0740安くて美味しいSpecialワイン特集~ワインワールドの旅~ファーストクラス2
はじめに~「コス・デストゥルネル」ってどういう意味か、知ってる?
夕暮れ。
某、フレンチレストランにて。
「すいませーん」
ソムリエ「はい、ただいま」
「あのー、このシャトー・コス…なんとかというワインをコース料理とセットにしたら、トータルでいくらになります?」
ソムリエ「はい。コースですと、えー、ウルになります」
「はい?」
ソムリエ「コースですと、ウルになりますね」
「ウル?」
ソムリエ「ウルでございます」
「ウルって何ですか?」
ソムリエ「ウルはラピュタ語で王。トエルは真。君はラピュタの正当な王位継承者、リュシータ王女だ」
「いや(笑)ラピュタはいいですから、コースでおいくらになります?」
ソムリエ「ウルでございます」
「コースですと、ウルになりますか?」
ソムリエ「コースですと、ウルになりますね」
「あのー、あなたは一体、誰ですか?」
ソムリエ「私はムスカ大佐だ。ロボットにより、私の脳回線が破壊された」
「コースですと、ウルになる」という意味のワイン。
それがこの、「シャトー・コースデスト・ゥル・ナル」である。
次の日の朝10時。
そごう1階にて。
「こないだ、コースだとウルになるという、謎のワインがあったんですよ」
資生堂の人「あらあー、そのワイン、実はコスメ(化粧品)にもなりますのよー」
「ええ!?コ、コスメ?」
資生堂の人「はーい。コスメですのよー。お顔にピチャッと塗るとー、お肌がー、トゥルーントゥルーンになりますのよー」
「トゥルントゥルンに?」
資生堂の人「はーい。トゥルーントゥルーンですのよー」
お肌がトゥルントゥルンになるという、コスメなワイン。
それがこの、「シャトー・コス(メ)デス・トゥルン・ナル」である。
その頃、そごう地下の化粧室にて。
OL「ちょっとー聞いたぁ?」
OL「なあにー?」
OL「シャト子ったらさあー、まーた彼氏換えたんだって」
OL「ええー!またあ?もう10人目じゃない?」
OL「しかもさー、シャト子ったら、付き合うと、初日に寝ちゃうんだって」
OL「ええーっ!」
OL「シャト子、男グセ悪いよねー」
OL「だよねー、酒グセも悪いし」
OL「そうそう、あれなんだっけ?シャト子がいつもラッパ飲みしてるあのワイン」
「シャトコ・オスデスト・スグネル」。
次の日。
朝7時。
そごう近隣のお宅にて。
父「おーい。もう起きろ。遅刻するぞ」
娘「(んん~)」
父「早く起きないと、お前のお気に入りのストール(マフラー)、ポテトサラダに練りこんじゃうぞー」
娘「(ちょっとやめてよ!何でそんなことすんの!?)」
父「お前が早く起きないからだよー」
娘「(わかったよ。起きるよ)」
父「早く起きないと、ストール、練りこんじゃうぞー」
娘「(わかったよ。起きるってば)」
父「ストール、練るぞー、うひひひひ」
「早く起きないと、ストールが練られてしまう」という意味のワイン。
それがこの、「シャトー・オコスデ・ストール・ネル」である。
そのお宅でその時やっていたTV番組。
「ドキュメンタリー~ネルさん涙の奮闘記」
「らっしゃい!らっしゃい!らっしゃい!らっしゃい!」
「安いよ!安いよ!安いよ!安いよっーー!」
店内に、威勢のいい掛け声が、響く。
声の主は、ピケ・ソン・ネルさん、34歳。
ネルさんが日本に移住したのは、8年前。
幼いころ、家族旅行で日本に来たおり食べた、お刺身の味が、忘れられなかった。
それで、大きくなったネルさんは、「日本で刺身専門店を開きたい」、という夢を持ったという。
そして、夢の実現のために、家族ごと日本に移住した。
しかし。
ネルさんの前には、大きな壁が、立ちはだかったのだ。
都内の、最高級刺身専門店「みちのく」。
みちのくの店主は、その時の事を、こう言う。
「いやー、「働かせてくれ」って言われた時にはね、ビックリしたんですよ。うちは都内で5本の指に入る、最高級の刺身専門店でしてね。包丁も握ったこともねぇ、まして日本語もろくにしゃべれねぇ、そんなヤツを雇えるかって。うちはね、入門者には1か月の修行をして貰うことになってんすよ。で、その修業ってのは日本人でも100人に1人が合格できるかどうかって厳しいものでしてね。悪いことはいわねぇ、あんたには辛すぎる、やめときな、って言ったんですよそん時はね」
だが、ネルさんは、粘った。
言葉が通じなくても、信念は通じる。
「信念こそが、世界共通の言葉だ」、と。
ネルさんは、破天荒な入門願いに出た。
最高級刺身専門店「みちのく」の前に、朝9時から夕方6時まで、座り込んで土下座を始めたのだ。
「ここで、働かせて下さい」という、たった一つの望みを携えて。
雨の日も。
雪の日も。
客にバカにされても。
ネルさんは、1日も欠かさず、朝9時から夕方6時まで土下座した。
そして、90日が経った。
ついに、転機が訪れた。
餓死寸前のネルさんの土下座姿を見た時。
みちのくの店主の、心が、折れたのだ。
その時の様子を、みちのくの店主はこう語る。
「もうホントに、バカ野郎!って思いましたね。今から最高級の刺身をさばくのに、こんなに筋肉減らしてどうすんだって。こいつの信念はホンモノだと思いやした瞬間、あっしもね、衝動的に動きやした。救急車呼んでね、病院にコイツを連れてって、点滴打ちながら、涙涙で契約したんでさぁ。お前みたいなバカ野郎はウチでしか雇えねぇっ!てね」
信念こそが、奇跡を生み出す。
ネルさんはついに、最高級刺身専門店「みちのく」への入門を果したのだ。
その時の気持ちを、ネルさんはこう語っている。
「ワタシ、子供28人いるヨ。シゴトしなーいと、この先、子供つくれなーいヨ」
ネルさんは、信念よりも、性欲の方が、強かった。
ネルさんは、みちのくへ入門した3日目に、転職した。
家のすぐ近くにできた外資系ショッピングモール「コストコ」へ。
コストコの、ストッキング専門売り場。
ここが、ネルさんの、今の職場である。
なぜ、みちのく入門から、あっさりコストコへ転職したのか?
ネルさんはこう語る。
「ストッキングってねー。いーのヨ。被るには。ワタシの祖国、ナンジャソリャ共和国では、ストッキング、被ってる人、誰もいなーいのヨ。だからねー、ストッキング被るとねー、ご満悦なーのヨ!」
こうして、ネルさんはついに、天職に辿り着いた。
「コストコのストッキング売り場」である。
そして、今日も「コストコ アホクサ店」のストッキング売り場には。
ネルさんの威勢のいい掛け声が、響く。
はーい!
らっしゃい!らっしゃい!らっしゃい!らっしゃい!
安いよ!安いよ!安いよ!安いよっ!
持ってけ!持ってけ!持ってけ!持ってけ!
ドロボー!ドロボー!ドロボー!ドロボー!
ピーポー!ピーポー!ピーポー!ピーポー!
御用だ!御用だ!御用だ!御用だ!
出合えぃ!出合えぃ!出合えぃ!出合えぃ!
ポルンガ!ポルンガ!ポルンガ!ポルンガ!
デュルルル!デュルルル!デュルルル!デュルルル!
ヘンタイ!ヘンタイ!ヘンタイ!ヘンタイ!
パンスト!パンスト!パンスト!パンスト!
日本に来て、大好きになったという、時代劇。
そして、体に浸み込んでいる、祖国の民族舞踊。
それらが織り交ぜになって。
今日もネルさんは、声をあげるのであった。
「ドキュメンタリー~ネルさん涙の奮闘記」(完)
「コストコで、ストッキングを売る、ネルさん」という意味のワイン。
それがこの、「シャトー・コスデ・スト・ゥル・ネル」である。
さーて。
「コス・デストゥルネル」ってどういう意味か、調べに行こうか。
(実は知らなかった)
ビール。
日本酒。
焼酎。
それらばかり飲んでいると。
たまに、「超美味しい赤ワインを飲みたい」と思う時が、ありませんか?
