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さくらの丘

福祉に強い FP(ファイナンシャルプランナー)がつづるノートです。

コロナで虚弱化する高齢者

2021年08月31日 | 福祉

コロナで虚弱化する高齢者

 新型コロナの新規感染者数が天井状態となっている。ワクチン接種では2回接種完了者が5400万人を越えている。しかし現在主流となっている変異ウイルスデルタ株では、この2回の接種によっても感染を抑制しきれないとされている。

 今年6月頃までは、高齢者に対する2回接種にメドが付き、感染に怯える日々からの解放が期待されていた。高齢者の多くは、それまで「感染すると死んでしまう」と固く思っており、家に籠もりきりになっていた人々が多かった。ワクチン接種が外出解禁の切り札とされていた。

 しかし変異ウイルスによって、この夢は崩れてしまった。この感染急増事態では、様々な場所で感染が発生しており、高齢者施設でもワクチン接種済の人への感染が発生している事例が報告されている。この8月の感染者数における60歳代以上の割合は約6%だが、重症化している患者の多くは依然として高齢者である。感染の恐怖は、現在でも高齢者に強くある。そして高齢者は再び家に籠もりがちの生活を送らざるを得ないことになってしまった。

 感染を恐れて外出を抑制すること自体は、正しい行動様式ではある。しかし家にずっと留まることは、健康面から見ると明らかにマイナスである。この事態が続く中で、確実に高齢者の虚弱化が進行していることが懸念されている。

 

高齢者の健康認識は

 「ライフマネジメントにおける高齢者の意識調査」(生命保険文化センター、2021年6月)では、高齢者自分自身の健康状態についての認識、歩行などの行動状況について調査している(2020年10〜11月実施)。

自身の主観的な健康状態については、「よい方」(“よい”と“まあよい”の回答の合計)が45.7%と、「よくない方」(“あまりよくない”と“よくない”の回答の合計)の13.7%を大きく上回っている。「ふつう」は38.9%で約4割である。ただしこれは60歳以上の全高齢者についての数字であり、年齢を区分すると大きな違いが発生する。全体的に年齢を重ねることで徐々に健康状態に課題が多くなるのであるが、概ね75歳の後期高齢者で大きな違いが発生する様になる。

 具体的には、70〜74歳では、「よい方」が48.3%で、「よくない方」は12.7%と全体としてはまだまだ元気な人の方が多い。ところが、75〜79歳では、「よい方」が41%とガクッと減り、「よくない方」は16%に増加する。そして85〜90歳では、「よい方」が26.5%で、「よくない方」は29.5%となり、よくないと認識している人の方が増える。

 また、預貯金の引き出しや、日常の買い物が出来るかなどのIADL(手段的日常生活動作)は、この調査では80歳以上で明らかに出来ないとする人が増加している。これは、食事や排泄、入浴、歩行などのADL(日常生活動作)低下の予兆とされており、いわゆる介護予備段階であり、フレイルとも言われる。

 1日の歩行量に関しては、全体としては30〜60分未満とする人が約3割となっており、約4人に1人が90分以上歩いていると考えている。これも年代的に大きな違いが生じ、60〜64歳では、ほとんど歩かないとする人は2%しかおらず、90分以上歩く人が約28%となる。このほとんど歩かないと言う人は、85歳以上から顕著に増加し、そもそも外出しない・できない人も出始める。先のIADLの低下とも符合している。

 この歩行と認知症の関係については、既に様々なエビデンスが出てきており、歩く量と認知症発症は明らかな関係のあることが実証されている。要は、歩くほど認知症になりにくいのである。反対に家にずっと籠もっていると認知症になりやすいとも言える。

 

 高齢者が家に籠もっていることは、健康面を考えると良いことはあまりない。コロナ禍とは言え、外を散歩することはできるはず。感染を恐れていると、短期間では問題ないとしても、今後時間をかけて影響が及んでくることも十分に考えられる。

 

 「高齢者よ。テレビを消して、外へ出よう」である。

 


