追憶旅行

ダーと旅行へ行くという話をヨウにしてた。
延ばし延ばしになってることも…
ヨウにふいに聞かれた「美雨が今一番行きたいとこは？今までで一番楽しかったとこは？」
ダーはそんなこと聞かない。
自分で勝手に決める。
そんな強引さも好きだけど…優しい男に女は弱い。
美雨は、8歳の頃家族旅行したところを挙げた。
「一番楽しかったし、だから一番行きたいんかな…」と呟くと、「じゃあ行こう。二人で」とヨウ。
間を置いて頷く美雨。
一泊でこの夏その海に出掛けることにした。
ヨウとなら楽しいと思う。
そして同じ部屋に泊まるということは…ヨウとはもう何があってもいいと思う。
ただ、絶対にダーを捨てきれないあたしを想い続けるヨウが、あたしを抱いて、今まで以上に片思いに苦しむなら悪いなと思う。
ヨウは付け加えるように「美雨は直前になって、ダーさんに悪いから行かないとか言い出しそうやけど、それでもいいよ」
そんなセリフ言わせてごめんね。
絶対行くよ。
あなたとの約束は必ず守るから。

探偵による追跡

ダーは大学生時代、探偵のバイトをしてた。
特技は浮気調査・尾行。変な人だよね。
で、そんなダー探偵は只今ハニーの身辺追跡調査に精を出しているご様子。
美雨、5月中頃からコスプレパンチラ喫茶でバイトしてんの。
そこの副オーナー・ヨウといい感じなの。
曜日を固定してバイトしてるため、ダーとはその曜日には会わないし、メールも滞りがち、電話にも出れない。
それを察したダーは先週からメール魔になっている。
今日も朝もはよから「おはよう！今から仕事に行ってきます。今日は雨だから美雨は一日家にいるのかな？」とダー。
下手に嘘つくと失敗しそうなので、「おはよう。うん、一日家にいるよ」とレス。
「ならよかった」とダー即レス。
昼間仕事中も何度も何度も「今何してる？家にいるんだよね？」と確認してくる。
えぇい、うるさい！とホステス部屋（待合室みたいなもん）で噴火しそうになるあたしをなだめるヨウ…
夕方になり「近々会いたい。以下の日の夜は空いてるかな？」とダー。
指定してきた日は全部バイトの日ですやん！！
もう無理、
ギブアップ。
レスできねぇよ…とやさぐれる美雨を励ますS姉さんとMちゃんは「ミウちゃんの彼氏ちょっと変だよ！次行こ！次！」「いい男紹介しますって！若いのんいっときましょー」
そ、そうかも？
ヨウは「ミウ、来週休むか？曜日変える？」と気遣い。
ダーのために店に迷惑掛けられないよ、と遠慮しておく。
と言うか、ダーだって仕事中なの。
こんなメールばっかりしてて仕事がはかどるばずもない、はかどらなくていいはずもない。
あたしに惚れてほしいけど、溺れてほしくはないのよ…
彼には守るべき地位や家庭や大切なものがたくさんあるから。
それを捨ててあたしのところへ来るようなロクデナシならあたしはダーを捨てるだろう…
当分この私立探偵との戦いは続きそうである…