Toshiが行く

日記や趣味、エッセイなどで描く日々

「笑う閻魔」様

2021年10月21日 06時00分00秒 | エッセイ


閻魔大王は、冥界の王として死者の生前を裁く、
大変に怖い形相をされた神である。
ところが栃木県益子町の西明寺に
おられる閻魔様はちょっと違う。
「笑う閻魔」様として評判なのである。
写真で拝見すると、口角を上げ、
大きな牙をむき出しにされているが、
確かに笑っているように見える。

         
         一般に閻魔大王はこんな形相をされている

なぜ閻魔様は笑っているのか。
そもそも日本の仏教では、閻魔大王は地蔵菩薩の化身とされており、
閻魔様=お地蔵様の本当の役割は、
地獄に来た人たちの悪いところを治して極楽に送ることなのだそうだ。
「針の山」とは鍼をさして治療し、
「火の海」とはお灸をすえて治療するという例えなのだという。
お地蔵様とあれば決して怒らず、いつも笑みを浮かべながら……。
西明寺の「笑う閻魔」様、つまり「木造閻魔大王座像」の謂れである。
江戸時代の一七一四年に作られており、
栃木県の県指定有形文化財となっている。


                    西明寺の「木造閻魔大王座像」(真ん中)

一方で東洋思想家の境野勝悟氏は、こんな逸話を語る。
ある日、一人の男が閻魔大王の前で
「私は生前一度も嘘をついたことがありません。
だから自分は極楽に行く資格がある」と訴えた。
閻魔大王が「それは本当か」と質すと、
「はい、一度も嘘をついたことはありません」と繰り返す。
すると、閻魔大王は大声で笑ったのである。
そして、笑い転げながらこう言ったという。
「おまえ、それじゃつまんない人生だったろう」。


さて、この逸話をどう考えるか。
お地蔵様の化身である閻魔様が嘘をつくこと、
さらには悪事を働くことを「よし」とされるはずはない。
「それじゃつまんない人生だったろう」と大笑いされたのは
「人生は楽しまなきゃ意味がない。
そのために人に迷惑を掛け過ぎてはいけないが、
少しくらい嘘をついたり、悪事を働いたりしながら、
上手に世渡りをしていくところに楽しい人生の妙味がある」
みたいなことを仰ったのではないか──境野氏はこう解説してくれる。


     この話を聞いて少し気が楽になった。
     少しくらいの嘘、少しくらいの悪事が
     なかろうはずがない。




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2 コメント

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あら、見てたのね~ (keiko)
2021-10-22 22:52:12
少しくらいの嘘、少しくらいの悪事が
なかろうはずがない。
……見透かされましたか?
見逃してくださいな(^^;)
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Unknown (Toshiが行く)
2021-10-23 07:34:07
keikoooooo~
よかろう、ここは見逃すことにする。
だが、決して大嘘、大悪事を働くではないぞ。
あっハハハハハ~~~~~
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