ありますよね。
では、私と一緒に。
「超」美味しい赤ワインを飲みに行きましょう。
ちなみに、「超」というのは具体的に。
「万単位」ということですよ。
御覚悟召され(笑)
0740安くて美味しいSpecialワイン特集~ワインワールドの旅~ファーストクラス2
目次
はじめに~「コス・デストゥルネル」ってどういう意味か、知ってる?
1.ニコラ・フィアット キュヴェ・パルメ・ドール1990
2.シャトー・オーゾンヌ2004
3.シャトー・マルゴー1991
4.シャトー・ラトゥール1991
5.シャトー・カントメルル1995
6.シャトー・ムートン・ロートシルト1990
7.シャトー・ラトゥール1990
8.シャトー・コス・デス・トゥルネル2002
おわりに~シャトー・ディケム1990
1.ニコラ・フィアット キュヴェ・パルメ・ドール1990
Nicolas Feuillatte CUVEE Palmes D'Or
・生産者:ニコラ・フィアット社
・生産国:フランス シャンパーニュ地方
・輸入者:
・格付け:AOCシャンパーニュ
・Alc度数:
・容量:750ml
・価格:13000円~
輝きのある、やや深みのある黄金色。
25年ものだけあって、泡立ちは柔らかめになっている。
香り。
中程度。
熟成していて丸くなっている。
グレープフルーツ。
ほのかにナッツ、バター。
味わい。
ソフトなアタック。
柔らかいコク。
酸味、甘みは突出していない。
余韻は長い。
20秒。
余韻に、おお、おおお~。
ベリーダンサーがまとう、純白のシルクヴェールのような。
清楚で、上品で、半透明。
なれど、魅惑的で、躍動感があり、繊細な感じもある。
そんな印象が残る。
これは、このバランスは、絶品。
ニコラ・フィアット社の知識と経験が総結集された、スペシャル品。
品種はピノ・ノワール50%シャルドネ50%。
並外れたできの良い年にしか生産されない。
そして味を決定するのは、シャンパン造り40年の経験を持つセラー・マスター「ジャン・ピエール・ヴァンサン氏」のみ。
非常に独特な形状のボトルだが、何と一本一本全て手作りなのだとか。
このボトル表面のぼこぼこは、シャンパンの泡を表しているそうだ。
そしてこの形状は、創始者ニコラ・フィアット氏が愛用していたカラフ(デキャンタ)を形どったもの。
そんなスペシャル品なのだが。
このワインは、「グラン・クリュ」も「プルミエ・クリュ」も名乗れない。
それは、モングーという格付けのない畑のシャルドネが混ぜられているからだ。
なぜ、そんなブドウをわざわざ混ぜて、格を落とすのか?
それは、セラー・マスターの「哲学」が、そこにあるからだ。
「シャンパンは、祝いの酒だ。
祝いを盛り上げるための酒だ。
だが、だからこそ、シャンパンは、主役であってはならない。
シャンパンは、脇役に徹しなければならないのだ。
シャンパンは、主役を盛り上げるための、名脇役でなければならないのだ。」
その哲学が、そこに流れているからだ。
その結果、隠し味的にモングーの畑のシャルドネが使われるのだ。
セラー・マスターが言う。
「絶対に、モングーじゃなきゃだめだ」と。
その、こだわり。
その、哲学。
ブランドよりも、哲学を打ち出した、だからこその「スペシャル品」なのだ。
売上高や名声よりも、哲学を求めた、それがゆえの「スペシャル品」である。
サイト「楽天市場」さん「ニコラ・フィアット キュヴェ・パルム・ドール」ページ↓
http://item.rakuten.co.jp/katsuda/c/0000000554/
2.シャトー・オーゾンヌ2004
CHATEAU AUSONE
・生産者:シャトー・オーゾンヌ
・生産国:フランス ボルドー地方 サン・テミリオン地区
・輸入者:
・格付け:AOCサン・テミリオン プルミエ・グランクリュ・クラッセA
・Alc度数:
・容量:750ml
・価格:4万円~
社労士T先生が笑顔でこう言った。
「株で、オーゾンヌ」
で、オーゾンヌを唐突に鼻から噴き出した私はこう思った。
「(オーゾンヌが、オーゾンヌ)」
ブラウンを帯びた暗黒赤色。
香り。
土。
キノコ。
森林木。
甘みもある。
味わい。
滑らかなアタック。
柔らかい甘みが広がる。
タンニンは突出しない。
が、メルロにしては多いほう。
カベルネ・フランの、あの「無光沢のボディ」がある。
非常に凝縮感がある。
余韻は20秒。
余韻になってから、強めのコクを感じる。
まだまだ本領発揮ではない感じがある。
「ものすごく長寿なワインだな」、と分かる。
だが、さすがはメルロ。
今飲んでも美味いことには美味い。
飲み飽きない、丸い印象。
メドックの1級に比べて、解かり易い。
メルロが好きな人は、サンテミリオンを攻めるべし。
サイト「ベルーナ グルメショッピング」さん「シャトー・オーゾンヌ2004」ページ↓
http://belluna-gourmet.com/wine/01/012201/d/NE191/00800/goods_detail/
3.シャトー・マルゴー1991
Chateau Margaux
・生産者:シャトー・マルゴー(メンツェロプロス家)
・生産国:フランス ボルドー地方 メドック地区 マルゴー村
・輸入者:
・格付け:AOCマルゴー グラン・クリュ・クラッセ 1級
・Alc度数:
・容量:750ml
・価格:5万~6万円
パーカーポイント:80-89(Above Average)
オリは意外に少なかった。
デキャンタに移されずボトルに残った液は、ボトル底面から上3mmほどだった。
輝きのある、深いルビー色。
芳醇で華やかな香り。
カシス。
バナナ。
スミレ。
花。
ブランデー。
甘味も感じる。
フルーツのニュアンスよりも、何だか「花の香り」のニュアンスが強い。
非常に滑らかなアタック。
口に含んだ瞬間、味わいが全放射。
渋みは少ない。
酸味があるが、甘味、果実味と絶妙にバランスしている。
おお、まさに、円、丸、球体。
とってもまろやかで、クセが無い。
クセが無いので、スルスル飲める。
しかし、芳醇この上ない香り、しっかりした味わい、そして非常に長い余韻。
アタックからアフターまで、「プロセス全体がエレガント」
余韻は驚くほど長い。
20秒以上。
ああ、うっとりしてくる。
ビールやシャンパーニュとはまた別の、ゆっくりとした高揚感。
時間が止まった?
