母のダンスパートナーの紳士は毅然とした人だったらしい。
そんな彼の少しの足元のフラつきは、母にとつて意外なものだったという。それと同時に安心もしたという。
『私だけじゃなく、年をとれば、みんな同じなんだ』
ダンスパートナーの紳士は、近くの椅子に腰掛け、少し寂しそうに母に伝えた。
『年かねぇ、みっともないところ、見せてしまったね。』
『そんなことないですよ。私も最近は足元が、怪しくなって、お互いさまですね。』
後日に、紳士のお嬢様から聞かされるのだが、その日の出来事は彼にとって、精神的なショックが相当あった。とのことだった。彼はダンス教室から帰ると、まず入浴をし、ビールを飲みながら夕飯をとるルーティンがあった。
しかしその日は帰宅するなり、すぐに寝てしまったらしく、それを見た、ご家族は不穏な予感がしたといういう。