背中合わせの二人

有川浩氏作【図書館戦争】手塚×柴崎メインの二次創作ブログ 最近はCJの二次がメイン

今夜は聖夜~Another Party~ブロマガ連載開始!

2011年12月11日 06時43分21秒 | 雑感・雑記
【今夜は聖夜】第八話より

  手塚は貪る。柴崎の肌を。
 そう、それはまさに貪ると形容するにふさわしい行為だった。
 ああ……、もうだめ。
 あたし、溶けちゃいそう。
 暖房で暖められた部屋の窓に雪が当たるなり消えてしまうように、あたしももう芯を無くしてしまいそう。
 柴崎は手塚の腕の中くたりとなった。その身を支えて彼はいっそう吸い上げる。
「柴崎、こっち向いて」
 今の彼ならかんたんにそうさせることなどできるのに、わざわざ口に出して言う。その意地悪さが、今夜はとても憎らしく思う。
「……」
目線で掬い上げるように後ろを見ると、手塚が柴崎の目の高さまで屈む。
彼女の頬を両手で包み込むようにして、手塚は額に額をくっつけた。
しばらくそのままの姿勢でいる。呼吸を整えるみたいに。
近すぎて、顔がよく見えない。
というか、直視なんかできないわ……。
柴崎は伏し目がちになって手塚の胸筋や腹筋のラインを見つめる。さっき自分がつけた首の噛み痕も目に入る。
もう傷口は乾いて、鎖骨の辺りに血がこびりつくだけになっていたけれど。それでも痛そうでまともに見られなかった。
ごめんとまた口に仕掛けて先に言われる。
「ごめんな、俺もう……これ以上抑える自信、ない」 
そう低声で呟いて、苦しそうに口を噛んだ。
その表情を見ていたら、自然と動いた。
顔をずらし、自分の頬に触れる手塚の手のひらに唇を押し当てる。
そして柴崎は彼の親指を含んだ。口に。
会場でかぶりついたときとも、さっきまで手塚が吸い付いていたときとも全く違う口使いで、柴崎が彼を取り込んだ。
歯と歯のあいだに軽く挟む。手塚は指先に柴崎の温かい舌のうねりを感じた。
そうされた手塚は自分の腰の辺りに何か熱いものがよどむのを感じた。森に霞が立ち込めるように淡く、しかし何もかもすっぽりと覆い隠すように確かにそれは彼を押し包む。
裾を引いてたなびき、彼を別の場所へといざなう。
手塚は彼女の頬を自分の顔へと引き寄せる。柴崎は目を閉じおとがいを少し持ち上げた。
二つの黒い影のシルエットが、今、ひとつに重なり合おうとしていた。


