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刑事訴訟法

日々数が増えていく論証

一事不再理の事物的範囲

2006-03-03 16:21:02 | 一事不再理
【問題提起】 
一事不再理効はいかなる事実の範囲に及ぶか。

【田宮】
 一事不再理効の根拠を二重の危険に求める立場からは「危険」があった場合に一事不再理が生ずる。ここで「危険」とは手続きの負担という事実に由来して被告人に再訴阻止の権利を保障するものである。
 この点現行法は検察官に公訴事実の同一性を害しない限度で訴因変更(312条1項)を認めている。よって公訴事実の同一性の範囲で被告人は手続きの危険にさらされたといえる。
 したがって、公訴事実の同一性が認められる範囲の事実に一事不再理の効力が及ぶと考える。

田宮p452~453

免訴に一事不再理効は生ずるか (田宮説)

2006-03-02 16:20:01 | 一事不再理
【問題提起】 
 免訴判決に一事不再理効が発生するか。337条1号の「確定判決」に免訴判決が含まれるか問題となる。

【田宮】
 まずは免訴判決の性質が問題となるも、免訴は訴因に内在する訴訟追行の利益のないときに言い渡す訴訟を形式的に打ち切る裁判であるので形式裁判である。
 とすれば免訴は実体裁判である「確定判決」に該当せず一事不再理の効力は生じないとも考えられる。
 しかし、一事不再理効の根拠を二重の危険に求める立場からは例外的に危険が発生したといえる場合には一事不再理効が生ずると考えることができる。すなわち、二重の危険における「危険」とは実体審判による負担という事実的な観念であるが、免訴判決がなされた場合でも実体裁判における負担と同視しうるような負担を被告人が負った場合には一事不再理効を認めてもよいと考える。
 例えば当初適法な訴因で起訴審理中、免訴事由に当たる事実が認定されて免訴が言い渡されたような場合は、当初の訴因での再起訴を認めるべきではないことである。

田宮p448~451

一事不再理効の根拠

2006-03-01 16:17:47 | 一事不再理
【問題提起】 
 審判がすんだ以上、同じ事件は二度ととりあげないという原則を一事不再理効の原則(憲法39条、刑訴法337条1号)という。かかる効力は何を根拠に発生するか。

【田宮】
 この点確定裁判の内容的効力にその根拠を求める見解がある。しかし、憲法39条が二重の危険に由来する規定を設けたこと、当事者主義の訴訟構造(256条等)を持つ現行法が訴因制度を採用していること、からかかる見解は妥当でない。一事不再理効の根拠は実体判決の効果以外に根拠を求めるべきである。
 そこで一事不再理効の根拠は被告人が刑事手続きにさらされたことに対する効果だと考える。すなわち、憲法39条の二重の危険は手続きの負担という事実に由来して被告人に再訴阻止の権利を保障するものであるが、この二重の危険が一事不再理効の根拠だと考えるのである。

田宮p445~447