3月になりました。今年の桜の開花はいつ頃になるのでしょうか。ところで本日はこの「花見」と「月見」を「陰陽五行の世界観」から覗くと、どのような「解釈」が成り立つでしょうか。
さて「桜」といえば、「春=木気」を代表的する花ですね。そしてこの
「桜」を詠んだ俳句と和歌で思い出すのが、この二つでしょうね。
さまざまなこと思ひ出す桜かな 芭蕉
ねがはく 花の下にて 春死なむ 西行
そのきさらぎの 望月のころ
まずは芭蕉句ですが、「陰陽五行の世界観」から、「木気は生命の芽吹きであり、過去を呼び覚ます力を持つ」といった解釈も可能になろうかと思われます。
注目するのは西行法師「そのきさらぎの 望月のころ」。この歌には「陰陽五行思想」の、ほのかな匂いがしています。
下記の図をごらんいただきますと、十二支で「きさらぎ=如月(旧暦の二月)」、そして「望月」は、15日になります。ということは季節は「卯の月」、まさに「春」は「寅から始まり、卯、辰」と三か月の真ん中であり、春の盛りの時期。
ところで、紀元前1000年ごろから東アジアで農耕が広まり、日本でも弥生時代(BC500年)ぐらいから本格化していきました。そして儒教という教えが広まったのが応神天皇(AD4世紀)の頃。すでにそのころは、日本列島のあちこちで米作りが広がっていた時代です。
そして農耕にとってもっとも重要なのは季節であり、とくに「木気」は植物が胎動を始め、この「花」のなかの「花」(桜)への感謝、それは、それを「愛でる」ことによって神に感謝し、豊穣を祈ったということであろうと思われます。
そしてその「祈り」の結果としての「実り」。「花」が始めなら、その対極としての「終わり」こそ、「実り」なのです。「望月」は「旧暦の8月15日」、これは「申、酉、戌」という「金気」の真ん中です。
そうです!この時期は「お月見」なのです。この「中秋の名月」を「愛でる」のは、その「結実」に感謝したという意味合いが、濃厚(農耕)にあると思います。
要は、金気は五行で物事が凝縮され完成に向かうエネルギーを表すため、「秩序」「収穫」「純粋さ」の時期と対応するのです。
そして「薄」は「稲穂」を「意味」させ、「お団子(白く丸くて固い)」や、「芋」などを「金気」の呪物としてお供えしたのです。
こうして見ると、私たちが無意識のうちに行っている「花見」や「月見」も、陰陽五行という深い知恵の中に息づいていることが分かります。桜の花が咲く時、満月が夜空に浮かぶ時、それは単なる自然現象ではなく、私たちの生命のサイクルを映し出す「宇宙のリズム」そのものなのです。
※典比古
日本の伝統行事には、自然の摂理に基づく深い意味が込められています。春の「花見」と秋の「月見」もまた、単なる季節の楽しみではなく、陰陽五行の法則に根ざした生命のリズムと宇宙の調和を祝う行事だと考えられます。
因みに桜の「サ」は「稲の神」、そして「クラ」は「座」を意味し、「桜=神が宿る場所」と考えられていました。
二宮の吾妻山の山頂から 撮影1日 典比古