 初めて触れる、柴崎の唇は柔らかく、そして甘く。
 しっとりと彼を押し包む弾力をもっている、――はずだった。
 しかし、それはかなわなかった。触れ合った瞬間、かちんと歯と歯が触れたからだ。
 ん?
 手塚は違和感を覚える。目を開けると、柴崎が「……ごめん」と指先で口許を押さえていた。
 そして手塚の視線を遮るように背を向け、フェイクの牙を口から外す。ブラウスの裾で拭って、そっとポケットにしまった。
 手塚は微笑った。そして、言った。
「吸血鬼ってどうやって好きな相手とキスするんだろうな。あんな鋭利な牙をもっていて」
 何気なく言った言葉だったが柴崎が反応した。彼の「好きな相手」というところに。
 無自覚に告白。ん、もう。
 ちゃんとしてほしいのに。こんな、キスに失敗したときじゃなく。
 柴崎は今度は自分から手塚のマントの袷をぐいと引き寄せ、背伸びして唇を奪いにいった。手塚は最初戸惑った様子だったがやがてスイッチが入ったように自分からも吸いにいく。
 息も継がせぬキスになった。
「ん……」
「……ふ、っ」
 手塚が、躊躇いがちに柴崎の歯の間から舌を忍び込ませた。拒絶されるかなとちらと心配したが、柴崎からも求めてくる。
「……」
「……う……」
 舌先を絡めあい、甘く噛みあう。
 吐息を重ねて呼吸のリズムを感じる。
 手塚は苦しげに一度身を離して、「柴崎」と呼んだ。
「これ以上したら、俺、歯止めが利かない。だめならもうだめって言ってくれ」
 肩で息をしている。興奮と照れくささのため顔が真っ赤だ。
 柴崎は髪のほつれを直しながら、
「あたしがだめって言ったらあんたは止めるの」
 ここで止められるの、そう言われているのが分かった。
 手塚はものも言わず柴崎を抱きしめなおした。きつく懐に閉じ込める。
 幸福そうに微笑んだ柴崎の顔は、抱きしめる彼には見えない。
「ねえ。電気、消して。鍵もかけないと……」
 笠原のことが気にかかったが、たぶん大丈夫だろう。
 堂上のところで一晩今宵は過ごすに違いない。
「分かった」
 頷いて手塚がマントを揺らして戸口まで行く。柴崎が気にかけたことをクリアして戻ってくる。闇に沈んだ部屋の中を、足音を殺して。
 暗順応できず、目の前が暗い。暗がりの中、抱きしめられる。
 男の力で。でも、きちんと加減されていると分かる力で。
 柴崎も手塚の背中を掻き抱く。
 彼の胸に頬を押し当て、
「ねえ、キスして。ずっとあんたとこうしたかった」
 素直にねだる。
 手塚の表情が次第に輪郭を持ち始める。優しい顔をしていることが分かった。
「俺も」
 そして口づけを落とす。好きと言わない女。だからこそ言わせたいと思う。
「でもあんたさっき、女に囲まれてでれでれしてたじゃない。真性のたらしなんだから」
 柴崎は手塚のマントの首紐を右手で解いてやりながら言った。すねた口調で。
「で、でれでれなんかしてない」
「うそ、してた」
 唇を尖らせる。愛らしい拗ね顔。
「お前だって、ファンに崇められて女王様みたいだったじゃないかまるで」
 手塚が反撃する。
「人のこと、SMクイーンみたいに言わないで。何よ、ジェラシー?」
「悪いか」
 手塚は開き直った。柴崎は「悪くはないけど」と嬉しそうに言って、マントの紐を外す。
 手塚の肩から漆黒のマントが滑り落ちる。ふぁさっと彼の足許に音を引いて。
 逞しい裸体が現れ、雪明かりにさらされる。柴崎はその首筋にそうっと手を伸ばした。
 下から、例の傷口を掬い上げるように。でも直接は触れずに。
「……噛んでごめんね。痕が残るわね」
「お前ならいい。お前のこれも、ジェラシーだろ」
 冷静に手塚が突く。柴崎は「うぬぼれないで」と目をすがめた。
「あんたが嫉妬する権利なんてないのよ。あたしに告白もしないで」
 まだ、直接気持ちを打ち明けてもいないんだからね。ちょっとごねたくて言ってみた。すると、
「好きだよ。たぶんお前が思ってる以上に、お前が好きだ」
 直球。どストレート。
 手塚はまっすぐ柴崎に想いを届けた。
 柴崎は硬直した。驚きすぎて、身動きがかなわない。
 凍ってしまった柴崎の身体をみたび抱き寄せ、手塚は囁く。
「他の女にでれでれなんかしてない。俺はお前だけだ。こんな風に抱きたいと思うのもお前だけだ」
「……手塚」
 柴崎はかすかに息を漏らした。その吐息ごと手塚は掬い取る。
 唇で。
 あごを手で固定され、手塚の口づけを深く受ける柴崎は、もう思考が働かなくなってしまう。
 理性を奪われる。
 最後の足掻きのように、柴崎は言った。
「それが嘘じゃないって証拠を見せて」
 今からここで。
 煽るように言ったが言葉は震えている。手塚はそれを上手に受け止めて、
「わかった」
と、柴崎の服を脱がし始めた。



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