コロナが誘因した高齢者の健康弱者化

2021年08月08日 | 福祉

コロナが誘因した高齢者の健康弱者化

 昨年の新型コロナの感染蔓延始まりから、1年半になろうとしている。約100年前のスペイン風邪と言われるインフルエンザウイルスの蔓延では、国内でも3年間にわたり感染蔓延が続き、40万人を越える日本人が亡くなった。当時は、これが感染症という認識自体が当初なく、有効な感染対策が採用されなかったことが死者の拡大を招き、またワクチンも存在しなかった。

 今回の新型コロナについては、比較的早いタイミングで新型のコロナウイルスであることが判明したため、身近な感染防止策として、手洗い・消毒・マスクといった基礎的な対策が早期からおこなわれ、不要不急の外出抑制策が実施されたこと、そしてワクチン接種が開始されたことが、100年前とは大きな違いである。

外出抑制した高齢者

 新型コロナに感染すると高齢者や基礎疾患のある人は重症化しやすいと言われてきたこともあり、多くの高齢者が外出を抑制し、自宅に籠もることで感染予防をおこなってきた。

 「高齢者ライフスタイル構造基本調査 2020年」(日本能率協会総合研究所、2020年)によると、高齢者の週あたりの外出頻度は4.5日と、2018年調査と比べて0.5日低下している。とりわけ、「ほぼ毎日」外出している人の割合が顕著に低下(約12%)しており、「新型コロナの影響と思われる」としている。

 年齢別に見ると、男性は60〜64歳の減少が0.7日と最も大きく、女性では70〜74歳の減少が0.9日と最も大きくなっており、週3日は全く自宅から外に出ていない人も一定数あることになる。

虚弱化した高齢者

 これに伴い、自分自身の体力に関する満足度は、多くの年齢層で「満足している」とする割合が低下(2018年比)している。特に、男性60代〜70代前半、女性60代で低下の傾向が顕著である。

一般的に男女ともに75歳未満の高齢者は、まだ比較的アクティブに活動しており、フレイル、つまり虚弱化しにくい状況にあるとされていた。フレイルは、身体的機能と精神的・心理的機能・社会的機能のうち、どれかの機能低下があると、3機能の相互作用によりADL(日常生活動作)自体が低下することにつながるとされている。ADLが低下すると、ちょっとしたことで容易に介護状態になってしまう懸念があり、現在はフレイル予防がとても大切とされている。

 ところが今回の新型コロナで、従来は比較的元気とされていた人々の社会的行動が抑制されたことにより、身体機能の低下を招き、人との関わりが少なくなることでの認知状態の悪化が連鎖的に発生し、一気にフレイル化が進行する懸念が出ている。最近の医学分野の研究では、家の外に出て、人と会話を交わすこと自体が、健康維持に良い影響を及ぼすということが相次いで発表されており、人が社会活動を営むこと自体が、健康維持に大きな意味を持つ。これが新型コロナによって阻害されたことにより、今後高齢者の健康に対して大きな悪影響を及ぼさないかが、かなり懸念される。

フレイルを予防するために

 先の調査では、高齢者の趣味についても質問しており、この結果で趣味の上位5番目に「散歩・ウォーキング」が入った。2018年時点5位の「映画・観劇・音楽会・美術鑑賞」を抑えての上昇である。映画・観劇などの外出を伴うイベントが抑制されたことによる上昇もあるが、散歩・ウォーキング自体が増加しているのも事実である。

 高齢者の中で、虚弱化の懸念はある程度共有されており、意識的に外に出ることを取り組んだ人も一定数存在することが伺われる。こうした趣味や活動が継続すれば、確実に健康にとって良い方向に向かっていくことが期待できる。

 

 直近では高齢者のワクチン接種が進み、2回接種が終了した人も多くなってきている。これもあり、高齢者が外出する頻度が上昇してきているとの調査報告も出始めている。

 新型コロナが収束すれば、元の様に高齢者が外出するようになるのか、ニューノーマルの高齢者はやはり自宅に留まるのか。それにより、10年後の高齢者の状態は大きく変わってしまう可能性がある。この1年半程度に多くの高齢者が置かれた心身への影響は、今後長い時間の中で、現れてくるだろう。

 この間で背負った負の影響を、これから取り返すことはまだ十分できると筆者は考える。そのためにも、高齢者を自宅の外へ誘い、そこで豊かな社会生活が送れる様に、皆が意識的に働きかけることが大切だ。