コロナで虚弱化する高齢者
新型コロナの新規感染者数が天井状態となっている。ワクチン接種では2回接種完了者が5400万人を越えている。しかし現在主流となっている変異ウイルスデルタ株では、この2回の接種によっても感染を抑制しきれないとされている。
今年6月頃までは、高齢者に対する2回接種にメドが付き、感染に怯える日々からの解放が期待されていた。高齢者の多くは、それまで「感染すると死んでしまう」と固く思っており、家に籠もりきりになっていた人々が多かった。ワクチン接種が外出解禁の切り札とされていた。
しかし変異ウイルスによって、この夢は崩れてしまった。この感染急増事態では、様々な場所で感染が発生しており、高齢者施設でもワクチン接種済の人への感染が発生している事例が報告されている。この8月の感染者数における60歳代以上の割合は約6%だが、重症化している患者の多くは依然として高齢者である。感染の恐怖は、現在でも高齢者に強くある。そして高齢者は再び家に籠もりがちの生活を送らざるを得ないことになってしまった。
感染を恐れて外出を抑制すること自体は、正しい行動様式ではある。しかし家にずっと留まることは、健康面から見ると明らかにマイナスである。この事態が続く中で、確実に高齢者の虚弱化が進行していることが懸念されている。
高齢者の健康認識は
「ライフマネジメントにおける高齢者の意識調査」(生命保険文化センター、2021年6月)では、高齢者自分自身の健康状態についての認識、歩行などの行動状況について調査している(2020年10〜11月実施)。
自身の主観的な健康状態については、「よい方」(“よい”と“まあよい”の回答の合計)が45.7%と、「よくない方」(“あまりよくない”と“よくない”の回答の合計)の13.7%を大きく上回っている。「ふつう」は38.9%で約4割である。ただしこれは60歳以上の全高齢者についての数字であり、年齢を区分すると大きな違いが発生する。全体的に年齢を重ねることで徐々に健康状態に課題が多くなるのであるが、概ね75歳の後期高齢者で大きな違いが発生する様になる。
具体的には、70〜74歳では、「よい方」が48.3%で、「よくない方」は12.7%と全体としてはまだまだ元気な人の方が多い。ところが、75〜79歳では、「よい方」が41%とガクッと減り、「よくない方」は16%に増加する。そして85〜90歳では、「よい方」が26.5%で、「よくない方」は29.5%となり、よくないと認識している人の方が増える。
また、預貯金の引き出しや、日常の買い物が出来るかなどのIADL(手段的日常生活動作)は、この調査では80歳以上で明らかに出来ないとする人が増加している。これは、食事や排泄、入浴、歩行などのADL(日常生活動作)低下の予兆とされており、いわゆる介護予備段階であり、フレイルとも言われる。
1日の歩行量に関しては、全体としては30〜60分未満とする人が約3割となっており、約4人に1人が90分以上歩いていると考えている。これも年代的に大きな違いが生じ、60〜64歳では、ほとんど歩かないとする人は2%しかおらず、90分以上歩く人が約28%となる。このほとんど歩かないと言う人は、85歳以上から顕著に増加し、そもそも外出しない・できない人も出始める。先のIADLの低下とも符合している。
この歩行と認知症の関係については、既に様々なエビデンスが出てきており、歩く量と認知症発症は明らかな関係のあることが実証されている。要は、歩くほど認知症になりにくいのである。反対に家にずっと籠もっていると認知症になりやすいとも言える。
高齢者が家に籠もっていることは、健康面を考えると良いことはあまりない。コロナ禍とは言え、外を散歩することはできるはず。感染を恐れていると、短期間では問題ないとしても、今後時間をかけて影響が及んでくることも十分に考えられる。
「高齢者よ。テレビを消して、外へ出よう」である。