あくたれの、おかれた場所
「あくたれラルフ」。これは、あくたれの限りをつくす、腐れ・ダメ猫のお話である。やることなすこと陰湿で、手に負えない。まともなことは、何一つしない放蕩ネコ。
読者の子供たちは、ページをめくるたび、その悪業の数々に息をのみ、拍手喝采する。だって、一度はやってみたいもーん! ラルフは、子どもたちのダーク・ヒーローだ。
しかし、子どもたちよ。考えてごらん、どうしてラルフは、こんなに堂々とあくたれられるのか? この絵本を、最初からよく見直してごらん…。
―「あくたれねこのラルフは、セイラのねこでした」
なんと、最初の一文が、物語のすべてを支配していた!
あまりの暴虐ぶりに、ついうっかり忘れていたが、ラルフは野良猫ではない。初めの初めから、飼い猫だった。
それは、ルカによる福音書15章に出て来る放蕩息子の姿と同じだ。
どれほどあくたれてみたところで、彼は初めから、比類なき愛の中におかれていた。
それで? それから、あくたれラルフはどうなった…?
それは読んでのお楽しみ!
飼い主家族三人の、ラルフに対する役割分担が絶妙です。
原題はRotten Ralph. 「腐った/下劣なラルフ」を「あくたれラルフ」と訳したいしいももこは、やっぱり偉大。
人気の絵本で、シリーズ化されていますが*、初発の本作が特におススメです!
*「あくたれラルフのハロウィン」「あくたれラルフのクリスマス」(いずれもPHP出版)など