04
最初は会社でテキストに打ち、それを家で打ち直して
印刷するという手順をとっていました。
大量にあるため家では紙のまま置いていたりも
したのですが、ある日、家族がそれを読んだと言いました。
ものは、『白い浦島太郎』です。
どんな感想だろうと思っていると、言われます。
「亀食べるところもあるよ」
――ええ? それが感想?
結構ショックでした。
わたしは自分では、亀を食べるだのなんだののことを
書いたつもりではありませんでした。
浦島太郎を白人に置き換えたら、
白人はクジラやいるかを賢いから傷つけるな、
食い物にするなと言うわりには、
何も考えずに黒人を差別したり食い物にしたりする、
ということをあてこすったつもりだったのです。
ショートショートがすこしわかるような気に
なっていた頃だったせいか、衝撃はよけいに大きかったです。
なにかを書いているつもりになっているのは自分だけで、
本当はだれにも何にもわからない文章しか
書けていないんじゃないかという不安はずっと離れません。
初期のショートショートにおまけクイズをつけたのは
このあたりからです。
05
書き始めてから半年後あたり、
ブログで言えば2006年04月04日のこと。
ふと、考えてしまいました。
――このままたくさん書き続けたら、
ギネスブックにも載れるんじゃないの?
そこですこし調べると、日本でショートショート最多で
ギネスブックに載った人はいないようなのです。
そもそもショートショートとは何か、という定義からはじまり、
書いたものがすべてショートショートなのかの吟味も必要で、
しかも書類はすべて英語が条件。
そんなのは無理、だとわかりました。
多少がっかりはしたものの、
そんなものは目標ではないので気にしていられません。
06
毎日4本を目安に書き、余裕があるならそれ以上踏み込んで書く、
というショートトラック疾走のような書き方を繰り返し、
2006年06月05日。500本目を書きました。
このすこし前あたりに、星新一は生涯で1048本だという
記述をみつけたので目標は1050本へと修正されています。
このあたりまで来るとネタもなくなりがちで、
書き方もだんだんかわらざるをえませんでした。
書き方の変遷はこんな感じです。
・ショートショートは川柳みたいなもの。
川柳を長くしておはなし仕立てにしたもの、
政治を皮肉るもの。
↓
・ショートショートは4コマ漫画を文章で書くようなもの。
↓
・ショートショートは短い文章を旨として、
中身はわたしの考えや視点などを
他の人にもわかる形で伝えられるようなもの。
このときは、もうすでに数をかかなければいけないということが
第一条件になっていて、一本の字数が減り、
起承転結がなくなり始めたことに気づいていませんでした。
それよりもネタがないほうが問題で、
目に付いて書けそうなものは取捨選択なしで
どれも書こうとしていました。
07
体調が悪くなってきました。
普段はそれほど忙しくないのですが、
電話の一本一本、会社の上司達の一言一言が
心を蝕んでいきます。
ほぼ毎日残業になり、帰りは歩けずに
へたりこみたい気分になることもよくありました。
2006年8月の健康診断では、血液検査で4項目に異常。
勤める前の健康診断では異常なしです。
原因は過労でまず間違いないとのことだったので、
目標はなるべくはやく1050本書いて、
職場を辞めることになりました。
でも、1050本計画が折り返しに入ると、
書けるネタは本当に底をつきました。
ストック分があるので毎日のノルマは
何本か減っても数は合うのですが、
書けないことがなにより怖いです。
2006年9月4日には、ネタメモがまた尽きたと書いてあります。
ネタがなくなると、二度と書けなくなるんじゃないかという
恐怖がわいてきます。
けれど、それは余裕のなさから来たものだったようです。
主に、仕事で精神をやられていたことによるのでしょう。
休日をちゃんと休日として休めて、
心と体が落ち着くと、ぽろっと思いつくとわかりました。