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Tシャツとサンダルの候

坊がつるへ


膝の傷の奥深くに潜んでいた石ころが取れたら、嘘のように痛みが消えた。


ワーイである。


片手を口に、もう片方は腰に充てがい、ランランランと鼻歌の一つも歌い、町内をスキップしながら一周したいくらいだ。

かと言って、本当にそんな事をしたら、通報されるのが落ちである。

代わりに、山にでも登った方がよさそうだ。

そうとなったら、やっぱりくじゅうである。


どこから登ろうか。

どの山に登ろうか。


先だっての大雨により、数ある九重連山登山道は、軒並み壊滅状態と聞く。

今のところ、雨ヶ池ルートと牧の戸ルートは通れるようだが、まだ膝には縫合の糸が残っている状態なのだ。

スキップは出来たとしても、岩場で膝頭をぶつけでもしたら、元の木阿弥にもなりかねない。

ピークハント無しの、山歩きに終始したい。

と言う訳で、

雨ヶ池越え~坊がつるハイキングと決めた。


「私も行く。」(家内)


お、おう。



スタートはタデハラ湿原。




サワギキョウ。



湿原には、早くもヒゴタイの季節が訪れていた。




ヒゴタイの赤ちゃんが、そよそよと風に揺らいでいる。




ノハナショウブ




ハンカイソウの群落。




サワヒヨドリはアサギマダラの好物だ。

アサギマダラに会えるのを期待していたのだが、残念ながらこの日、飛翔ポイントでも出会えなかった。

そう言えば今年はまだ、アサギマダラを見てないなぁ。



湿原の散策を終えたら、いよいよ山登り開始だ。

暫くは、深い森の中を行く。



ウバユリ




ノギラン




思った以上に登山道は荒れている。

この辺り(砂防ダム付近)が、土石流の先端のようだ。



ここは、最初の休憩ポイントを越えて、木段が始まる少し手前地点。

大規模土石流の核心部と言っていいだろう。

崩れ落ちた岩が登山道を覆い尽くし、これまでとは様相が一変している。

歩けるのは歩けるが、コースマーカーに気を付けないと、道迷いしそうである。






以前から『土石流注意』の看板がある、一旦谷に降りて、また登り返すポイント。

荒れてはいるが、ここは普通に渡れる。



ユキザサの実




雨ヶ池までやって来た。




コバギボウシ




マツムシソウは今年初。




坊がつる展望ポイントまで進んできた。

ここから見る坊がつるは、いつもの穏やかな表情なのだが・・・



リョウブの森を抜けると、ゴールは直ぐそこだ。




坊がつる到着。


それにしても、この道の荒れようは・・・


どっしりと身を横たえる大船山。

この大船を始め、周りを取り囲む平治、三俣、中岳、白口、etc。



正しく、坊がつる賛歌に謳う、『四面山なる坊がつる』である。

この風景の中に身を置けば、いつだって格別な気分を味わえる。



ただし、





法華院方向に目をやると・・・



否応なしに、先日来の大雨被害が、現実のものである事を認識させられる。

土石流の合間に白く輝いて見えるのは、未だ流れ続ける山からの出水である。



キャンプ場へ続く木道。

キャンプ場は無事の様子だ。



さて、昼ご飯である。

この日のチョイスは『宮崎辛麺』。

・・・激辛しょうゆ味。



これって、



山飯としての選択を、間違たんじゃないかなあ。


だって、ここは坊がつるである。

ラムサール条約湿原なのだ。

激辛の汁など捨てられないじゃないか。


「自分の胃の中に捨てんか。」(家内)


ただでさえ大汗掻いてるのに、これでは大汗の2乗である。



ザックに止まる蝶に、ささやかな涼を求め、極辛スープを飲み干した。




家内がトイレに行きたいと言う。

山荘まで行ってみた。



そこには、息を飲む光景が広がっていた。

バンガローがあった場所は、中岳斜面からの土石流に完全に飲み込まれ、見る影もない。


山荘本体が、すんでのところで難を逃れていた事だけが、不幸中の幸いである。




最低限の片づけは済んでいるようだが、土石流はむき出しのままである。

轟々と音を立てて流れ落ちる、山の水も不気味だ。

まだまだ、復旧に向けて、時間も費用もかかるだろう。

それどころか、これから先、台風シーズンが始まってしまう。





美しき青きくじゅうよ。



安らけくあれ。



祈るのみである。

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