なんにも取り柄のないヤツだったけど、笑顔だけはとびきり良かった。
ヨコシマな心をしっかと持っているくせに、最高に無邪気な顔で笑うのだ。
そんな笑顔にだまされるもんか、と心を武装してキリリと立ち向かったはずが
気がついてみたら、アタシはヤツの術中にはまっていたのだった。
恋愛の賞味期限が切れたころ、ヤツはどんどん身勝手にわが道を走り始め
追いつけないアタシは、疲れ果て、全部をあきらめた。
男は、恋愛なんてものに、ウツツを抜かしてばかりはいられないんだよ。
仕事も、友だちつき合いも、趣味も、みんなどれも大事なんだ。
わかるだろ?オマエだって、他にやることがいっぱいあるだろ?
大切なモノがたくさんあるだろうよ。
もっともらしいことを言いながら、ヤツは笑った。
はいそうですか、と言葉を返してから
アタシは泣いて、悩んで、落ち込んで・・・・
そうして長い時間をかけて、ようやく立ち直った。
時折ヤツは、受話器から笑顔が飛び出してくるような騒々しい、にぎやかな声で
「元気か?」という電話をかけてよこした。
・・・・何年ぶりかに呼び出されて出掛けた、六本木のワインバーで
アタシは妹が兄貴に報告するような調子で「結婚するよ」伝えた。
そうか、よかったな。俺、指輪買ってあったのにな。
いつか渡そうと思って、何年も持ってたんだ、いや冗談冗談。
そんなドラマチックな男じゃないし俺。
よかったよかった、オマエみたいなワガママなのを
もらってくれる奇特な男が現れたんだな。
本当によかったよ、おめでとう。
そう言って見せたヤツの笑顔は、それまでアタシの見た笑顔の中で
最上級のものだった。
そう今でもアタシの心にやきついて、消えないほどに。
ヨコシマな心をしっかと持っているくせに、最高に無邪気な顔で笑うのだ。
そんな笑顔にだまされるもんか、と心を武装してキリリと立ち向かったはずが
気がついてみたら、アタシはヤツの術中にはまっていたのだった。
恋愛の賞味期限が切れたころ、ヤツはどんどん身勝手にわが道を走り始め
追いつけないアタシは、疲れ果て、全部をあきらめた。
男は、恋愛なんてものに、ウツツを抜かしてばかりはいられないんだよ。
仕事も、友だちつき合いも、趣味も、みんなどれも大事なんだ。
わかるだろ?オマエだって、他にやることがいっぱいあるだろ?
大切なモノがたくさんあるだろうよ。
もっともらしいことを言いながら、ヤツは笑った。
はいそうですか、と言葉を返してから
アタシは泣いて、悩んで、落ち込んで・・・・
そうして長い時間をかけて、ようやく立ち直った。
時折ヤツは、受話器から笑顔が飛び出してくるような騒々しい、にぎやかな声で
「元気か?」という電話をかけてよこした。
・・・・何年ぶりかに呼び出されて出掛けた、六本木のワインバーで
アタシは妹が兄貴に報告するような調子で「結婚するよ」伝えた。
そうか、よかったな。俺、指輪買ってあったのにな。
いつか渡そうと思って、何年も持ってたんだ、いや冗談冗談。
そんなドラマチックな男じゃないし俺。
よかったよかった、オマエみたいなワガママなのを
もらってくれる奇特な男が現れたんだな。
本当によかったよ、おめでとう。
そう言って見せたヤツの笑顔は、それまでアタシの見た笑顔の中で
最上級のものだった。
そう今でもアタシの心にやきついて、消えないほどに。