いやそうではない、時間を超えたのだ。
時間を超える、つまり、時間軸から離脱したのだ。
時間軸から離脱した時、本当に「全ての不安から解放される」。
マルゴーはよく「女性的」と言われる。
たしかに、香り、バランス、余韻、丸み、まろやか。
そしてゆっくりと高揚し、高揚状態に安定感があるところなど、まさに女性そのものだ。
しかし、私はこう思った。
「マルゴーの真髄は、“時間軸から離脱させてくれるところにある”」と。
すなわち、全ての不安から解放してくれるところにあるのだ。
まさに、聖母。
全てを癒してくれるマザーシップ。
最愛の妻に抱きしめられ、頭を撫でられている時の感覚。
シャトー・マルゴー1991。
このワインを一言でいうならば、「円満」。
そして、マルゴーは教えてくれる。
「丸く収める?ノンノン、初めから感謝と尊敬を持って接すれば、自然に“終始丸く収まる”のですよ」と。
ああそうか。
夫婦円満の鍵は、夫婦生活を始める前にすでにあったのだ。
すなわち、「相手に、感謝と尊敬を持って、スタートすること」だったのだ。
感謝と敬意という香りが、素敵な味わいを創り出し。
そして感謝と敬意に満ちた余韻を創り出すということだ。
実に、お見事。
こんなワインに出会えて、本当に幸せだ。
そして、ワインの世界に足を踏み入れて、本当に良かったと思う。
というのも、ワインほど「精紳に作用する」お酒も他にないからだ。
このワインは、女性的。
優しさにあふれている。
だが、優しささえも包み込む、大きな世界を持っている。
優しさも、強さも、超越した、その世界の名は、「愛」。
愛情の世界だ。
愛を感じるワイン。
それは、「畑を信じ抜き、育てた葡萄を信じ抜き、ワインを探求し続けた者」、つまり「真の造り手」によって描かれる絵画、である。
ここに、勝ち負けなどは、ない。
ライバルワイン、などもない。
ちょうど、父と母に勝ち負けがないように。
父と母がライバル関係になることは本来ないように。
サイト「デリバリー・ワイン」さん「シャトーマルゴーの評価」ページ↓
http://www.delivery-wine.net/p/chateaumargaux/parkerpoint.html
4.シャトー・ラトゥール1991
CHATEAU LATOUR
・生産者:シャトー・ラトゥール(フランソワ・ピノー)
・生産国:フランス ボルドー地方 メドック地区 ポイヤック村
・輸入者:
・格付け:AOCポイヤック グラン・クリュ・クラッセ 1級
・Alc度数:
・容量:750ml
・価格:3.5万~6万円
パーカーポイント:80-89(Above Average)
マルゴー91とは対照的に、オリが多い。
デキャンタに移されずボトルに残った液は、ボトル底面から上3cm以上だった。
向こうが透けて見えない、濃いルビー色。
暗黒赤色と言うにふさわしい。
しっとしとした、穏やかな香り。
はっきりした特徴を示さない。
香りだけなら、マルゴーやオーブリオンの方が強い。
しかし、味わいから逆転が始まる。
味わい。
しっとりとした、滑らかなアタック。
直後、黒ビールを思わせるコク。
おお、おおお~。
これは、「滝」である。
ただし、流れ落ちる全ての粒子に全部色がついている。
濃い、重い、と言えば、正直、スペインやチリの方が濃いかもしれない。
このラトゥールは、実はそこまでの濃さや重さはない。
しかし。
この凝縮感。
構成粒子一つ一つがはっきり主張しつつも、全体的にまとまっていて、一つの流れを形成している。
なるほどこれがまさに、「オーケストラ」と表現される理由なのだ。
このワイン。
実は、飲んだ後が、凄い。
飲んで5分後、全身に鳥肌が立った。
余韻が全身に押し寄せたのだ。
余韻が何秒、という次元ではなく、「余韻が全身に伝わる」のである。
波が、波動が、伝わる。
そういう意味で、このワインはとてつもなく「強い」。
オーブリオン91と比べると。
まだまだ熟成途上といった感じだ。
しかし、味が強く、浮き沈みが少ないので、今飲んでも美味い。
「いつ飲んでも美味い」、これが、シャトー・ラトゥールの強みなのである。
ラトゥールはとにかく「濃い」「強い」「男性的」と言われる。
が、それは味わいに対してではなく、「密度」に対して言われるものだと思った。
要するに、「引き出しをたくさん持っている、老練の男性」を表わしていたのだ。
「若い時に最高の賞をとって後が続かない男性」ではなく。
「若い時からセンスと運に人一倍恵まれながらも、それにかまけず人三倍努力をして、たくさんの経験と引き出しを身に付け、それを晩年になって作品にじわじわと込めて送り出す」という男性像だ。
例えて言えば、三枝成彰(さえぐさ しげあき)氏。
先日、三枝氏の著書「無敵の一日一食」を読んで、感動した。
同氏は、70歳を過ぎてなお、バリッバリの現役。
夢を追いかけて、命を懸けて活動されている。
しかし、命懸けといっても、そこに疲労感や悲壮感がないところが、良い。
同氏の名言は、こうだ。
「狂気を宿さねば、何事も成し遂げられない」
「老人よ、狂え!」
「孫を抱くより、女を抱け!」
いいね。
老人でなくても熱くなってくる。
まさに愛のかたまり。
このワインは、男性的。
肉厚で、強さにあふれている。
だが、強ささえも包み込む、大きな世界を持っている。
強さも、優しさも、超越した、その世界の名は、「愛」。
愛の世界だ。
愛は歳を取らない。
シャトー・ラトゥールサイト(日本語)↓
http://www.chateau-latour.com/index_jp.php#/vignoble
5.シャトー・カントメルル1995
Chateau Cantemerle
・生産者:シャトー・カントメルル(所有者;総合保険会社SMABTP)
・生産国:フランス ボルドー地方 オー・メドック地区 マコー村
・輸入者:三井物産株式会社
・格付け:AOCオー・メドック グラン・クリュ・クラッセ5級
・Alc度数:
・容量:750ml
・価格:7000円~15000円
カントメルルは「さえずるクロツグミ」の意味。
グラン・クリュ・クラッセ5級の中ではトップと言われている。
オー・メドック地区のシャトーとしては最高の評価を受けており。
「メドック3級に匹敵する」とまで言われている。
室温(17~21℃)のボトル。
デキャンタージュはなし。
抜栓後、約30分経過したものをグラスに注ぐ。
エッジに明るいガーネット色を持つ、やや鈍いが深みのある赤黒色。
熟成を重ねたワインに見られる色だ。
香り。
非常に豊か。
一発で「ボルドー・メドックのワイン」と分かる香り。
カシス、完熟バナナ、ブラックチェリー…、いや、「これといった果実を連想しない」。
融合していて、溶け込んでいて、一つになっている。
それでいて、放たれる香りは強い。
この香りを表現しようとすると、何だろう?
紅葉樹の林。
落ち葉。
いや、落ち葉が敷き詰められた、晩秋の林。
いや、もっと強い。
ああ、そうか!
晩秋、落ち葉を集めて燃やした「焚き火」だ。
マット(無光沢)の赤茶色の乾燥したものが燃え盛っている、そんな感じの香りだ。
味わい。
滑らかなアタック。
舌の上に、タンニンの滝が流れ落ちる。
しっかりしたタンニン。
「えっ!これで'95?」
と驚くほどに、しっかりしたボディ。
強い酒質だ。
ただ、まとまりもあり、丸みも感じる。
渋味・酸味とも強め。
余韻は20秒以上。
しかーし。
グラスに注いで20分も経過すると、ほーら!
甘味が出てきて、渋味・酸味は穏やかになる。
この辺りが「一番美味い!」
てことは、強い味の料理(焼き物+濃いソース)に合わせるなら?
抜栓30分後やデキャンタージュして直ぐでもいいということ。
逆に、甘味がある穏やかな料理(煮物や玉子を使った料理)に合わせるなら?
