『我が偽りの名の下へ集え、星々』紹介ブログ

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短距離多目的ミサイル(SRMPM)「シュリケン」

2017-05-01 | 設定:宇宙船、メカニック
練習艦に模擬弾として搭載されているミサイルは帝国軍で広く使われている短距離多目的ミサイル「SRMPM」を改造したものであり、もとを質せばエイペックス作戦用にウーラント軍が開発した短距離対艦ミサイル「SRASM」のコピー品である。
エイペックス作戦では、ウーラント軍艦艇は小惑星やデブリ密集空域に潜みながら少しずつ帝国領内へ侵攻する予定だったが、この際、迎撃を試みる帝国軍艦艇への攻撃手段として、新たに対艦ミサイル「SRASM」とその発射母機として戦闘攻撃機「デルタone-A」が開発された。エイペックス作戦中は補給が滞る事が想定された為、いずれも限界まで小型化されており「SRASM」は全長1メートル直径20センチと、旧地球時代の歩兵携行ミサイル程度の大きさしかない。「デルタone-A」は、これを四本一組で専用キャニスターに収めたものを四基、計16発を装備した。
発射は高圧ガスと電磁誘導を併用したコールドローンチ方式で行われる。これは「SRASM」ミサイル本体に搭載される推進剤を節約するためである。その為「SRASM」そのものの推進剤は加速というよりは終末誘導の進路調整のみに利用される。
それだけ推進剤を節約してももともと小型の為、充分な破壊力を期待するだけの炸薬は搭載できず、例え16発全弾が命中しても「SRASM」のみで艦を破壊することは不可能である。また目標と発射母機の距離が近い事が想定されるので、もともと核弾頭の搭載は考慮されていない。しかし「SRASM」の目的は艦そのものの撃沈ではなく、推進器やレーダー、エアロックなど脆弱な部分にダメージを与える事にあった。当時の帝国軍艦艇は規格統一が行われておらず、各貴族や企業がまちまちな仕様で建造していた。その為、ダメージを受けた箇所によっては、現地で修理が出来ず母港まで戻らなければならない事もしばしばであった。エイペックス作戦の指揮を執っていたサクサワベ将軍は、ウーラント軍が関与していた選帝侯戦争に参加しており、帝国軍のこのような構造的欠点を見抜いた上で「SRASM」の仕様を決定したのであった。
散々「SRASM」に悩まされていた帝国軍は、エイペックス作戦の終了後、発射母機「デルタone-A」と共に、そのコピー生産を決定する。時のヒルデガルド女帝は、ウーラント軍に対して、この件に関してのライセンス許諾の申請と使用料支払いの用意がある旨を連絡したが、先方からの返答はなかった。
「SRASM」は短距離多目的ミサイル「SRMPM」、「デルタone-A」は襲撃機「カトラス」として帝国内で生産が開始された。
帝国において「SRMPM」の主な用途は海賊船や密売船などへの攻撃である。これらの船舶は充分な装甲を施されておらず、「SRMPM」ならば、撃沈せず行動停止させる程度の適度なダメージを与える事が出来るからである。
また帝国学園での艦隊戦実習にも盛んに用いられている。艦載用に改良された「SRMPM」は、発射時の電磁誘導に使える出力が上がっており、さらに命中率、飛距離が向上している。
最初の開発から200年以上が経過しているが、随時改良が加えられ、現在でも「カトラス」襲撃機と共に使用されている。
なおエイペックス作戦当時から「ニンジャのように密かに近づき一撃を加える」ことから「SRASM」は敵味方どちらからともなく「シュリケン」と呼ばれ始めたが、これはあくまで非公式の愛称である。しかし未だに「シュリケン」ミサイルの印象は強く、
グレゴール帝時代になって新たに開発された中型対艦ミサイルには、その連想から公式に「クナイ(苦無、苦内)」という愛称が付けられた。