吐息

何かを生み出すということは

硬い私の体の中からキノコがにょきにょき生えてくるようなものだと思ってた

ある日突然堰を切ったように出てくるのだとおもってた



私の体が粘土のように柔らかくて

つんつんされたり、そっと手のひらで温められたりして

つい吐き出した吐息の中に

雫のようにころっと落ちてきた小さなキノコ



この恥ずかしい固まりを

作品と呼べたらなんて素敵なんだろう



今は意味を持たない、ちいさなちいさなつぶつぶキノコ

手のひらにぎゅっと握り締めて

初めての旅に、さあ、出発


（ツノマタタケ）

光と水

あなたがそこにいるということは

そこに光が当たっているということで

わたしがここにいるということは

ここに水があるということで

それがあなたとわたしがここにいる理由




ただ光はあなたを必要としていないかもしれない

でもわたしはあなたを必要としている

そして水はわたしを必要としていないかもしれない

でもあなたはわたしを必要としている

それがあなたとわたしがここにいる理由



（ナヨタケ）

答えはいらない

かわいいな

でもコイツが気になる理由はどうもそれだけじゃないみたい

自分の心のなかにも何かが生まれつつあるのかも

土砂降りの雨が上がったあと、強い光が差し森にハビコル何かが一掃された

ずっとそこにいたんでしょ

硬い木の中で少しずつ少しずつ何かを温めてきたんでしょ

今は答えはいらない

君が何者なのか知らなくていい

そこにいるという真実をくれたこの瞬間を

ただ大切にしたい





（ツノフリタケ幼菌）

手をつなぎたい

手をつなぎたくなる

もう好きかどうかなんてどうでもいい

ただ手がつなぎたい

ただあなたとだけ手をつなぎたい

手をつないだらどうしよう

たぶん今以上に何も話せなくなる

たぶん今以上に何も離せなくなる

真実の扉はそこから開く




（ドクベニタケの仲間）