先日、商船三井が驚きの増配を発表し、私の平均取得価格に対する配当利回りは26.7%に達することになった。私のこれまでの売買や最近のニュース等についてまとめておく。
商船三井の値動きと売買
商船三井は、国内2位の海運会社で、改めての説明は不要だろう。私は2011年から保有しているが、2016年に節税売・買戻しをしただけだ。2001年から先週までの商船三井の月足チャートに売買記録を吹き出しで追記したものを以下に示す。
合わせて、2007年以降の業績の推移も以下に示す。
出所:マネックススカウター
商船三井は、日本郵船、川崎汽船と3社でコンテナ船事業を持ち分法適用会社のオーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE) に統合した。2018年4月から運航開始で、商船三井の出資割合は31%なので、ONEの利益の31%分が商船三井の経常利益に反映される。商船三井の営業利益と経常利益が2020年3月期以降乖離している理由は、ONEの黒字幅拡大のためである。
2011年購入時の状況
海運会社の業績は、会社の努力そのものよりも、世界の景気動向(海運運賃)の影響を大きく受ける。2008年3月期の好業績から2010年3月期には大きく落ち込んだが、2011年3月期にかけて回復してきた。当時、業績の底は打ったと見ていいかなと思った(結果的には大間違い)。四季報の2011年新春号の見出しは次のようになっていた。
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【前半貯金】コンテナ船、バラ積み船とも前半の運賃上昇が想定超。円高痛打でも営業大幅増益。売・返船特損。増配。12年3月期はタンカー復調でもコンテナ船運賃下落。高原価バラ積み船減るも利益強含み程度。
【高原価船】リーマン危機前に高値発注の自社船は早期売却、高値用船も期限前返船し原価改善。11年1月末メド新中計策定。下期1ドル80円想定。1円円高で9億円減益。
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以下、株価、株数については10株併合前のもので説明する。
株価は2007年10月の2,000円越えの高値からリーマンショックを経て大きく下げ、その後の戻りから再度下げてきた3月11日には東日本大震災もあって一段と下げ、500円割れとなっていた。業績は底を打ったと思えたし、株価は2017年高値の25%以下の水準だった。それで、2011年3月15日に450円で1,000株買ってみた。
しかし、株価はじり安が続き、夏以降にはさらに急落した。あまり覚えていないが当時は円高が進んでいた。10月末にドル円は戦後最安値75.32円を付けた。また、日本では原発が止まって原油需要が増えて高くなっていたし、日本の自動車生産への震災の影響もあって自動車用船が苦戦したりしていたようだ。その結果、11月には2011年安値の219円を付けた。
私は2011年11月22日に225円で1,000株買い増した。安値を付ける直前だったが、先の買い値のちょうど半分で指値していた。半値になってから難平買いするという気の長さというか、呑気さだった。私の投資スタイルだと、会社として完全にダメだと判断すれば見限って売るが、大きく業績悪化/値下がりしたぐらいでは損切りせず、むしろ買い増す。平均取得価格は338円に下がった。
2012年以降の株価と節税売・買戻し
株価は2012年2月末に391円まで上げて利益が出る水準になっていたが、その程度の利幅では利食うことは考えないので放置していた。その後は下げに転じて、10月には174円まで下げた。明らかに直近の高値を付けたと思ったら売るとか、利益が損になる前に売るとかすればよいのだが、そういうスタイルの投資ではないし、そもそも当時は会社員としての仕事も忙しかったので丁寧にフォローしていなかった。
業績は2012年3月期に赤字転落、2013年3月期も赤字と低迷していた。しかし、株価の方は2012年末からのアベノミクス相場で大きく上げ、2013年5月には482円の高値を付けた(その後の株価は2021年5月までこの高値を超えられなかった)。その後一旦下げ、2013年から2014年初めにかけて何度か高値に近付いたが超えられなかった。切りのいい500円に達したら一部利食いも考えただろうが、やはり放置したままだった。
比較的値を保っていた株価は、2015年夏にはチャイナショックで下げ、2016年に入ると景気悪化と日銀のマイナス金利導入でさらに下げた。2月には2012年安値に迫る183円を付けた。私はこの安値を節税に活かそうと、2016年2月18日に208円で2,000株(一般口座)を売り、同日、同値で1,000株(特定口座)買い戻した。さらに、2月24日には202円で残り1,000株も買い戻した。売却損は約26万円、買戻し後の平均取得価格は206円(手数料込)となった。
この頃、プチFIREを現実的なものとして意識し始めていた。そして、一般口座での売却益が国保保険料の増加につながることに思い至り、保有株式の特定口座へのシフトを開始していた。利益の載っていた銘柄が多く、あまりできなかったけれど。
2017年8月末に10株併合された。以降の説明では10株併合後の株価、株数を用いる。その後の株価は、2018年1月には4,170円まで回復したり、2020年3月にはコロナショックで1,487円を付けたりしたが、特に売買はしなかった。