抜栓30分+グラスに注いで20分以上、つまり「空気に触れさせる時間は1時間ぐらい」の方が適しているということだ。
時間が経つと、味わいが変化するのだ。
それが、ワインの難しい所であり、逆に非常に面白い所なのだ。
カントメルルは「強い酒質」と言われている。
実際、1995年ものでこれだけの強い酒質を感じられた。
ただ、シャトー・ラトゥールのように「グラスに注いで3時間以上も酸弱(空気に触れて次第に弱まっていくこと)が起こらない化け物ワイン」とまではいかないようで。
グラスに注がれた液は、1時間を過ぎると、味や香りがゆっくりと落ち着いていく。
よって注いだ分は、1時間以内に飲み切ることが望ましい。
しかし、素晴らしい飲み応えだった。
引き込まれる魅力を持っている。
「超ボルドー」を味わえて感動することが、できる。
サイト「オールド・ヴィンテージ.com」さん「シャトー・カントメルル」ページ↓
http://www.old-vintage.com/chateau/15/1501_history.html
サイト楽天「シャトー・カントメルル1995」↓
http://item.rakuten.co.jp/donguriano/swr01010913/
6.シャトー・ムートン・ロートシルト1990
Chateau Mouton-Rothschild
・生産者:シャトー・ムートン・ロートシルト
・生産国:フランス ボルドー地方 メドック地区 ポイヤック村
・輸入者:
・格付け:AOCポイヤック グラン・クリュ・クラッセ 1級
・Alc度数:
・容量:750ml
・価格:5~10万円
「羊に乗った、超絶美形の爆裂王女さま」再降臨。
輝きのある、ルビーがかった濃い色合い。
25年ものにして、まだまだ熟成した感じの色ではない。
「王女さま、大学卒業前で大忙し」といった感じだ。
香り。
ふくよか。
ふわりと香る、黒果実。
杉の木。
カシス。
赤ピーマン。
パプリカ。
味わい。
滑らかなアタック。
豊かなタンニン。
まるでビターチョコレート。
丸みのある、芳醇な甘み。
まるでモカコーヒー。
余韻は長め、15~20秒。
もう、ジレンマは感じない。
しみじみと、美味い。
あまり言葉が出てこない。
どんなに言葉で表現しても、断片的にしかならないのだ。
そう、実際に、「飲む」しかない。
実際に体験することでしか、本当に理解はできないものだ。
「5万円のワインを飲んだ」とか。
「親が死んだ」とか。
「子供が生まれた」とか。
「一泊15万円のスイートルームに泊まる」とか。
「あらゆる人に批判される」とか。
1990のラベルの絵は「フランシスコ・ベーコン氏」の作品。
イギリス生まれの同氏は、どの系統にも属さず、独自のスタイルを貫いた「独創の人」。
「我が道を行き」「決して腐らない」を実現した人物である。
独創。独走。
ムートンも言わば、独創、独走の存在である。
エノテカさん「シャトー・ムートン・ロスチャイルド」ページ↓
https://www.enoteca.co.jp/item/list?_producer=105
7.シャトー・ラトゥール1990
CHATEAU LATOUR
・生産者:シャトー・ラトゥール(フランソワ・ピノー)
・生産国:フランス ボルドー地方 メドック地区 ポイヤック村
・輸入者:
・格付け:AOCポイヤック グラン・クリュ・クラッセ 1級
・Alc度数:
・容量:750ml
・価格:10~20万円
最高のワインをもてなすために、グラスは「バカラ」。
輝きのあるルビー色。
ほのかにガーネットが入る。
香り。
豊か。
甘みがある。
カシスや黒果実。
樽。
杉の木。
バナナ。
味わい。
滑らかなアタック。
甘み、コク、タンニンは強い。
だがバランスしていて突出しない。
ぎゅーっと凝縮した感じ。
まだまだ出てきそう。
が、今飲んでも十分美味い。
余韻が非常に長い。
20秒以上。
まるで「天の河」。
宇宙がある。
ここは、宇宙だ。
無限。
無限の広がり。
これを前にすると、途端に寂しくなる。
孤独を感じるのだ。
宇宙ほど、孤独を感じさせるものはない。
孤独に耐えきれなくて、振り向く。
振り向くと、ああ、最愛の人が居る。
私のパートナーが、居る。
抱き合う。
抱き合うことで、自分の存在を感じられるのだ。
そう。
私は、孤独ではない、と。
私は孤独ではないと感じさせてくれるのは、君のおかげなのだ、と。
君がいないと、私は生き続けることができない、と。
君の存在ほど、私にとって大事なものはない、と。
君の存在こそが、私の存在を確認させてくれる。
君が存在しなければ、私もまた、存在しない。
シャトー・ラトゥール。
このワインは、飲んだ人を、「哲学者」にしてくれる。
そういった意味で、「付加価値は計り知れない」。
正直、ヴィンテージとか値段とか、どうでもいい。
飲んだ者にしか見えない境地がある。
サイト「年号ワイン.com」さん「シャトー・ラトゥール1990」ページ↓
http://www.nengou-wine.com/list/detail.htm?wid=3151
8.シャトー・コス・デストゥルネル2002
CH. COS D`ESTOURNEL
・生産者:シャトー・コス・デストゥルネル
・生産国:フランス ボルドー地方 メドック地区 サン・テステフ村
・輸入者:
・格付け:AOCポイヤック グラン・クリュ・クラッセ 2級
・Alc度数:
・容量:750ml
・価格:2万円
ここだけの話。
ひそかに、「1級より美味い」と言われているらしい。
これがその「コス」。
スーパーセカンドの筆頭株。
このワインは、開けても開かない。
デキャンタしても開かない。
開栓して1日経って、ようやく開き始める。
開けて3日目にして、ようやく全開な感じ。
開けて3日目のコメントを記す。
エッジにややガーネット色を持つ、極めて濃い赤黒色。
香り。
スパイシー。
若干甘みがある。
カシスや黒果実。
樽。
杉の木。
バナナ。
黒コショウ。
カカオ。
くるみ。
チョコレート。
とにかく「チョコレート」の感じが強い。
味わい。
滑らかなアタック。
甘み、コク、タンニンは強い。
だがバランスしていて突出しない。
美味い。
カベルネソーヴィニョンの強さとメルロの柔らかさの、合体。
これってまさに。
「信頼と尊敬が通っている、いつまでも仲睦まじい夫婦」のイメージ。
メチャクチャ美味い。
モロ、ボルドー。
今回の「ワイン特集」の中で、一番美味い(それヤバくない?)。
ただし。
何事も一長一短があるもの。
このコス2002は開けて3日目ぐらいが一番美味しい。
しかし、開けて6日目になると、急速に味が落ちる。
7日目になると、劣化が始まる。
エノテカさんサイト「シャトー・コス・デストゥルネル」ページ↓
https://www.enoteca.co.jp/item/list?_producer=80
おわりに~シャトー・ディケム1990
Chateau d'Yquem
・生産者:シャトー・ディケム
・生産国:フランス ボルドー地方 ソーテルヌ地区
・輸入者:
・格付け:AOCソーテルヌ プルミエ・グランクリュクラッセ・スーペリュール
・Alc度数:
・容量:750ml
・価格:5万円~
「世界で一番美味いお酒が10品あるのですが、その一つを飲んでみませんか?」
そう、問われたら。
あなたは、どうする?
試しに、「その10品の中に、シャトー・ディケムはあるんですか?」
と訊いてみる?
よね。ワイン好きならば。
「世界三大貴腐ワイン」の一つ。
造りに一切の妥協はなく、飲み頃に達するまでに20年はかかるという。
ラベルに透かしが入っている点なども、興味深い。
黄金を超えて、琥珀色。
ぬめりとした液感。
香り。
まだ開いていない感じもあるが。
しっかり甘い。
果実のシロップ漬け。
アプリコット。
蜂蜜。
樽の香りもしっかり。
甘さを基調としながらも、とにかく複雑。
味わい。
滑らかなアタック。
豊かな甘みが広がるが、それが「百の果実」へと展開。
その「百の果実」が全て、一つの樽(225L)に詰め込まれ。
ぎゅーっと凝縮。
そして3年後。
その樽の下部に予め取り付けられていた蛇口。
そこから、一滴、ほんの一滴ほど、液が出てくる。
その液を、ゴックン。
その、液の味。
バランス。
エレガンス。
樽の香りがしっかり。
百の果実。
トロピカルフルーツ。
絢爛な印象。
金・白・ベージュ色。
サン・ピエトロ聖堂のペテロ霊廟ほどの。
いや、このワインには黒色を感じないので、ヴェルサイユ宮殿の鏡の間だ。
余韻が長い。
非常に長い。
30秒を超える。
これは。
全身に染み渡る、味わい。
目を閉じて、この、全身に染み込んでいく味わいに身を任せずにはおれない。
ソーテルヌの貴腐ワインはとにかく「甘み」が特徴。
だが、ディケムは別次元。
甘さより、「深みへ深みへ、沈み込んでいくような」奥行きと複雑さがある。
この深さ。
この深さの点においては。
正直、「メドックの1級を超えている」かも。
もはや、油絵である。
モネの「ジヴェルニー近郊のセーヌ川の朝」。
延々と見つめていられる絵画のようだ。
シャトー・ディケムが、一体どれだけすごいのか?
それを心底体験させてくれる方法。
その方法とは?
「抜栓し、再栓して、「6カ月かけて飲むこと」である」
つまり、抜栓日からおよそ180日かけて、瓶を空に持って行くということだ。
で、それがどのように、ディケムのすごさを教えてくれるのか?
実証体験を紹介しよう。
抜栓から実に6ヶ月後。
グラスに注いだ直後から5分後は、やばい。
「ああ、イッチャッタかも」
蜂蜜やロウ、床を拭いたゾウキンのような、いはゆる「酸化臭」がするのだ。
ところが。
10~20分経過後。
なんと!
復活する。
あの、「百の果実を樽に詰め込んだ」感じが蘇るのだ。
蘇る。
決して、決して、決して、屈しない。
これが。
シャトー・ディケムの力。
正直、5大シャトーよりも上を行っている。
5大シャトーより上を行く唯一のシャトー。
それがこの、シャトー・ディケム、なのだろう。
これより美味いワインを探すことは、正直不可能だろう。
ということで、ここらでワインワールドの旅は終焉だ。
所詮は、酒。
どこまで行っても、所詮は酒。
されど、酒は、多くのことを学ばせてくれることもある。
要は、扱いかたにある。
そう、酒は。
扱い方によっては。
体にも心にも「百薬の長」なのだ。
と、実感する時も多々ある。
ありがとうございました。
では、またいつか。
バイバイ。
楽天市場さんサイト「シャトー・ディケム1990」ページ↓
http://item.rakuten.co.jp/wineuki/0101082001883/
0740安くて美味しいSpecialワイン特集~ワインワールドの旅~ファーストクラス2(完)
はじめに~「コス・デストゥルネル」ってどういう意味か、知ってる?
