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絵本の楽屋   by 夏野いばら

「だいすきだよ おつきさまにとどくほど」 アメリア・ヘプワース:作 ティム・ワーンズ:絵 前田まゆみ:訳 パイインターナショナル

ベタに愛を伝えよう

子育て真っ最中の頃。
こういう絵本は、とても苦手だった。

わざわざ「君のことを愛してるよ☆」だの、「とーっても大好き♡」な―んて、
絵本の中で言わされるのは、もう、勘弁してほしかった。

しかし。
なりふり構っていられなかった子育ての日々も遠くなり、
孫がいてもおかしくない年齢にさしかかってみると、

子どもへの愛情を言葉でそのまま伝えることは、意外に大切で、
必要なことかもしれない、と思うようになった。

特に最近、若い現役ママさんたちの子育てを見ながら、そう思う。
とにかく、ママさんたちが、忙しすぎるのだ。

私の世代は、「子どもが中学に上がったから、仕事を再開する」という人が多かった。
しかし今は、「小学生になったら…」どころか、「育休が明けたら」が当たり前だ。

こうして、「お母さん」と言う存在とすれ違いながら日々を過ごさざるをえない子どもたちの中に、そこにあるはずの「お母さんからの愛情」を受け止め損ねている姿が目に付く。

あるいは、お母さん自身も多忙にまぎれて、あるはずの愛情をうまく差し出せずにいるのかもしれない。

若いお母さんたちに、「子どものために、長く家にいるべし」などと、言うつもりはない。ただ、隣に寝転んで絵本を読み聞かせることができる期間は、ほんの数年。
とても貴重だ。

その貴重な時間に、このメッセージを言葉にして繰り返し伝えておけば、その「読み聞かされ体験」は、子どもの「記憶」となって、将来その子を支えてくれるはず、と思う。

やがて訪れるすれ違いの日々に、「ママから絵本を通して『愛している』と言ってもらった記憶」は、子どもの力の源になる。

この絵本には、英語テキストと日本語訳が併記されています。
いつか子どもは、英語を読めるようになり、一人で開いて、新たにテキストに出会い直せるでしょう。

英語を読めるようになった彼/彼女が、
「あ、ママは、こんなベタな絵本を読んでくれていたんだ」
と、思い出すことができれば、
思春期・青年期を戦う新たな力になるかも…

長い目でみて、そんな期待も抱かせてくれる、バイリンガル絵本です。










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