τになるまで待って 森 博嗣 講談社 2005-09-06 by G-Tools |
森林の中に佇立する「伽羅離館」。
超能力者・神居静哉の別荘であるこの洋館を、7名の人物が訪れた。
雷鳴、閉ざされた扉、つながらない電話、晩餐の後に起きる密室殺人。
被害者が殺される直前に聴いていたラジオドラマは、
『τになるまで待って』だった…。
以下、少々ネタバレがあるんで、未読の方はご注意を。
Gシリーズの3作目。
買ってから半年近く放置していたのをやっと読んだワケだが、
これぞ“森ミステリィ”と言った所か。
怪しい超能力者、嵐の山荘、密室殺人など魅力的な素材を用意し、
伏線もキチンと張っておきながら、解決編は非常にアッサリと終わり、
しかも犯人の指摘や動機の説明を完全に放棄している。
まあ、コレは一人の人間を殺す為に変に凝ったトリックを用いたり、
犯人以外に理解出来るハズの無い動機をダラダラと説明する、
「本格ミステリ」に対するアンチテーゼなのだろうが、
非常にシンプルなトリックだけを解明するという展開に、
「これで終わり?」と肩透かしを食らった読者は多いのではなかろうか。
私的にはこの“本格ミステリ”やその読者が持つ“常識”みたいのを、
巧く逆手にとった展開は結構面白いと思ったし、
森博嗣らしさが出てて良いんじゃないかなと。
真賀田四季の存在や赤柳の正体など、
「シリーズ全体」に対する伏線も色々と張られているので、
次作以降が非常に気になるトコですね。