夕暮れ。
某、フレンチレストランにて。
「すいませーん」
ソムリエ「はい、ただいま」
「あのー、このシャトー・コス…なんとかというワインをコース料理とセットにしたら、トータルでいくらになります?」
ソムリエ「はい。コースですと、えー、ウルになります」
「はい?」
ソムリエ「コースですと、ウルになりますね」
「ウル?」
ソムリエ「ウルでございます」
「ウルって何ですか?」
ソムリエ「ウルはラピュタ語で王。トエルは真。君はラピュタの正当な王位継承者、リュシータ王女だ」
「いや(笑)ラピュタはいいですから、コースでおいくらになります?」
ソムリエ「ウルでございます」
「コースですと、ウルになりますか?」
ソムリエ「コースですと、ウルになりますね」
「あのー、あなたは一体、誰ですか?」
ソムリエ「私はムスカ大佐だ。ロボットにより、私の脳回線が破壊された」
「コースですと、ウルになる」という意味のワイン。
それがこの、「シャトー・コースデスト・ゥル・ナル」である。
次の日の朝10時。
そごう1階にて。
「こないだ、コースだとウルになるという、謎のワインがあったんですよ」
資生堂の人「あらあー、そのワイン、実はコスメ(化粧品)にもなりますのよー」
「ええ!?コ、コスメ?」
資生堂の人「はーい。コスメですのよー。お顔にピチャッと塗るとー、お肌がー、トゥルーントゥルーンになりますのよー」
「トゥルントゥルンに?」
資生堂の人「はーい。トゥルーントゥルーンですのよー」
お肌がトゥルントゥルンになるという、コスメなワイン。
それがこの、「シャトー・コス(メ)デス・トゥルン・ナル」である。
その頃、そごう地下の化粧室にて。
OL「ちょっとー聞いたぁ?」
OL「なあにー?」
OL「シャト子ったらさあー、まーた彼氏換えたんだって」
OL「ええー!またあ?もう10人目じゃない?」
OL「しかもさー、シャト子ったら、付き合うと、初日に寝ちゃうんだって」
OL「ええーっ!」
OL「シャト子、男グセ悪いよねー」
OL「だよねー、酒グセも悪いし」
OL「そうそう、あれなんだっけ?シャト子がいつもラッパ飲みしてるあのワイン」
「シャトコ・オスデスト・スグネル」。
次の日。
朝7時。
そごう近隣のお宅にて。
父「おーい。もう起きろ。遅刻するぞ」
娘「(んん~)」
父「早く起きないと、お前のお気に入りのストール(マフラー)、ポテトサラダに練りこんじゃうぞー」
娘「(ちょっとやめてよ!何でそんなことすんの!?)」
父「お前が早く起きないからだよー」
娘「(わかったよ。起きるよ)」
父「早く起きないと、ストール、練りこんじゃうぞー」
娘「(わかったよ。起きるってば)」
父「ストール、練るぞー、うひひひひ」
「早く起きないと、ストールが練られてしまう」という意味のワイン。
それがこの、「シャトー・オコスデ・ストール・ネル」である。
そのお宅でその時やっていたTV番組。
「ドキュメンタリー~ネルさん涙の奮闘記」
「らっしゃい!らっしゃい!らっしゃい!らっしゃい!」
「安いよ!安いよ!安いよ!安いよっーー!」
店内に、威勢のいい掛け声が、響く。
声の主は、ピケ・ソン・ネルさん、34歳。
ネルさんが日本に移住したのは、8年前。
幼いころ、家族旅行で日本に来たおり食べた、お刺身の味が、忘れられなかった。
それで、大きくなったネルさんは、「日本で刺身専門店を開きたい」、という夢を持ったという。
そして、夢の実現のために、家族ごと日本に移住した。
しかし。
ネルさんの前には、大きな壁が、立ちはだかったのだ。
都内の、最高級刺身専門店「みちのく」。
みちのくの店主は、その時の事を、こう言う。
「いやー、「働かせてくれ」って言われた時にはね、ビックリしたんですよ。うちは都内で5本の指に入る、最高級の刺身専門店でしてね。包丁も握ったこともねぇ、まして日本語もろくにしゃべれねぇ、そんなヤツを雇えるかって。うちはね、入門者には1か月の修行をして貰うことになってんすよ。で、その修業ってのは日本人でも100人に1人が合格できるかどうかって厳しいものでしてね。悪いことはいわねぇ、あんたには辛すぎる、やめときな、って言ったんですよそん時はね」
だが、ネルさんは、粘った。
言葉が通じなくても、信念は通じる。
「信念こそが、世界共通の言葉だ」、と。
ネルさんは、破天荒な入門願いに出た。
最高級刺身専門店「みちのく」の前に、朝9時から夕方6時まで、座り込んで土下座を始めたのだ。
「ここで、働かせて下さい」という、たった一つの望みを携えて。
雨の日も。
雪の日も。
客にバカにされても。
ネルさんは、1日も欠かさず、朝9時から夕方6時まで土下座した。
そして、90日が経った。
ついに、転機が訪れた。
餓死寸前のネルさんの土下座姿を見た時。
みちのくの店主の、心が、折れたのだ。
その時の様子を、みちのくの店主はこう語る。
「もうホントに、バカ野郎!って思いましたね。今から最高級の刺身をさばくのに、こんなに筋肉減らしてどうすんだって。こいつの信念はホンモノだと思いやした瞬間、あっしもね、衝動的に動きやした。救急車呼んでね、病院にコイツを連れてって、点滴打ちながら、涙涙で契約したんでさぁ。お前みたいなバカ野郎はウチでしか雇えねぇっ!てね」
信念こそが、奇跡を生み出す。
ネルさんはついに、最高級刺身専門店「みちのく」への入門を果したのだ。
その時の気持ちを、ネルさんはこう語っている。
「ワタシ、子供28人いるヨ。シゴトしなーいと、この先、子供つくれなーいヨ」
ネルさんは、信念よりも、性欲の方が、強かった。
ネルさんは、みちのくへ入門した3日目に、転職した。
家のすぐ近くにできた外資系ショッピングモール「コストコ」へ。
コストコの、ストッキング専門売り場。
ここが、ネルさんの、今の職場である。
なぜ、みちのく入門から、あっさりコストコへ転職したのか?
ネルさんはこう語る。
「ストッキングってねー。いーのヨ。被るには。ワタシの祖国、ナンジャソリャ共和国では、ストッキング、被ってる人、誰もいなーいのヨ。だからねー、ストッキング被るとねー、ご満悦なーのヨ!」
こうして、ネルさんはついに、天職に辿り着いた。
「コストコのストッキング売り場」である。
そして、今日も「コストコ アホクサ店」のストッキング売り場には。
ネルさんの威勢のいい掛け声が、響く。
はーい!
らっしゃい!らっしゃい!らっしゃい!らっしゃい!
安いよ!安いよ!安いよ!安いよっ!
持ってけ!持ってけ!持ってけ!持ってけ!
ドロボー!ドロボー!ドロボー!ドロボー!
ピーポー!ピーポー!ピーポー!ピーポー!
御用だ!御用だ!御用だ!御用だ!
出合えぃ!出合えぃ!出合えぃ!出合えぃ!
ポルンガ!ポルンガ!ポルンガ!ポルンガ!
デュルルル!デュルルル!デュルルル!デュルルル!
ヘンタイ!ヘンタイ!ヘンタイ!ヘンタイ!
パンスト!パンスト!パンスト!パンスト!
日本に来て、大好きになったという、時代劇。
そして、体に浸み込んでいる、祖国の民族舞踊。
それらが織り交ぜになって。
今日もネルさんは、声をあげるのであった。
「ドキュメンタリー~ネルさん涙の奮闘記」(完)
「コストコで、ストッキングを売る、ネルさん」という意味のワイン。
それがこの、「シャトー・コスデ・スト・ゥル・ネル」である。
さーて。
「コス・デストゥルネル」ってどういう意味か、調べに行こうか。
(実は知らなかった)
ビール。
日本酒。
焼酎。
それらばかり飲んでいると。
たまに、「超美味しい赤ワインを飲みたい」と思う時が、ありませんか?
