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直列☆ちょこれいつ

最近は神社や神道などの古い文書の解読をしています。
研究のまとめはカテゴリ『自作本』から。

ショートショート1831本目

2009年05月02日 | イラスト(他・趣味)


何日か前考えていたジェネレーションギャップの考えを
なんとかまとめることができたので、
ショートショートの形式にコーディングしてみました。

一般のショートショートと見たら下の下でしょうけど……
わたしのショートはこんなものです。

なにを考えてこんな文章になっているのかは
何日か前をごらんください。



▼▼▼▼ここから▼▼▼▼

世代間齟齬


「あー、もう! なんだかなあ」
 バイト帰り。駅で待ち合わせた彼の顔を見るなり、
わたしはついこぼしていた。
「どうしたの?」
「あたらしいバイトの子! 何も言わずにただ休むのも珍しくないし、
遅れて来るのはあたりまえ。
バイト中にも普通に携帯でメールしてるしさあ。
……なんなの、いまどきの子って。ほんと信じらんない」
「ははは。『いまどきの若いもんは』か。ずいぶん年寄りくさいぞ」
 彼の言葉に笑ってしまいながらもすこしむっとして。
「でもほんとにさ。常識も良識もぜんぜんないし、
わかってもらおうとして言っても、わかろうともしないんだよ? 
冗談じゃないよ」
「そうだなあ」
 彼は空を見上げて歩き出しながら、言った。
「命には、変えられない性質があるとぼくは思う」
 ――なんの話?
 思ったけれど口をつぐんで、深く穏やかな声を聞きながら並んで歩く。
「それは、『より活発になること』と、『より増えること』。
……まあ、簡単に『増長すること』『のさばること』とでも言っておこうか。
それは動物でも植物でも、悪性新生物でも病原菌でも同じ。
 でも、普通はそれを抑える『命の枠組み』のようなものがある。
たとえば一定の枠を超えてある種が増えすぎれば、
食べ物や養分、日光といったものが足りなくなって
成長するのを妨げるようになるし、
へたをすれば死んでしまうことにもなる。
 もちろん人間だってこのまま増え続ければ
食物不足や環境破壊で生きていられなくなるだろうけど、
いま、さしあたっての危機じゃない。
人間が増長するのを止めようとしているのは物理的な枠じゃないんだ。
 たとえば君が何かをしたいと思うとき、
それを押しとどめるものはなんだと思う? 
心のままに甘いものを食べてしまいたいとき、
腹が立って相手を殴ってしまいたいとき、
お金がないのに見かけた服が欲しくてたまらないとき、
他国に攻め入って領土を奪いたくてたまらないとき、
気持ちが行動に出るのをとどめるのはなんだろう」
 振り向いて柔らかな笑みを浮かべる彼の顔。
「それは――自制心とか、良識とかでしょ」
「そう。今、人の活動を抑えているのは物理的な枠ではなくて、
もっぱら精神的な枠なんだ。
人を病原菌にたとえるなら、
良識や常識はその活動を抑える薬のようなものだね。
でもそれは、命の目的には反してしまってる。
命は常に、『増長する』ことを目指しているんだから。
 そこで、命は対抗手段を用意する。
結核菌が薬剤耐性を持つ次世代を生み出すように、
人も、自分の活動を抑える薬に耐性を持った世代を作り出すんだ。
――どう?」
 にっと笑ってみせて、彼は訊いた。
「えっ?」
「前世代の病原菌が、次世代の病原菌に、
『自分たちには効いていた薬が効かない』と嘆くのが世代間齟齬。
でも、そう思えば当然じゃない?
『あたらしい世代は良識や常識がない』のは当然。
もともとが前世代の活動制限を乗り越えようとして、
薬への感受性を下げ、耐性を持たせて『命の目的』が
作り出したのが新しい世代なんだから。
 食事に入った店で熱いお茶を注文したのに、
『この熱いお茶は熱くて嫌だ』なんて言うのと同じくらい滑稽だよ」
 それからわたしの頭に手を置いて。
「ぼくらはみんな、目くそ鼻くそ。世界を侵す病原菌。
とまることなくどんどん増長していくよ。
きっと――命の枠にぶつかるまで、ね」


▲▲▲▲ここまで▲▲▲▲

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