こんにちは。
気づけば11月ももう終わりです。
ちなみに後2日で11月は終わりますが、取締役営業部長依頼の業務は今月中にきちんと終了しています。(笑)(『取引基本契約書②。(概要)』参照)
1年が本当に早い!このままではすぐに死んでしまいそうで心配ですね。
死ぬ前に一度でいいから山盛りの生ハムを食べたい…と思う酒飲みの今日この頃です。
さて、今日は前回の『取引基本契約書③。(前文、目的(基本原則))』の続きです。
今回は個別契約条項についてです。
個別契約は、主に【個別契約の内容】、【個別契約の成立】、【個別契約の変更】の三つの条項に分けて契約書内に盛り込むことが多く見受けられますが、その表現の仕方や構文は契約書によりかなりまちまちです。
ものによっては【個別契約の内容】でかなり特殊な形態をとることもあります。
また、合理性を確保するため個別契約が基本契約に優先されるという条項を設けることが一般的ですが、基本契約書は社内で充分検討した上で作成されるのに対して、個別契約は営業担当者によって締結されたり、注文書とその承諾という手段を用いて、正式に書面として成文化したものを交換するというプロセスが省略することが多く、その場合、個別契約と基本契約の抵触が発生した時に、基本契約を優先する旨を謳うことも契約の内容によっては合理的であると考えられ、臨機応変の対応が必要となります。
更に委託や請負などの性質を有する取引基本契約書である場合、『下請法』の拘束があるので注意が必要です。
下請法では、個別契約書の作成の代わりとなることの多い『注文書』に記載しなければならない事項が規定され義務付けられています。
その記載事項とは…
①親事業者(発注者)及び下請事業者(受注者)の名称
②製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
③下請事業者の給付の内容
④下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、役務が提供される期日又は期間)
⑤下請事業者の給付を受領する場所
⑥下請事業者の給付の内容について検査をする場合は、その検査を完了する期日
⑦下請代金の額(算定方法による記載も可)
⑧下請代金の支払期日
⑨手形を交付する場合は、その手形の金額(支払比率でも可)と手形の満期日
⑩一括決済方式で支払う場合は、金融機関名、貸付け又は支払可能額、親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
⑪原材料等を有償支給する場合は。その品名、数量、対価、引渡日、引渡期日、決済方法
…などです。
①~⑨などは概ね基本契約にも盛り込まれていますが、⑩や⑪と併せて都度、注文書に記載しなければならないわけです。
下請法には、上記の記載事項の他にも不当返品や買叩きの禁止、割引困難な手形の交付の禁止など様々な規定が存在します。
公正取引委員会発行の下請法のガイドブックに注文書の作成例などもありますので、確認をお勧めします。
なお、国際売買取引の場合、一定期間に渡って継続される売買などで、国内契約と同じように『basic contract of sale(売買基本契約)』と『individual contract of sale(個別売買契約)』が作成されることがあり、基本契約側に国際商業会議所(international Chamber of Commerce)が定める貿易基本条件『インコタームズ』に絡む条文(引渡条件等)を盛り込むこともあります。
以下、文例を記載しますが、かなり多岐に渡るため、【個別契約の内容】、【個別契約の成立】、【個別契約の変更】とも2つ3つ記載します。
【個別契約の内容】
パターン①
『商品等の価格、売買数量、規格、受渡条件、その他の条件については、都度個別契約において取決める。』
⇒売主・受託者側優利の契約書の場合、個別契約の内容に関しては、商品の品名、数量、価格、引渡日、引渡場所などを定め、支払方法、支払期日などは基本契約に定めておくのが一般的です。
売主や受託者側からしてみると個別契約ごとで支払期日や支払方法を定める形にすると、代金の回収の条件がコロコロと変化してしまうのであまり好ましくないからです。
もちろん、上記の全てを個別契約において都度定める場合もあります。
パターン②
『個別契約において明文の定めのない限り、本契約の適用される個別契約は売買契約の性質を有するものとする。ただし、注文書の支給品名ないし支給品目名欄に無償支給とある場合は、特別の事情のない限り、請負契約の性質を有するものとする。』
⇒特殊な例です。
個別契約となる注文書の記載事項の違いにより、基本契約に包含されつつも個別契約の形態が売買契約から請負契約に変化しています。
※請負契約⇒受注者がある仕事を完成することを約し、発注者がその仕事の結果に対してこれに報酬を与えることを約することによってその効力が生ずる諾成・双務契約。
『委託』が契約した業務の処理を行うことを目的とすることに対し、『請負』は契約した内容の完成を目的とします。
【個別契約の成立】
パターン①
『甲(発注者)は、乙(受注者)から買い受ける商品の数量、単価、納期、納入場所、引渡し条件その他の条件を決定し、書面(以下「注文書等」という)により乙に発注するものとし、乙がこれを承諾することによって個別契約が成立するものとする。