ありますよね。
では、私と一緒に。
「超」美味しい赤ワインを飲みに行きましょう。
ちなみに、「超」というのは具体的に。
「万単位」ということですよ。
御覚悟召され(笑)
0740安くて美味しいSpecialワイン特集~ワインワールドの旅~ファーストクラス2
目次
はじめに~「コス・デストゥルネル」ってどういう意味か、知ってる?
1.ニコラ・フィアット キュヴェ・パルメ・ドール1990
2.シャトー・オーゾンヌ2004
3.シャトー・マルゴー1991
4.シャトー・ラトゥール1991
5.シャトー・カントメルル1995
6.シャトー・ムートン・ロートシルト1990
7.シャトー・ラトゥール1990
8.シャトー・コス・デス・トゥルネル2002
おわりに~シャトー・ディケム1990
1.ニコラ・フィアット キュヴェ・パルメ・ドール1990
Nicolas Feuillatte CUVEE Palmes D'Or
・生産者:ニコラ・フィアット社
・生産国:フランス シャンパーニュ地方
・輸入者:
・格付け:AOCシャンパーニュ
・Alc度数:
・容量:750ml
・価格:13000円~
輝きのある、やや深みのある黄金色。
25年ものだけあって、泡立ちは柔らかめになっている。
香り。
中程度。
熟成していて丸くなっている。
グレープフルーツ。
ほのかにナッツ、バター。
味わい。
ソフトなアタック。
柔らかいコク。
酸味、甘みは突出していない。
余韻は長い。
20秒。
余韻に、おお、おおお~。
ベリーダンサーがまとう、純白のシルクヴェールのような。
清楚で、上品で、半透明。
なれど、魅惑的で、躍動感があり、繊細な感じもある。
そんな印象が残る。
これは、このバランスは、絶品。
ニコラ・フィアット社の知識と経験が総結集された、スペシャル品。
品種はピノ・ノワール50%シャルドネ50%。
並外れたできの良い年にしか生産されない。
そして味を決定するのは、シャンパン造り40年の経験を持つセラー・マスター「ジャン・ピエール・ヴァンサン氏」のみ。
非常に独特な形状のボトルだが、何と一本一本全て手作りなのだとか。
このボトル表面のぼこぼこは、シャンパンの泡を表しているそうだ。
そしてこの形状は、創始者ニコラ・フィアット氏が愛用していたカラフ(デキャンタ)を形どったもの。
そんなスペシャル品なのだが。
このワインは、「グラン・クリュ」も「プルミエ・クリュ」も名乗れない。
それは、モングーという格付けのない畑のシャルドネが混ぜられているからだ。
なぜ、そんなブドウをわざわざ混ぜて、格を落とすのか?
それは、セラー・マスターの「哲学」が、そこにあるからだ。
「シャンパンは、祝いの酒だ。
祝いを盛り上げるための酒だ。
だが、だからこそ、シャンパンは、主役であってはならない。
シャンパンは、脇役に徹しなければならないのだ。
シャンパンは、主役を盛り上げるための、名脇役でなければならないのだ。」
その哲学が、そこに流れているからだ。
その結果、隠し味的にモングーの畑のシャルドネが使われるのだ。
セラー・マスターが言う。
「絶対に、モングーじゃなきゃだめだ」と。
その、こだわり。
その、哲学。
ブランドよりも、哲学を打ち出した、だからこその「スペシャル品」なのだ。
売上高や名声よりも、哲学を求めた、それがゆえの「スペシャル品」である。
サイト「楽天市場」さん「ニコラ・フィアット キュヴェ・パルム・ドール」ページ↓
http://item.rakuten.co.jp/katsuda/c/0000000554/
2.シャトー・オーゾンヌ2004
CHATEAU AUSONE
・生産者:シャトー・オーゾンヌ
・生産国:フランス ボルドー地方 サン・テミリオン地区
・輸入者:
・格付け:AOCサン・テミリオン プルミエ・グランクリュ・クラッセA
・Alc度数:
・容量:750ml
・価格:4万円~
社労士T先生が笑顔でこう言った。
「株で、オーゾンヌ」
で、オーゾンヌを唐突に鼻から噴き出した私はこう思った。
「(オーゾンヌが、オーゾンヌ)」
ブラウンを帯びた暗黒赤色。
香り。
土。
キノコ。
森林木。
甘みもある。
味わい。
滑らかなアタック。
柔らかい甘みが広がる。
タンニンは突出しない。
が、メルロにしては多いほう。
カベルネ・フランの、あの「無光沢のボディ」がある。
非常に凝縮感がある。
余韻は20秒。
余韻になってから、強めのコクを感じる。
まだまだ本領発揮ではない感じがある。
「ものすごく長寿なワインだな」、と分かる。
だが、さすがはメルロ。
今飲んでも美味いことには美味い。
飲み飽きない、丸い印象。
メドックの1級に比べて、解かり易い。
メルロが好きな人は、サンテミリオンを攻めるべし。
サイト「ベルーナ グルメショッピング」さん「シャトー・オーゾンヌ2004」ページ↓
http://belluna-gourmet.com/wine/01/012201/d/NE191/00800/goods_detail/
3.シャトー・マルゴー1991
Chateau Margaux
・生産者:シャトー・マルゴー(メンツェロプロス家)
・生産国:フランス ボルドー地方 メドック地区 マルゴー村
・輸入者:
・格付け:AOCマルゴー グラン・クリュ・クラッセ 1級
・Alc度数:
・容量:750ml
・価格:5万~6万円
パーカーポイント:80-89(Above Average)
オリは意外に少なかった。
デキャンタに移されずボトルに残った液は、ボトル底面から上3mmほどだった。
輝きのある、深いルビー色。
芳醇で華やかな香り。
カシス。
バナナ。
スミレ。
花。
ブランデー。
甘味も感じる。
フルーツのニュアンスよりも、何だか「花の香り」のニュアンスが強い。
非常に滑らかなアタック。
口に含んだ瞬間、味わいが全放射。
渋みは少ない。
酸味があるが、甘味、果実味と絶妙にバランスしている。
おお、まさに、円、丸、球体。
とってもまろやかで、クセが無い。
クセが無いので、スルスル飲める。
しかし、芳醇この上ない香り、しっかりした味わい、そして非常に長い余韻。
アタックからアフターまで、「プロセス全体がエレガント」
余韻は驚くほど長い。
20秒以上。
ああ、うっとりしてくる。
ビールやシャンパーニュとはまた別の、ゆっくりとした高揚感。
時間が止まった?
