使うあてなく預貯金にまわったボーナス
夏のボーナスシーズンも既にヤマ場を越えてた。コロナ禍の影響は引き続き経済に暗い影を落としており、業績悪化が継続している業種では、支給そのものがない、もしくは減少している企業も少なくない。
「Ponta消費意識調査、Pontaリサーチ6月発表」によると、夏のボーナスが支給される人の使途として、最も多かったのは「貯金・預金」で他の項目を圧倒する割合になっている。この項目自体は例年同じなのだが、今年旅行・外食を使途とする使い道を選択する人が大きく減少していることが特徴的である。また、ボーナス支給額の半分以上を貯金・預金するとしている人が半数以上となっている。
別の調査(finbee、2021年6月)でも、夏のボーナスの使い道として、預金・貯金を挙げる人が最も多く、20〜30歳代で預金・貯金にあてる金額を増やす人が、他の世代上に増えているとしている。そして、コロナ禍以降、若い世代ほど「お金に対する考え方の変化があった」と答える割合が多くなっていることを踏まえて、若い世代の消費や貯金に対する考え方に変化が生じていることを示唆している。
Z世代の消費のあり方
確かに現在は、20歳代前半からのZ世代と言われる人々が社会人になりつつある。Z世代は、生まれたときからデジタル世代(Windows95が1995年、小学生からiPhone使用)である。日本ではゆとり世代の後半世代となり、基本的生活を充足する物は既に所有しており、一般的な物欲は低いともいわれる。日本におけるZ世代の研究自体はまだ著についたところで、企業のマーケティング戦略が先行している段階である。
Z世代のお金に対する考え方自体が、従来の世代と変わってくることは予想される事態ではあるが、今年起きていることはこれと関係があるのだろうか?
実際の人の動きは
博報堂生活総合研究所が毎月発表している「来月の消費予想」の7月の消費態度指数(6月調査)という調査がある。2021年7月の消費意欲指数は48.9点。前月比は+3.7ptと上昇するも、前年比は-2.9ptの低下となったと報告されている。特に、20〜30歳代での指数上昇が大きく、女性の指数上昇も特徴となっている。「特に買いたいモノ・利用したいカテゴリーがある」人は28.9%で、「ファッション」「旅行」「化粧品」の3カテコゴリーが上昇しているとしている。
このように今年に入って事実上ずっと続いている自粛生活が、緊急事態宣言の解除等の動きを控えて、女性を中心に外出・消費を意識した方向に動いてきていることが分かる。他の調査でも、7月に入り20〜30歳代の女性が一気に外出に動いている状況は報告されており、実際の行動につながってきている様である(20〜30歳代男性は既に外出自粛をしていない事情は別にある)。これが現在の都会での人流の多さを説明する内容にもなっている。
要は使い道のないお金の行方
外出は増える傾向にあるが、実際にこれによる消費の拡大は、今のところかなり限定的とみられる。コンサートに行ける訳ではなく、旅行も避ける方向に動き、近い所へ短時間でとなってしまう。こうしてボーナスの使い道は、限定されてしまい、結果的に当座使うあてのないお金が生じてしまった。これが預貯金に流れたとみるのが、適切ではないかと筆者は考える。
このひとまず預貯金が、今後どうなっていくのかはとても興味ある点だ。コロナ後に一気に消費に向いていくのか、それとも堅実に預貯金路線が残っていくのか、消費の行方を左右する。アメリカではこの間感染リスクの低下と共に、旅行需要の急拡大など消費全体が拡大傾向にあると指摘されていたが、このところ足踏み状態も伝えられる。日本は、未だに底辺を這う様な状況が続いている。日本の行く先を占う点でも重要だ。
これらは、8月に入って発表される統計数値で確認できるであろうが、Z世代の消費性向の変化とは現時点では言えないと考える。Z世代の消費性向は、もう少し時間をかけて確認していく必要がありそうだ。