息子からの連絡は、たいてい妻の携帯へのメールである。電話をかけてくることは珍しい。また、家に帰ってくる時ぐらいしか連絡をしてこない。たとえば帰りの電車から、などだ。
妻と二人で首をかしげたが、それ以降連絡がないので、どうしようもない。
「急に帰ってくるようなことが起きたのかな?」と私。
「『米がなくなったから送れ』ってくらいのことよ、きっと」と妻。
自分が下宿していたころのことを思い出しながら、何か緊急の時ぐらいしか連絡をしなかった私としては、「突発的なことが起きていなければいいが」と心配した。妻のことを「のんきだなぁ」と思いながら。
しばらくして、妻がトイレに立ったときに、妻の携帯が鳴った。息子からの電話だった。私が出たら、息子は「あれ?母さんは?」とすら言わず、シレッとした声で「ああ、父さん。オレ、ワイン買ったんやけど、半分飲んで、残りを置いておこうと思ったけど、コルクが瓶の口に入らへんねやんか」 私は内心「なんじゃ、そりゃ?」 「で、父さん、ワインの瓶の口にキュッと締める蓋をしてたやろ?」 はい、酒瓶の口をきちっとふさいでおく道具を持ってます、私。 「あれ、どこに売ってる?」 訊かれて、どうも思い出せない。妻が買ったのかもしれない。私が「わからんな~、百均にでも行ったらどうや」というと息子は「え~!? どこかにないかな」と、やや不満そう。そんなことを言われてもわからないので「とにかく瓶の口を、水を通さへん何かできっちり押さえて、その上から何か巻いてゴムででも止めておけや」「ふ~ん、とにかくきっちり蓋しておいたらええねんな? わかった、バイバイ」
電話の向こうでは、若者たちのワイワイという声が聞こえていた。心配して損した。

ワインのことは、酒屋で訊けや(笑)。