いやそうではない、時間を超えたのだ。
時間を超える、つまり、時間軸から離脱したのだ。
時間軸から離脱した時、本当に「全ての不安から解放される」。
マルゴーはよく「女性的」と言われる。
たしかに、香り、バランス、余韻、丸み、まろやか。
そしてゆっくりと高揚し、高揚状態に安定感があるところなど、まさに女性そのものだ。
しかし、私はこう思った。
「マルゴーの真髄は、“時間軸から離脱させてくれるところにある”」と。
すなわち、全ての不安から解放してくれるところにあるのだ。
まさに、聖母。
全てを癒してくれるマザーシップ。
最愛の妻に抱きしめられ、頭を撫でられている時の感覚。
シャトー・マルゴー1991。
このワインを一言でいうならば、「円満」。
そして、マルゴーは教えてくれる。
「丸く収める?ノンノン、初めから感謝と尊敬を持って接すれば、自然に“終始丸く収まる”のですよ」と。
ああそうか。
夫婦円満の鍵は、夫婦生活を始める前にすでにあったのだ。
すなわち、「相手に、感謝と尊敬を持って、スタートすること」だったのだ。
感謝と敬意という香りが、素敵な味わいを創り出し。
そして感謝と敬意に満ちた余韻を創り出すということだ。
実に、お見事。
こんなワインに出会えて、本当に幸せだ。
そして、ワインの世界に足を踏み入れて、本当に良かったと思う。
というのも、ワインほど「精紳に作用する」お酒も他にないからだ。
このワインは、女性的。
優しさにあふれている。
だが、優しささえも包み込む、大きな世界を持っている。
優しさも、強さも、超越した、その世界の名は、「愛」。
愛情の世界だ。
愛を感じるワイン。
それは、「畑を信じ抜き、育てた葡萄を信じ抜き、ワインを探求し続けた者」、つまり「真の造り手」によって描かれる絵画、である。
ここに、勝ち負けなどは、ない。
ライバルワイン、などもない。
ちょうど、父と母に勝ち負けがないように。
父と母がライバル関係になることは本来ないように。
サイト「デリバリー・ワイン」さん「シャトーマルゴーの評価」ページ↓
http://www.delivery-wine.net/p/chateaumargaux/parkerpoint.html
4.シャトー・ラトゥール1991
CHATEAU LATOUR
・生産者:シャトー・ラトゥール(フランソワ・ピノー)
・生産国:フランス ボルドー地方 メドック地区 ポイヤック村
・輸入者:
・格付け:AOCポイヤック グラン・クリュ・クラッセ 1級
・Alc度数:
・容量:750ml
・価格:3.5万~6万円
パーカーポイント:80-89(Above Average)
マルゴー91とは対照的に、オリが多い。
デキャンタに移されずボトルに残った液は、ボトル底面から上3cm以上だった。
向こうが透けて見えない、濃いルビー色。
暗黒赤色と言うにふさわしい。
しっとしとした、穏やかな香り。
はっきりした特徴を示さない。
香りだけなら、マルゴーやオーブリオンの方が強い。
しかし、味わいから逆転が始まる。
味わい。
しっとりとした、滑らかなアタック。
直後、黒ビールを思わせるコク。
おお、おおお~。
これは、「滝」である。
ただし、流れ落ちる全ての粒子に全部色がついている。
濃い、重い、と言えば、正直、スペインやチリの方が濃いかもしれない。
このラトゥールは、実はそこまでの濃さや重さはない。
しかし。
この凝縮感。
構成粒子一つ一つがはっきり主張しつつも、全体的にまとまっていて、一つの流れを形成している。
なるほどこれがまさに、「オーケストラ」と表現される理由なのだ。
このワイン。
実は、飲んだ後が、凄い。
飲んで5分後、全身に鳥肌が立った。
余韻が全身に押し寄せたのだ。
余韻が何秒、という次元ではなく、「余韻が全身に伝わる」のである。
波が、波動が、伝わる。
そういう意味で、このワインはとてつもなく「強い」。
オーブリオン91と比べると。
まだまだ熟成途上といった感じだ。
しかし、味が強く、浮き沈みが少ないので、今飲んでも美味い。
「いつ飲んでも美味い」、これが、シャトー・ラトゥールの強みなのである。
ラトゥールはとにかく「濃い」「強い」「男性的」と言われる。
が、それは味わいに対してではなく、「密度」に対して言われるものだと思った。
要するに、「引き出しをたくさん持っている、老練の男性」を表わしていたのだ。
「若い時に最高の賞をとって後が続かない男性」ではなく。
「若い時からセンスと運に人一倍恵まれながらも、それにかまけず人三倍努力をして、たくさんの経験と引き出しを身に付け、それを晩年になって作品にじわじわと込めて送り出す」という男性像だ。
例えて言えば、三枝成彰(さえぐさ しげあき)氏。
先日、三枝氏の著書「無敵の一日一食」を読んで、感動した。
同氏は、70歳を過ぎてなお、バリッバリの現役。
夢を追いかけて、命を懸けて活動されている。
しかし、命懸けといっても、そこに疲労感や悲壮感がないところが、良い。
同氏の名言は、こうだ。
「狂気を宿さねば、何事も成し遂げられない」
「老人よ、狂え!」
「孫を抱くより、女を抱け!」
いいね。
老人でなくても熱くなってくる。
まさに愛のかたまり。
このワインは、男性的。
肉厚で、強さにあふれている。
だが、強ささえも包み込む、大きな世界を持っている。
強さも、優しさも、超越した、その世界の名は、「愛」。
愛の世界だ。
愛は歳を取らない。
シャトー・ラトゥールサイト(日本語)↓
http://www.chateau-latour.com/index_jp.php#/vignoble
5.シャトー・カントメルル1995
Chateau Cantemerle
・生産者:シャトー・カントメルル(所有者;総合保険会社SMABTP)
・生産国:フランス ボルドー地方 オー・メドック地区 マコー村
・輸入者:三井物産株式会社
・格付け:AOCオー・メドック グラン・クリュ・クラッセ5級
・Alc度数:
・容量:750ml
・価格:7000円~15000円
カントメルルは「さえずるクロツグミ」の意味。
グラン・クリュ・クラッセ5級の中ではトップと言われている。
オー・メドック地区のシャトーとしては最高の評価を受けており。
「メドック3級に匹敵する」とまで言われている。
室温(17~21℃)のボトル。
デキャンタージュはなし。
抜栓後、約30分経過したものをグラスに注ぐ。
エッジに明るいガーネット色を持つ、やや鈍いが深みのある赤黒色。
熟成を重ねたワインに見られる色だ。
香り。
非常に豊か。
一発で「ボルドー・メドックのワイン」と分かる香り。
カシス、完熟バナナ、ブラックチェリー…、いや、「これといった果実を連想しない」。
融合していて、溶け込んでいて、一つになっている。
それでいて、放たれる香りは強い。
この香りを表現しようとすると、何だろう?
紅葉樹の林。
落ち葉。
いや、落ち葉が敷き詰められた、晩秋の林。
いや、もっと強い。
ああ、そうか!
晩秋、落ち葉を集めて燃やした「焚き火」だ。
マット(無光沢)の赤茶色の乾燥したものが燃え盛っている、そんな感じの香りだ。
味わい。
滑らかなアタック。
舌の上に、タンニンの滝が流れ落ちる。
しっかりしたタンニン。
「えっ!これで'95?」
と驚くほどに、しっかりしたボディ。
強い酒質だ。
ただ、まとまりもあり、丸みも感じる。
渋味・酸味とも強め。
余韻は20秒以上。
しかーし。
グラスに注いで20分も経過すると、ほーら!
甘味が出てきて、渋味・酸味は穏やかになる。
この辺りが「一番美味い!」
てことは、強い味の料理(焼き物+濃いソース)に合わせるなら?
抜栓30分後やデキャンタージュして直ぐでもいいということ。
逆に、甘味がある穏やかな料理(煮物や玉子を使った料理)に合わせるなら?
抜栓30分+グラスに注いで20分以上、つまり「空気に触れさせる時間は1時間ぐらい」の方が適しているということだ。
時間が経つと、味わいが変化するのだ。
それが、ワインの難しい所であり、逆に非常に面白い所なのだ。
カントメルルは「強い酒質」と言われている。
実際、1995年ものでこれだけの強い酒質を感じられた。
ただ、シャトー・ラトゥールのように「グラスに注いで3時間以上も酸弱(空気に触れて次第に弱まっていくこと)が起こらない化け物ワイン」とまではいかないようで。
グラスに注がれた液は、1時間を過ぎると、味や香りがゆっくりと落ち着いていく。
よって注いだ分は、1時間以内に飲み切ることが望ましい。
しかし、素晴らしい飲み応えだった。
引き込まれる魅力を持っている。
「超ボルドー」を味わえて感動することが、できる。
サイト「オールド・ヴィンテージ.com」さん「シャトー・カントメルル」ページ↓
http://www.old-vintage.com/chateau/15/1501_history.html
サイト楽天「シャトー・カントメルル1995」↓
http://item.rakuten.co.jp/donguriano/swr01010913/
6.シャトー・ムートン・ロートシルト1990
Chateau Mouton-Rothschild
・生産者:シャトー・ムートン・ロートシルト
・生産国:フランス ボルドー地方 メドック地区 ポイヤック村
・輸入者:
