見たい花がある。
とは言えその手掛かりは、『南阿蘇にある物産館周辺のどこか』だけ。
探し出すには、照りつける太陽の下で、当て処もない捜索をする覚悟がいる。
SNSを見てた家内、
「咲いとるみたいだけど、場所はやっぱり分からん。」
「こん暑かとに・・・そりゃのさんにゃ。」
少し解説が要るようだ。
上の会話で、私が口走った『のさん』とは、筑後弁で『堪らなく辛い』の意である。
ただ辛いではなく、『堪らなく』が付くニュアンスだ。
翻訳すれば、
「こんなに暑いのに、それは堪らなく辛いね」と言ったところだ。
前段が長くなってしまった。
要するに、あまりの暑さに躊躇っているうちに、台風までやって来てしまい、訪れるのが延び延びになってしまった。
そんじゃ探すとするか。
目的の一つは直ぐに見つかった。
ヒメノボタンである。
草原のあちこちにピンクの花を咲かせていた。
カワラケツメイ
ヒヨドリバナ
オカオグルマ
ブラブラと歩いているうちに、例によって家内の動物的勘が閃いた。
「あの辺じゃない?」
「間違いなか。きっとあるぞ。」
「あった!でも終わっとる。」
「これか。どう見てもダイサギに見えんぞ。」
私達が探し求めたダイサギソウ。
「のさん」と弱音を吐いているうちに、こんな姿に変わり果てていた。
こちらの株は、少し羽を広げた感じが残ってはいたが・・・
来年の宿題がまた一つ増えたようだ。
葛
クルマバナ
マルバハギ
台風一過、気温は一時ほどではないにせよ、直射日光に晒されての花探索。
汗びっしょりになり、喉もカラカラである。
物産館に戻り、かき氷の移動販売車の前に並んだ。
やがてすぐ前のオバサンの番がきた。
「ミルクかけますか?」
「お願いしまーす。」
オバサンは嬉々としてカップを受け取った。
大きな財布を片手に持ちながらである。
(・・・やるぞこりゃ)
私の脳裏には、このオバサンに訪れる次の瞬間が、ありありと浮かんだ。
案の定、
「あっ!!あー。」
ものの見事に、ひと欠片も残さずカップの氷は、地面にぶちまけられた。
オバサンの手に残るのは、大きめの財布と中身の無いカップだけ。
大惨事である。
悄然とするオバサンと目が合ってしまった。
どう挨拶すべきか分からず、帽子に手をやり軽く頭を下げた。
(のさん事で。お気の毒様)
前車の轍を踏まぬよう、慎重にテーブルへ。
チベタ (*˘︶˘*).。.:*♡
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