Myselves

言葉と音楽に隠された魔法を探して放浪中。
そんな『自分自身』たちの旅の様子は?

運命と闘う中で――「愛がここにある!」

2006-04-23 22:33:31 | 音楽
2006年春定レビュー第3弾、メイン終了まで。

休憩後、舞台袖に集合する。この本番前のなんともいえない雰囲気が昔から好きだったりする。


メイン:チャイコフスキー 交響曲第5番

1楽章。出だしのGが出なくてちょっとへんこんだが、いつものことなので落ち込んでる暇はなかった。何があってもやるしかない、それだけなのだから。
この楽章は私はほとんどまいまいのサポートなんだが(ってか全体を通してだが)、うまくできたかどうかは怪しい。というのも、途中でリズムが狂ってまいまいがちょっとこっちを向いて教えてくれたので。こういうさり気ない気配りができるってところが、まいまいがパトリたる所以だと思う。
それにしても、だ。ソリさんのソロに聞き惚れてしまった。ファゴットっていいなあ。
2楽章。ホルンのミシェルは2年生なのによく頑張ったと思う。緊張しただろうなあ。クラのかおりんとかまいまいとかソリさんが上手なのは当たり前だとしても。
1箇所、なぜか2ndも目立つ(?)ところがあって、最後のパー練まであわせるのに苦労したんだが、本番は全然苦労しなかった。ただまいまいの音を聴いてるだけで、どんなタイミングでどんな音色で入ればいいのかわかった。その通りに吹けたかどうかは知らないが、少なくとも私の中では最後にちょっと音が出なかったのを除けばうまくいったと思う。
どうでもいいですが、『眠らない愛』を思い出した(詳細は後述)。
3楽章。えーっと……。何を書けば良いの? 問題なかった気がするんですけど。ソロとかソリに聞き入っていた、としか書けない。
ただね。途中のオーボエソリの音程がうーん、って思った。私音程悪すぎ。
4楽章。兄ちゃん音きれいだな。いつものことだが。あとパーカスの先輩がかっこよかった。
この楽章は臨時記号が多くて、トルコンミスとか指揮者を見てたら臨時記号をいくつか落としたような気がする。というか、細かいミスをたくさんしでかした。おいおい。やっぱり指が回らないところは回らなくて、音程が悪いところは悪くて、もうどうしようかと思った。
自分のことはどうでもいいとすると、ほかの仲間たちは音がよく鳴ってて良いなと思った。この楽章らしい勢いと元気さがあって。運命に立ち向かうって、きっとこういうことなのかもしれない。


彼女がどう吹きたいかってことは、その音から伝わってきた。
あの人を見つめることができたのか、彼を理解できたのかはやっぱりわからないけど。


余談。
去年の10月に岡幸二郎さんのミュージカル『眠らない音』の影響で、私の中でこの曲はアンデルセンの『絵のない絵本』、詩人と月の物語なんですね。そんなわけで、この曲はミュージカルで詩人を演じた姿月あさとさんと月を演じた岡さんに捧げようと思った。
だけど、ミュージカルそのままじゃなくて、ちょっと私なりに解釈があって。
1楽章は詩人の悩み。自分の詩がどうしても気に入らない。自分の選んだ言葉は薄っぺらでウソみたい。しかし、どんな言葉を駆使しても中身がないように思える。ひいてはすべての言葉に真実が感じられない。苦しくて、不安で。詩人はその苦悩を月に打ち明ける。月はただ聴いてくれる。詩人の苦悩をわかるのは月だけ。しかし月は何もできない。詩人の苦悩は深まっていく。
2楽章。『眠らない音』では『眠らない愛』というタイトルで入っている。実際にCDもついているし。
詩人は月に歌う。「私には何もない 愛の音聞こえない……」
月は詩人に歌い返す。「あなたは聞き取った……」
詩人は月に訴え、月の独白も聴く。詩人の中で、何かが少しずつ変わっていく。
3楽章。月は詩人に名もなき人々の生活を見せる。笑いがあり涙があり、苦しいことも楽しいこともある生活。人間の一生は、月から見ればあまりにも短い。しかし、みんな自らの運命と向き合い、時にそれと闘い、時にそれを受け入れながら精一杯生きている。
4楽章。月が見せてくれたもの。詩人は気付く。それは愛だと。どんなに冷たい人の中にも、きっとどこかにあるもの。運命さえそれを砕くことはできない。たとえ、運命に翻弄され、見えなくなることはあるかもしれなくても。詩人は悟る。どんなにかすかでも、ささやかでも、愛の音があるのだと。
詩人は声高らかに歌う。「愛がここにある!」
眠らない愛が、眠らない音が、ここに、心の中にあるのだと。


終演後、終わらなければ良い、と思った。
指揮者がソロを、立たせたとき、泣きそうになった。
まいまいに続いて私も立ったとき、本来ならここにいられなかったかも知れないと思うとまた泣きそうになった。


岡さん、姿月さん、私にこの曲の素晴らしさを教えてくれてありがとうございます。
一緒にこの曲に乗ったみんな、本当にありがとう。
特にまいまいには、心からの愛と感謝を。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 優美なるヴァイオリン | トップ | 音楽は続く »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

音楽」カテゴリの最新記事