注目すべき世界コンテナ運賃指数 FBXの急上昇
世界的なコロナ禍で港湾や海上輸送は混乱し、滞ったが、物の需要はあまり減らなかった。さらに、中国や欧米のワクチン接種の進展に伴う経済正常化への動きや、米国等でのコロナ対策支出の拡大によって世界の荷動きが活発化してきた。その結果、海運運賃の上昇が目立ってきた。
特に最近では、世界コンテナ運賃指数 FBX (Freightos Baltic Index)の上げ方はすごい。週足チャートは以下の通りであり、逆にいつ急落するかが気になるところだ。
最近のニュースなど
2021年に入ってコンテナ運賃が一段高となってきたこともあり、海運各社の業績改善が期待され、株価も上昇を続けた。
6月21日には、野村証券が商船三井の業績予想を上方修正した上で、Buyを継続、目標株価を7,500円に修正したというニュースが流れていた。 2022年3月期連結経常利益は会社計画1000億円(EPS752円)に対し、従来予想1826億円(EPS1387円)だったのを運賃上昇を見込んで2645億円(EPS2072円)に上げた。これだと、PER5倍でも株価は1万円に到達することになる。
6月21日の大引け後に会社予想が一気に2.2倍も上方修正され、2022年3月期連結経常利益は2,200億円、1株利益は1,756円になった。
2022年3月期業績予想の修正に関するお知らせ
7月30日には早くも二度目の業績予想の上方修正が発表された。2022年3月期連結経常利益は3,500億円、1株利益は2,797円と驚くべきレベルになっていた。修正理由は、コンテナ船に加えて、ドライバルク船の市況も考慮してとのことだった。これまで150円だった配当予想も一気に550円に引き上げられた。
2022年3月期業績予想、及び配当予想の修正に関するお知らせ
この発表を受けて株価も上げ続けている。業績や配当の変化率が大きいので、消化に時間がかかるのだろう。2007年10月の2万円越えの高値は2008年3月期の業績を反映していたとすると、今期業績予想との比較で経常利益は3,022⇒3,500億円、 純利益は1,903⇒3,350億円となる。今期業績予想は2008年3月期実績を軽く超えているので、株価は2007年10月高値を狙っても不思議はない。株価が2万円でも予想PERは7.15倍にすぎない。
今回の驚きの増配によって、買戻し後の平均取得価格に対する配当利回りは26.7%に達することになった。銘柄累損の26万円を解消するため利食いを検討しようかと思っていたが、この配当利回りで利食いする気が失せた。
ただ、この配当水準が来期以降も続くとは思っていない。世界コンテナ運賃指数はいつ急落してもおかしくないように見えるし、コロナ後の世界が落ち着けば海運運賃も落ち着くだろう。また、海運会社の業績の変化率は元々大きいので、持ち続けるのが正しいとも思えない。
当分は様子見だが、半分(100株)売却して銘柄累損を解消しつつ、残り100株を恩株にすることを念頭に、利食いの機会を探りたい。この狙いは株価が7,900円以上になれば達成できるが、せめて1万円は待ちたいと思っている。皮算用にならなければいいのだけれど。
【2022.7.29追記】
最初の記事を書いた後、2021年9月末の権利落ち前に株価は1万円に到達したが、あまりの高配当利回りに売る気にならなかった。権利落ち後、結局4,000円近くも大きく下げたが、3月末の権利落ち前には高値更新となった。商船三井は、昨年増配発表を繰り返し、2022年3月期の年間配当は1,200円にもなった。平均取得価格2,060円に対する配当利回りは58.2%に達した。
2022年3月末に株式は3分割された。また、権利落ち後は同様に配当額以上に大きく下げた。今期(2023年3月期)は、前期ほどの配当は見込めないものの、3分割後で350円の見込みであり、51%ほどの配当利回りになるので、やはり売る気にはなれないでいた。そうしたら、本日、第1四半期の好決算を発表するとともに、早くも増配を発表して年間500円の予定となり、前期実績に対してさらに増配となった。3分割後の平均取得価格は685円になるが、配当利回りは73.1%にもなってしまった。
3分割後で考えると、前期400円、今期500円の配当で合計900円だ。税金を20%として2年分で税引き後配当は720円になる。この金額は、平均取得価格よりも大きいので、前期より前の配当を考えなくても保有する600株がすべて恩株になるのが確定した。本日をもって一応、私の恩株軍団のリストに加えておこう。
なお、過去の節税売り、買戻しでの売却損が約26万円ある。配当分で埋められてはいくが、どこかのタイミングで100株だけ利益確定して売却損を消したい気もする。しかし、高配当は持続可能ではないにしてもこれだけの配当利回りを捨て、逆に売却益で税金を払うのもばからしいので、売るに売れない感じでちょっと悩ましい。
【2022.10.31追記】
記録として、10月31日に発表された通期最終益予想の上方修正と期末配当予想の増額の情報を載せておく。
2023.3期通期の連結純利益予想は従来の7000億円から7900億円(前期比11.5%増)に上方修正、期末配当予想は従来の200円から250円に引き上げることも発表した。中間配当と合わせて550円になった。
2022年10月31日 2023年3月期 第2四半期決算短信