九杯目には早すぎる 蒼井 上鷹 双葉社 2005-11 by G-Tools |
蒼井上鷹のデビュー作。
第58回日本推理作家協会賞・短編部門の候補作「大松鮨の奇妙な客」、
第26回小説推理新人賞受賞作「キリング・タイム」等を含む、
5つの短編、4つのショートショートから成る短編集。
デビュー作という事で正直あまり期待せずに読んだのだが、コレが実に面白い。
ユーモアとブラックを見事に融合させた短編集であり、
軽妙な文章と読後感の悪さが何とも言えない魅力を生み出している。
9編ともよく練られた話で意外性に富んでおり、
特に「大松鮨の奇妙な客」は“鮨と茶碗蒸しをぐちゃぐちゃに混ぜて食べる客”という、
何とも奇妙な謎から意外な結末への持って行き方が非常に素晴らしく、
コレを読む為だけにこの短編集を買っても損はないんじゃないかと思わせる出来。
私的に一番面白かったのは「私はこうしてデビューした」で、
ストーカー話を題材に結末は“アレ”で来るんだろうなぁと思ってたら、
見事に外されてその結末にはマジでやられたと思いましたね。
その他にも全ての作品に酒や酒場を登場させ、
それらに纏わる色恋や悲運なんかを描いたりしてるのも良い感じだし、
ホント、デビュー作とは思えないぐらい完成度の高い短編集になっている。
ミステリ作家としての才能やセンスは確かなモノだと思うので、
次作以降も非常に楽しみなトコである。