直列☆ちょこれいつ

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わんつかの語源+はんかくさいの語源

2020年06月14日 | ちょこのひとかけ
北海道のマイナー方言単語に『わんつか』というものがあります。
『ちょっと』とか『すこし』とかを意味するもので、
なぜそれがこんな単語になるんだろうと、
ずっとぼんやり気に留めていたのですが、今日、ふとわかりました。

『ちょっと』をあらわし、『わんつか』に通じる単語。
『わづか(僅か)』です。

わづかわづかわづかわづかわづかわづかわづかわづか……
と連呼しながら、『づ』の濁音を清音にしてみても、
わつかわつかわつかわつかわつかわつかわつかわつか……
口の動きをほとんど変えることなく、音に出すことができます。
その間に『ん』を入れても軽く出せば語調もかわりません。

共通弁では
 音便『っ』+濁音
あるいは
 音便『っ』
になるところが
北海道弁では音便『ん』+清音
になることがあるのです。

どこが音便化され、清音と濁音が揺れるのはどこかというのは
日本語の常識上の言語感覚でわかるはずです。

たとえば『まこと』という単語であれば、
単純強調では『まっこと』になり、
決して『まこっと』にはならないことは日本人ならわかるでしょう。
この、『まこと』をさらに重い言葉にすれば、『まっごと』になります。

またたとえば『痛い』という単語であれば、
単純強調は『いったい!』になり、
さらに重く、あるいは乱暴にすれば
『いっだい!』になるのがわかるはずです。
たとえば、足の小指を角にぶつけて、
「うおおおおおお! いっでぇえええええ!」
となるような。
清音を濁音とする変化はめずらしくもなく起こるものです。


というのを気に留めてまとめなおすと、
『わんつか』は、

 元の単語の濁音を清音にし、
 代わりに強調や整調の『ん』を入れただけ

の方言化です。

『わづか』と『わんつか』と並べて説明してみれば、
一般の人にも受け入れやすい話だと思います。

考えてみればこの法則、ほかの北海道弁単語でも
見かけるものでした。

たとえば、『めんこい』。

 元の単語の濁音を清音にし、
 代わりに強調や整調の『ん』を入れただけ

ですから、『めんこい』の『ん』を抜いて『めこい』。
清音にされたものを濁音にして『めごい』。
現代語にはない単語ですから、語尾を『し』にして古語へ。
これでできるのは『めごし』。

連想されるのは『愛し』と書いて『めぐし』。
『めぐし』『めごし』。発音ゆらぎの範囲内に収まる言葉です。


もうひとつ、別の単語でも見てみましょう。
『ばか』です。
これの強調系は『ばっか』。(例「ばっっかじゃないの!?」)

 元の単語の濁音を清音にし、
 代わりに強調や整調の『ん』を入れただけ

ですから、
元の単語の濁音を清音にして、『ばか』→『はか』。
強調や整調が入る位置は『は』の後ろですから、
そこに『ん』を入れて、『はか』→『はんか』。

つまり、『ばか』は『はんか』で置き換えができることになります。

そこで、共通弁での
「ばかくさいこと言ってんじゃねーよ」
という言葉のばかを今ので置き換えてみましょう。

すると、
「はんかくさいこと言ってんじゃねーべや」
とできます。
問題なく北海道弁です。

共通弁の口語馴音で
「ばっかくせーこと言ってんじゃねーよ」

「はんかくせーこと言ってんじゃねーべや」
と、まったく問題なく置き換えできます。

つまり、『はんかくさい』の『はんか』は
『ばか』がなまっただけのものなのです。
この変化をするものは、上記に二例出しておきました。


……なんてことをわたしがどこにどう言ってみても
一笑に付されるだけですが、
もし、どこかのお偉い先生かなにかが同じことを言ったら、
「考えてみる余地はある!」とか言われるのかもしれません。

一般には『はんかくさい』は『生半可』の『半可』が元だと
考えられているようですが、
わんつか常識的・文脈的・文章的に解釈すれば、
そんなもんが『はんか』にならさるわけねーでしょや。

まったくはんかくさいことです。

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