土曜日の夕方、夕食の準備をしていた時、チャイムが鳴るので玄関に行くと、本を手にした女性が1人立っています。
何か精神修養を学ぶ勉強会の案内に来たそうです。私は調理中なので
「今、忙しいのでご免なさい」と断ると
「あなた、今忙しいと言われましたね。忙しいという漢字は心が亡びると書きます。
忙しいと口にした時から、あなたの心は亡びているのです。だから心を取り戻す為に勉強しましょう」と言われました。
「天婦羅油もガスにかけたので、本当にごめんなさい」と断り、失礼しました。
部屋に戻ると夫と子供が手を叩いて、大喜びしなが言うのです。
「わー!心がほろびた人が来たよ!」
いつも、偉そうに説教する母親が、見ず知らずの女性から、まるで「笑うせぇるすまん」の喪黒福造から言われるように「心が亡びている」と宣告されたのが、面白くてたまらなかったようです。
それから数日間、私は「ほろびたひと」という有り難くないアダ名で呼ばれました。
次にこのようなご案内を受けたら、どんな理由を言おうか考えていた時、名案が浮かびました。
数ヶ月前から「般若心経」の写経を始めていたので、今度来られたら「いやいや、私は写経をしていて心は落ち着いていますよ」と答えてやるぞーと息巻いていました。
何故か、二度と喪黒福造さんは来てくれませんでしたが、その後似たようなお誘いが有った時にしっかり役立ちました。