・格付け:AOCポイヤック グラン・クリュ・クラッセ 1級
・Alc度数:
・容量:750ml
・価格:5~10万円
「羊に乗った、超絶美形の爆裂王女さま」再降臨。
輝きのある、ルビーがかった濃い色合い。
25年ものにして、まだまだ熟成した感じの色ではない。
「王女さま、大学卒業前で大忙し」といった感じだ。
香り。
ふくよか。
ふわりと香る、黒果実。
杉の木。
カシス。
赤ピーマン。
パプリカ。
味わい。
滑らかなアタック。
豊かなタンニン。
まるでビターチョコレート。
丸みのある、芳醇な甘み。
まるでモカコーヒー。
余韻は長め、15~20秒。
もう、ジレンマは感じない。
しみじみと、美味い。
あまり言葉が出てこない。
どんなに言葉で表現しても、断片的にしかならないのだ。
そう、実際に、「飲む」しかない。
実際に体験することでしか、本当に理解はできないものだ。
「5万円のワインを飲んだ」とか。
「親が死んだ」とか。
「子供が生まれた」とか。
「一泊15万円のスイートルームに泊まる」とか。
「あらゆる人に批判される」とか。
1990のラベルの絵は「フランシスコ・ベーコン氏」の作品。
イギリス生まれの同氏は、どの系統にも属さず、独自のスタイルを貫いた「独創の人」。
「我が道を行き」「決して腐らない」を実現した人物である。
独創。独走。
ムートンも言わば、独創、独走の存在である。
エノテカさん「シャトー・ムートン・ロスチャイルド」ページ↓
https://www.enoteca.co.jp/item/list?_producer=105
7.シャトー・ラトゥール1990
CHATEAU LATOUR
・生産者:シャトー・ラトゥール(フランソワ・ピノー)
・生産国:フランス ボルドー地方 メドック地区 ポイヤック村
・輸入者:
・格付け:AOCポイヤック グラン・クリュ・クラッセ 1級
・Alc度数:
・容量:750ml
・価格:10~20万円
最高のワインをもてなすために、グラスは「バカラ」。
輝きのあるルビー色。
ほのかにガーネットが入る。
香り。
豊か。
甘みがある。
カシスや黒果実。
樽。
杉の木。
バナナ。
味わい。
滑らかなアタック。
甘み、コク、タンニンは強い。
だがバランスしていて突出しない。
ぎゅーっと凝縮した感じ。
まだまだ出てきそう。
が、今飲んでも十分美味い。
余韻が非常に長い。
20秒以上。
まるで「天の河」。
宇宙がある。
ここは、宇宙だ。
無限。
無限の広がり。
これを前にすると、途端に寂しくなる。
孤独を感じるのだ。
宇宙ほど、孤独を感じさせるものはない。
孤独に耐えきれなくて、振り向く。
振り向くと、ああ、最愛の人が居る。
私のパートナーが、居る。
抱き合う。
抱き合うことで、自分の存在を感じられるのだ。
そう。
私は、孤独ではない、と。
私は孤独ではないと感じさせてくれるのは、君のおかげなのだ、と。
君がいないと、私は生き続けることができない、と。
君の存在ほど、私にとって大事なものはない、と。
君の存在こそが、私の存在を確認させてくれる。
君が存在しなければ、私もまた、存在しない。
シャトー・ラトゥール。
このワインは、飲んだ人を、「哲学者」にしてくれる。
そういった意味で、「付加価値は計り知れない」。
正直、ヴィンテージとか値段とか、どうでもいい。
飲んだ者にしか見えない境地がある。
サイト「年号ワイン.com」さん「シャトー・ラトゥール1990」ページ↓
http://www.nengou-wine.com/list/detail.htm?wid=3151
8.シャトー・コス・デストゥルネル2002
CH. COS D`ESTOURNEL
・生産者:シャトー・コス・デストゥルネル
・生産国:フランス ボルドー地方 メドック地区 サン・テステフ村
・輸入者:
・格付け:AOCポイヤック グラン・クリュ・クラッセ 2級
・Alc度数:
・容量:750ml
・価格:2万円
ここだけの話。
ひそかに、「1級より美味い」と言われているらしい。
これがその「コス」。
スーパーセカンドの筆頭株。
このワインは、開けても開かない。
デキャンタしても開かない。
開栓して1日経って、ようやく開き始める。
開けて3日目にして、ようやく全開な感じ。
開けて3日目のコメントを記す。
エッジにややガーネット色を持つ、極めて濃い赤黒色。
香り。
スパイシー。
若干甘みがある。
カシスや黒果実。
樽。
杉の木。
バナナ。
黒コショウ。
カカオ。
くるみ。
チョコレート。
とにかく「チョコレート」の感じが強い。
味わい。
滑らかなアタック。
甘み、コク、タンニンは強い。
だがバランスしていて突出しない。
美味い。
カベルネソーヴィニョンの強さとメルロの柔らかさの、合体。
これってまさに。
「信頼と尊敬が通っている、いつまでも仲睦まじい夫婦」のイメージ。
メチャクチャ美味い。
モロ、ボルドー。
今回の「ワイン特集」の中で、一番美味い(それヤバくない?)。
ただし。
何事も一長一短があるもの。
このコス2002は開けて3日目ぐらいが一番美味しい。
しかし、開けて6日目になると、急速に味が落ちる。
7日目になると、劣化が始まる。
エノテカさんサイト「シャトー・コス・デストゥルネル」ページ↓
https://www.enoteca.co.jp/item/list?_producer=80
おわりに~シャトー・ディケム1990
Chateau d'Yquem
・生産者:シャトー・ディケム
・生産国:フランス ボルドー地方 ソーテルヌ地区
・輸入者:
・格付け:AOCソーテルヌ プルミエ・グランクリュクラッセ・スーペリュール
・Alc度数:
・容量:750ml
・価格:5万円~
「世界で一番美味いお酒が10品あるのですが、その一つを飲んでみませんか?」
そう、問われたら。
あなたは、どうする?
試しに、「その10品の中に、シャトー・ディケムはあるんですか?」
と訊いてみる?
よね。ワイン好きならば。
「世界三大貴腐ワイン」の一つ。
造りに一切の妥協はなく、飲み頃に達するまでに20年はかかるという。
ラベルに透かしが入っている点なども、興味深い。
黄金を超えて、琥珀色。
ぬめりとした液感。
香り。
まだ開いていない感じもあるが。
しっかり甘い。
果実のシロップ漬け。
アプリコット。
蜂蜜。
樽の香りもしっかり。
甘さを基調としながらも、とにかく複雑。
味わい。
滑らかなアタック。
豊かな甘みが広がるが、それが「百の果実」へと展開。
その「百の果実」が全て、一つの樽(225L)に詰め込まれ。
ぎゅーっと凝縮。
そして3年後。
その樽の下部に予め取り付けられていた蛇口。
そこから、一滴、ほんの一滴ほど、液が出てくる。
その液を、ゴックン。
その、液の味。
バランス。
エレガンス。
樽の香りがしっかり。
百の果実。
トロピカルフルーツ。
絢爛な印象。
金・白・ベージュ色。
サン・ピエトロ聖堂のペテロ霊廟ほどの。
いや、このワインには黒色を感じないので、ヴェルサイユ宮殿の鏡の間だ。
余韻が長い。
非常に長い。
30秒を超える。
これは。
全身に染み渡る、味わい。
目を閉じて、この、全身に染み込んでいく味わいに身を任せずにはおれない。
ソーテルヌの貴腐ワインはとにかく「甘み」が特徴。
だが、ディケムは別次元。
甘さより、「深みへ深みへ、沈み込んでいくような」奥行きと複雑さがある。
この深さ。
この深さの点においては。
正直、「メドックの1級を超えている」かも。
もはや、油絵である。
モネの「ジヴェルニー近郊のセーヌ川の朝」。
延々と見つめていられる絵画のようだ。
シャトー・ディケムが、一体どれだけすごいのか?
それを心底体験させてくれる方法。
その方法とは?
「抜栓し、再栓して、「6カ月かけて飲むこと」である」
つまり、抜栓日からおよそ180日かけて、瓶を空に持って行くということだ。
で、それがどのように、ディケムのすごさを教えてくれるのか?
実証体験を紹介しよう。
抜栓から実に6ヶ月後。
グラスに注いだ直後から5分後は、やばい。
「ああ、イッチャッタかも」
蜂蜜やロウ、床を拭いたゾウキンのような、いはゆる「酸化臭」がするのだ。
ところが。
10~20分経過後。
なんと!
復活する。
あの、「百の果実を樽に詰め込んだ」感じが蘇るのだ。
蘇る。
決して、決して、決して、屈しない。
これが。
シャトー・ディケムの力。
正直、5大シャトーよりも上を行っている。
5大シャトーより上を行く唯一のシャトー。
それがこの、シャトー・ディケム、なのだろう。
これより美味いワインを探すことは、正直不可能だろう。
ということで、ここらでワインワールドの旅は終焉だ。
所詮は、酒。
どこまで行っても、所詮は酒。
されど、酒は、多くのことを学ばせてくれることもある。
要は、扱いかたにある。
そう、酒は。
扱い方によっては。
体にも心にも「百薬の長」なのだ。
と、実感する時も多々ある。
ありがとうございました。
では、またいつか。
バイバイ。
楽天市場さんサイト「シャトー・ディケム1990」ページ↓
http://item.rakuten.co.jp/wineuki/0101082001883/
0740安くて美味しいSpecialワイン特集~ワインワールドの旅~ファーストクラス2(完)