goo blog サービス終了のお知らせ 

直列☆ちょこれいつ

最近は神社や神道などの古い文書の解読をしています。
研究のまとめはカテゴリ『自作本』から。

糸魚川はなぜ糸魚川というのか

2025年07月21日 | ちょこのひとかけ

先日、『糸魚川には糸魚川という川はない』という話を見て、
そうなのかと思いましたが。
その後、『なぜ糸魚川を糸魚川と呼ぶようになったのかは不明』
とも見て、なんだかそわっとしたのですこし調べてみました。

古い神道の研究者の観点でとりあえず述べてみます。


まず、『糸魚川』は、区切りや文字が違う可能性が
考えられます。
地名が昔の漢字を正しく保持している、というのは
むしろレアケースだからです。
元には別の漢字があたっていることを調べたほうがいいでしょう。

もっともだめなのは、『糸魚川』と見て、
いきなりこの漢字や読みでダジャレを作り始めることです。
地名とはそういうものではないのです。

よって、
『糸魚』という魚が『川』にいた
とか、
『糸』で『魚』を『川』で釣った
とか、
漢字でダジャレを作っているのはまず全部だめ。
これは、地名の基礎的な考えを知らない人々が
いつも適当にやる手口だからです。
こういうダジャレが正しくなにかを言い伝える例を
わたしは知りません。


では、話を戻します。
『糸魚川』で周囲の名称を調べると、
『五十君神社』が見つかります。
これは神社ですから、もちろん神道関係の名称で、
わたしの研究範囲です。
これはとても意味深いものと言えます。

神道では、『五十』はまず、
『イソ』か『イト』の発音です。
これが時代を経ると、
圧縮の『イ』と『イカ』の音が揺らぎとして現れ始めます。

これをふまえて。
『五十君』を見ると、現代音では『イキミ』とされているようです。
つまり、音は『イカ』系の圧縮をされているか、
あるいは『イ』であるのですから、
古い発音が失われた新しい神社名の発音だと言うことがわかります。

古い発音では、この神社は
『イソミ神社』、あるいは『イトミ神社』と発音されていたはずです。
イトミはあるいは、伊丹(イタミ)などと同語源かもしれません。

これを踏まえて倭名類聚抄を見ると、
糸魚川近くには、
『イソミ』に近い音の『佐味(サミ・ソミ)郷』や、
『イトミ』から変音する『イキミ』の、
『五十公(イキミ)郷』・『五公(イキミ)郷』・
『膽君(イキミ)郷』が見つかります。
『膽』は『胆』の旧字で胆振(いぶり)などの胆(い)発音。

こちらは『五十』を『イ』と呼んでいて、
公と君で表記も揺れているため、時代を経ている名称であるのが
見て取れます。

また、近くには日置や那珂、夜麻といった
九州から運ばれてきたような名称も見えます。
『五十君(イキミ)神社』と同音の
『生身(いきみ)天満宮』は、菅原道真を祭っています。
菅原道真で有名な九州にある神社は九州上部の大宰府天満宮。
おそらく、『五十君(イキミ)』と『生身(いきみ)』は
同じ語源を持つものと伺えます。

ほかには、
『イソミ』が揺らぐと、『イサミ』。
『イカミ』が揺らぐと『イキミ』や『イクミ』が出て。
これが『伊久礼神社』の『イクリ』や
『勇礼(イサリ)』などにもなっているのかもしれません。

ただし、そばには栗で有名な小布施もあるので
単純に栗を育てた場所だった可能性もあります。



というところで、
糸魚川をなぜ糸魚川というのか、は。

もともと、そこらの地名は『五十ミ』と言って、
『イトミ』と発音し。
そこにある『五十君神社』も、
もともとは『イトミ神社』と発音していて。
(今回は詳しく調べていないので、テキトーです)

それが時代とともに揺らぎが現れ、
神や人名のほうの発音は、時代の経過とともに
『五十ミ』は『イカミ』や『イキミ』に変化して。
地名の方は
『五十ミ』の
『イトミ(yitomi)』から
『イトウィ(イトイ/yitowi)』に
変わっていって。

そこにあった目立つ川は、
『五十ミ』の川で、『五十ミ川』。
おそらく今の姫川を、昔は『五十ミ川』、
イトミカワと呼んでいたのでしょう。

それが『イトウィ(イトイ)川』となり、
『糸魚川』と字を変えられたのではないか、
というのが、いま、ざっと調べたところの結論です。

あるいは、姫川自体も
『イトミ川』→『イキミ川』→『キミ川』→『キメ川』ときて、
意味がわからなくなった人が
『ヒメ川……?』とやったのかもしれません。
場合によっては、『生目(ィクメ)川』や『久米(クメ)川』と
なっていた可能性もあったかもしれません。


こうして考えてくると、意味が出てくる伝承が、
『糸魚川は、『いどみ川』といって、
なにかに挑んだ川がのちに名前が変わったのだ』
というもの。
おそらく前半の、
『いとい川は、もとはいとみ川といった』
は正しい伝承なのでしょう。

でも、それを大人から聞いた当時の物知らずのこどもが、
「そもそも、いとみ川ってなんだよ」
と思って、意味のわからない不安定さを補うために、
『いとみ川』を『挑み川』にして
意味をこじつけて自分のこころを納得させたのが、
後半部の話なのでしょう。





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« にらたま | トップ | レビュー:りんごサンド »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ちょこのひとかけ」カテゴリの最新記事