直列☆ちょこれいつ

最近は神社や神道などの古い文書の解読をしています。
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めんそーれの語源・わーばぐとぅの語源

2021年04月05日 | ちょこのひとかけ
最近、沖縄地名とその語源を調べていることもあり、
なにかの役に立つかと沖縄弁についても調べ始めてみました。
すると、これがなかなかおもしろいのです。

わたしは基本言語が北海道弁のため、
沖縄弁は聞いただけではまず意味がわかりません。
でも、文字にして古語解釈の手法で単語分析を行うと
意味がわかるものが結構あるのです。

例えば、『わーばぐとぅ』

余計なことというような意味です。
どこがどうなって、こうなるか、理解できるでしょうか。

こんな単語、北海道系の観点からではまったく理解できません。
現代共通語からでも、たぶん無理でしょう。
でも、古語解釈の技法を用いれば、理解ができます。


まず、『ぐとぅ』は『ごと』の揺らぎだと考えられます。

『わーばぐとぅ』
→『わーばごと』

次に、西の方言系統だと
『ば』は『な』に変更可能です。

『わーばぐとぅ』
→『わーなごと』

それから、沖縄方言ルールだと
『わー』は『かー』などに変更可能です。
(『wa』『kwa』の交換)

ひとまず置き換えると、
『わーばぐとぅ』
=『かーなごと』

まったく意味がわかりません。

でも、もっと調べると、
『わーばぐとぅ』には
『ぅわーばぐとぅ』という形もあるというのがわかります。

それを入れて考えると、
現れるパターンは
『ぅかーなこと』
『ぅきーなこと』
『ぅくーなこと』
『ぅけーなこと』
『ぅこーなこと』
となります。

こうすると、語源に通じる組み合わせが見えますよね?
『ぅけーなこと』

現地で述べられている『ぅわーばぐとぅ』の意味は、
『よけいなこと』なのですから、
もっとも発音が近くなる『ぅけーなこと』が
『ぅわーばぐとぅ』の一段上流にある言葉だとわかります。

では、『ぅけーなこと』のさらに一段上流にある言葉は?
……といえば、もちろん『よけいなこと』です。

すなわち、
『ぅわーばぐとぅ』
は、
『ょけーなこと』
を単に沖縄弁訛りで口にしただけだったのです。

沖縄弁単語は特殊で、沖縄弁特有のものだと
考えられているように見えますが、
なんのことはありません。
東京弁が単に沖縄弁に変換されただけ、
というものが結構あるのです。


たとえば、
『めんそーれ』
もそうです。

今は、この語源は『参り候え(まいりそうらえ)』で、
それが揺らいだもの、と考えられているみたいですが、
こんなのはインチキです。
古語か言語、方言を研究したことがあるならば
一聞きでわかるようなデタラメです。

 め ん そーれ
 まいりそうらえ

たしかに、音は似ているとは思います。
……が、だから、なんなのでしょうか?
『音が似ていたら』、なに?

ひとつの単語に、似た意味と
似た発音をこじつけたら語源になるなんて
誰が言ったのでしょう。
こんなものは、ただの駄洒落です。
言葉は駄洒落でできているわけではありません。
論理でできているのです。

とりあえず、『めんそーれ』の『そーれ』を見てください。

これには、ほかにも使い方があります。
『よーんなー しみそーれ』
『がんじゅー しみそーれ』

『めんそーれ』が『まいりそうらえ』だというのなら、
『よーんなー しみそーれ』は
『よんな しみ そうらえ』?

『がんじゅー しみそーれ』は
『がんじゅ しみ そうらえ』?

『しみそうらえ』とは何ですか?

これを見ただけで、『そーれ』が
『そうらえ』ではないのはあきらかでしょう。

駄洒落を語源と言いたい人は、
とにかくサンプリングをやっていません。
ただ一語だけを見て、その音にこじつけようと
やっきになっているのです。

研究したいものの数を集めて共通などを探るという
サンプリングなんて、研究者の基本でしょう?
『めんそーれ』は『まいりそうらへ』が揺らいだものだなんて
述べられる人間は、『そーれ』の使い方を
どれだけサンプリングしてそう言ったのでしょうか。

『めんそーれ』ただ一つだけを見て、
『そーれ』を『そうらへ』が元だ、なんて述べる人間は、
言葉にかかわることなんかしてはいけないし、
研究者ぶるのもやめてしまえと思います。

サンプリングも分析もろくにできないものが
方言研究、言語研究にかかわるのは、害悪です。


では、正しい手法で簡単に分析していくので
見てみてください。

『よーんなー しみそーれ』は
『良ーきにー しなさーい』みたいな意味です。

『がんじゅー しみそーれ』は
『元気にー  しなさーい』みたいな意味です。

ならば、
『めんそーれ』の『そーれ』は、
共通弁で『さーい』の意味を持つのではないか、と
考えるのがもっとも合理的です。

簡単に置き換えれば、
『めんそーれ』は
『めんさーい』です。

これを踏まえて、めんそーれの使われ方を見ると、
『めんそーれ』と同じで『んみゃーち』があり、
さりゆく人に、
『またんめんそーりよ』
ということがあるそうです。

『めんそーりよ』。
共通弁『さーい』は、『やめなさーい』や『やめなされよ』と
発音が変化できます。
『めんそーれ』と
『めんそーりよ』の変化もこれに共通するものが見えます。

それに、
会って『めんそーれ』、
去り際に『またんめんそーりよ』。
この対応を見れば……

実際的に、この言葉が何を表現しているのか、
どういう組み合わせと同じ意味なのか、
文脈的に、文法的に、常識的に、理解できますよね?

会って『めんそーれ』『んみゃーち』。
去り際に『またんめんそーりよ』。

発言としては、

 会って『お目にかかれて』
 去って『またお目にかかり』

 会って『お会いできて』
 去って『またお会い』

 会って『nice to see you』
 去って『see you again』

このような組み合わせとなっている、と解釈できます。
状況と発言は、共通弁でも、英語でさえも、同じです。
『めんそーれ』は古語の『参り候え(まいりそうらえ)』だ、なんて
言うまでもなく、発想は現代語と同じなのです。

語源が何かは定かでなくとも、
『めんそーれ』の『めん』は、
『お目に』『お会い』『see』を意味しています。

では、実際の『めん』とは何かと言えば――
英語『see』と同じく、『見』であるとも考えられますが、
もうひとつ、可能性がありそうです。



世の中には単語の解釈も分析もてきとうに、
駄洒落を語源にする話が多くあります。
有名な古文書の解読も、誰がやったんだか
めちゃくちゃなものが多すぎてうんざりします。

こういった、駄洒落に基づかない、
現代式単語分析で、古文書や語源を明らかにしていく研究も
現在やって、まとめたものをアップしていますので
興味があればカテゴリの自作本 からごらんください。

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