見通しの悪い藪でこの小さなキノコに出会う確率
それは都会のビルの屋上からおはようって声をかけたら
おはようって返ってくる確率に似ている
もしおはようって返ってきたらその瞬間から特別な時間が始まる
ほんとうに何気ないおはようって言葉だから胸のドキドキはさらに高まる
愛してるなんて特別な言葉では意味がない
ちっぽけなおはように振り向いてくれた
そしておはようって返してくれた
そのちっぽけなおはようを返すためにいろいろ頑張ってくれて
夜になってから遅くなってごめん、間に合わなかったけどおはようって返してくれた
ただそれだけ、ほんとうにそれだけ
恥ずかしいくらいぶきっちょだな
ビルの上で待つ方も、ビルの下で叫ぶ方も
雑踏の中でキノコの香りがする、藪の中と同じ香りだ
特別な意味なんてない、ただ胸がドキドキするだけ
(ニガクリタケ)