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絵本の楽屋   by 夏野いばら

「あくたれラルフ」                       ジャック・ガントス:作 ニコール・ルーベル:絵 いしいももこ:訳 童話館出版

あくたれの、おかれた場所

「あくたれラルフ」。これは、あくたれの限りをつくす、腐れ・ダメ猫のお話である。やることなすこと陰湿で、手に負えない。まともなことは、何一つしない放蕩ネコ。

読者の子供たちは、ページをめくるたび、その悪業の数々に息をのみ、拍手喝采する。だって、一度はやってみたいもーん! ラルフは、子どもたちのダーク・ヒーローだ。

しかし、子どもたちよ。考えてごらん、どうしてラルフは、こんなに堂々とあくたれられるのか? この絵本を、最初からよく見直してごらん…。

―「あくたれねこのラルフは、セイラのねこでした」
なんと、最初の一文が、物語のすべてを支配していた!
あまりの暴虐ぶりに、ついうっかり忘れていたが、ラルフは野良猫ではない。初めの初めから、飼い猫だった。

それは、ルカによる福音書15章に出て来る放蕩息子の姿と同じだ。
どれほどあくたれてみたところで、彼は初めから、比類なき愛の中におかれていた。

それで? それから、あくたれラルフはどうなった…?
それは読んでのお楽しみ!

飼い主家族三人の、ラルフに対する役割分担が絶妙です。

原題はRotten Ralph. 「腐った/下劣なラルフ」を「あくたれラルフ」と訳したいしいももこは、やっぱり偉大。
人気の絵本で、シリーズ化されていますが*、初発の本作が特におススメです!

*「あくたれラルフのハロウィン」「あくたれラルフのクリスマス」(いずれもPHP出版)など

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