「詩あきんど」54号よりⅡ集鑑賞
見遥かす合歓の雲海沖縄忌 石田りつこ
一読「合歓の雲海」という言葉に魅かれました。沖縄忌は6月23日。住民の四分の一が命を落としたという、日米最後の地上戦。2021年8月、95歳で亡くなったワタクシの母の兄が、アッツ島で玉砕しているので、この日米の攻防は、なにか他人事ではないような気もしますが、それにしてもこの雲海のような合歓によって、すべての死者に慰霊の誠を捧げているようにも思え、つくづく平和の有難さが身に沁みます。
バースデー白髪白シャツ老夫人
【留書】には、土筆が出てくると、それぞれの春野菜が食卓にならぶのを楽しみにしているという。またベランダの屋根に梅の落ちる音が聞こえてくると、毎朝の梅拾いが日課となっているようですが、残念なのはその梅干しを楽しみにしていた弟さんが亡くなったこと。
梅仕事ぷりぷりお尻の並ぶ瓶
■りつこさんは【りつこの昨日今日】というブログを立ち上げておられます。
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いさかいの過ぎて葉葱の辛さほど 柏瀬一泻
なんだか軽妙洒脱のような一句。いいあらそいの終わったあとの、後悔やら慙愧の念が浮かぶことは誰にでもあります。その感情を「葉葱の辛さ」としたところが面白く俳味もありますね。でもそんな深刻でもないようすも「葉葱の辛さ」から思い浮かびます。
蜘蛛の巣にかざして見れば未知の街
【留書】には、ベートーベン第九の生演奏を聴きに行き、「静かに出番を待つティンパニーの沈黙の時間から音楽が立ち上がる。」と記し、「それは、芭蕉の『閑さや岩にしみ入る蝉の声』を、瞬間「想起」した経験が書かれています。
そしてフランスの諺「夜が助言を運んでくれる」・・・要は「前日に考えて良い俳句ができなくても、翌朝目覚めると不思議と浮かぶことがある」という経験談を披露。
かきつばた狂い咲きても桜桃忌
写真家でもある一泻(いっしゃ)さん。写真家でのお名前は「八峰(はっぽう)」。去年の「タウンニュース」の記事です。
🔷柏瀬八峰さん写真展 27日から丹沢美術館 | 秦野 | タウンニュース (townnews.co.jp)
※典比古
中村修さんの新作『キモチ』「コメント」は下記