(2)前項の発注に関して、注文書等が乙の手元に到達した日から7営業日以内に、乙の受諾拒否の意思表示が無い場合、乙の承諾がなされたものとする。』
⇒個別契約は、電話による買主の申込みと売主の承諾という口頭のみでも成立してしまいます。
記録として不明確なものはトラブルの元になりやすいので、買主や委託者から注文書の発行を行うのがベストです。
なお、請負に関わる一部の注文書などは課税文書として収入印紙を貼付けなければならないものが存在しますのでご注意ください。詳しく国税庁の印紙税の一覧をご覧下さい。
パターン②の場合、甲からの注文書に対して、乙から注文請書などを発行してしまうと、乙の作成した注文請書は前述の請負に関わる注文書となり課税文書としてみなされます。
節税対策を考慮するのであれば注文請書の発行は行わず、非課税文書の電子メールなどの使用により承諾の意思表示を行うようにするなど基本契約書内の対策が必要です。
また、発注者の発注依頼に対する受注者の諾否は、受注者側からすれば、同じ日数であれば「~日以内」よりも「~営業日以内」の方が、間に休日などが挟みこまれる可能性を考えると当然に有利になります。
パターン②
『甲乙間の商品等の売買要綱は、次の通りとする。
①甲(発注者)は乙(受注者)に対し、商品等の発注年月日、品番、数量、価格、納期、受渡場所等を明示した文書(以下「注文書等」という)により買受申込をする。
②乙は、前号の注文書等の承諾、もしくは注文書等が到達した日から7営業日以内に受諾拒否の申し出をしない限り当該個別契約は成立したものとする。
③乙は、上記各号による個別契約の内容に従い納品すると同時に、甲に商品名、規格、数量、価格、荷受人等を記入した納品書を交付する。
④甲は、前号の納品を受けると同時に、商品等受領書を乙に交付する。』
⇒個別契約の成立要件の記載ついでに売買要綱を詳細に書く場合もあります。
パターン③
『個別契約は、甲(発注者)所定の注文書または注文データをもって契約の申込みを行い、乙(受注者)がこれを承諾することにより成立する。
(2)乙は、甲に対し注文書受領後7営業日以内または注文データ受信後7営業日以内に注文に対する諾否を通知するものとする。なお、当該期間内に乙が諾否の通知を行わない場合には、乙がこれを承諾したものとみなし、当該注文にかかる個別契約は注文日に遡って成立する。』
⇒EDIなどの電子商取引システム(オンライン受発注システム)は発注者の電子データによる発注と、それに対する受注者の電子データによる承諾通知が到達した時点で成立(到達主義)するとされます
(参照:『電子商取引等に関する準則』)
【個別契約の変更】
パターン①
『甲(発注者)および乙(受注者)は、取扱い商品の仕様および数量などの個別契約事項に関し、必要がある場合、書面による通知の上、個別契約の変更を行うものとする。
(2)前項により、甲および乙に著しい損害が発生し、甲乙協議の上、補償内容を決定する。』
⇒パターン①は完全にニュートラルな条文となっています。
仕様などは買主が決定することが多いため、個別契約の変更は買主優位になりやすいですが、売主側としては、仕様の変更のタイミングや数量の過不足などでトラブルが発生しないよう、書面による通知が条文内に存在しているかどうかの確認がポイントになると考えられます。
なお、個別契約の変更は買主側などからの一方的なものも多いので、注意しなければなりません。
パターン②
『個別契約の内容を変更する必要が生じた場合は、甲乙協議の上、変更するものとする。
(2)前項の変更に伴い損害が生じた場合の負担等は、次の各号による。
①いずれの当事者も、相手方の責めに帰すべき事由により損害を被ったときは、相手方に損害賠償を請求することができる。
②甲乙双方の責に帰すべき又は帰すことができない事由によるときは、双方協議の上、決定するものとする。』
⇒個別契約による損害が発生した場合の損害賠償について、幾分明確にした条文です。
個別契約の変更方法それ自体は、書面などにより変更を通知する旨がなく、甲乙協議という形になっています。トラブル発生時に重きを置いているとも言えます。
取引当事者間のパワーバランス次第で不利益を被ることも多いので注意が必要です。
個別契約についてはまだまだ多くの留意点が存在しますが、代表的なものを記載しました。
ではまた次回。
【Post Script】
閲覧者の皆様、ご贔屓にして頂きありがとうございます。
最近、あるキーワードで検索されている方が多いようなので、その回答して、
『機密保持契約書に収入印紙は必要ありません。』
と、お伝えしておきます。
今後とも宜しくお願い申し上げます。
【ブログ内関連記事】
※当ブログのカテゴリー『取引基本契約書』をご参照下さい。
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『法務屋経営大学院』
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管理人:法務屋(mailto:legal-affairs-shop@hotmail.co.jp)
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