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(安倍晋三首相との単独インタビュー一問一答はこちら)
(2から続き)FTの取材に対して安倍氏は、財政再建の議論はどうなるかという質問になかなか応えようとしなかった。しかしその発言から察するに安倍氏は、戦後日本で一般的とされてきたモデルよりも、低負担?低福祉のモデルに傾いているようだった。
「社会保険料の上昇を抑えるために、効率化の努力を重ねなくてはならないし、まだまだ打つ手はあると思う」と安倍氏。「同時に、国民の納税意識に取り組んで、たとえば社会保険の保険料を引き上げるとか、サービスを受けた際の窓口負担を引き上げるなど、(より大きな)貢献をお願いするかもしれない」 首相の諮問機関として大きな影響力をもつ経済財政諮問会議で民間メンバーを務める伊藤隆敏?東大教授は、新首相がじっくり待って様子を見るのは当然だと話す。景気循環のもたらす果実を有効活用して事態打開を図れるかもしれないのに、慌てて増税するのは愚かなことだと伊藤教授は言う。
所信表明演説で「改革の炎を燃やし続けて」いくと宣言した安倍氏は伊藤教授によると、経済の規制緩和を進め、公共投資を減らす様々な対策をすでに静かに実施している。たとえば、国内では格差の拡大に対する懸念が強いが、労働基準法をさらに緩和して企業のパート雇用をこれまで以上に後押しするなどだ。安倍首相は法人税減税も検討している。 経済財政諮問会議はさらに、政府による地方債の保証を廃止するよう提言。これが実現すれば、公費支出は劇的に抑制される。
こうした中で安倍氏が支持を保つには、来年夏の大事な選挙が終わるまで経済成長が続いてくれなくてはならない。経済成長が続くかどうかは、日銀の対応によりけりという側面があるが、安倍首相にしてみれば日銀は金利引き上げに意欲的すぎるということになる。
日銀は今年7月、当時の官房長官だった安倍氏が「まだデフレ脱却を果たしていない」と厳しく警告したにもかかわらず、短期金利の誘導目標を6年ぶりに引き上げて0.25%とした。原油価格が下落し続ければ消費者物価はマイナスの領域に戻ってしまう恐れもあるが、日銀は年内の追加利上げの可能性を除外していない。
しかし安倍氏はこの点については慎重に言葉を選び、日銀は金融政策の運営にあたり完全な独立性をもっていると強調した。
「政府も日銀も、デフレ脱却を共通の目的としている。そして政府も日銀も、残念ながらデフレ脱却の目標にはまだ達していないと判断している。そのため政府としては、日銀には金融政策で日本経済を下支えしてもらいたいと期待している」と首相は話した。
しかし何も強制するつもりはないと首相は言う。たとえばインフレ目標を1%に設定するなど、何らかの正式な目標設定を日銀に要求するつもりはあるかと質問すると、首相はきっぱりとこれを否定。「そういうことは考えていない」と答えた。
新首相は明らかに、靖国問題以外でも、話の分かる穏健派という評価を確立しようとしているようだ。
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gooニュース編集部より:記事中の安倍首相をはじめとする日本人の言葉遣いは、フィナンシャル?タイムズが英語に訳した発言を、gooニュースが英語から和訳したものです。ご本人たちが必ずしも、こういう日本語表現をしたわけではないので、ご了承ください。
From the Financial Times ?? The Financial Times Limited [2012].
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