背中合わせの二人

有川浩氏作【図書館戦争】手塚×柴崎メインの二次創作ブログ 最近はCJの二次がメイン

悪友

2024年01月13日 16時50分04秒 | CJ二次創作
「何を見てるんだ、ジョウ? 携帯で。写真か?」
「……オマエか。いや、特に何も」
「何もって顔かよ。当ててみるか?彼女だろ~」
「……何で分かるんだよ」
「お、否定しねえな。はは、分かりやすいからだよ。オマエは昔から」
「ーー」
「むっとするなって。種明かしするとな、やらしい顔つきしてたからだよ。携帯の画面眺めてるときのさっきのオマエがな。デレッと鼻の下伸ばしちまって。あんなの仕事じゃ見せねえから」
「悪かったな。鼻の下伸ばして」
「はは。いいからいいから。んで、どんな娘なんだよ。写真、見せろ」
「だめだ」
「なんだよ、いーじゃん。減るもんでもなし」
「いや減る。確実に減る」
「勿体ぶるねえ。何だよ、ひとり占めってか。独占欲が強い男は嫌われるぞ。キショいとか言って」
「そんな蓮っ葉な言葉遣いする子じゃない。生憎だな」
「へえ。育ちがいいんだ、よけいに見たくなった。なーなー見せてくれよう」
「猫なで声出したって駄目なものは駄目だ」
「とか言って、隙あり」
「あっ。オマエ、携帯返せよ、おい」
「だめー。もう遅い。はい、ロック解除して。顔認証と光彩認証で、はい、解けたー」
「……」
「ん?この子か。うわ、激マブじゃん、なんだよこれ、モデルか?女優さんみてえだな。きっれ~」
「おい、別のもスクロールして見るな。携帯返せ。もういいだろ」
「あらら。取り返されちゃった。……そっかー、いいなあオマエ。そんなきれいな娘が彼女なら、毎日張り合いでるよなあ。仕事も何も」
「……しばらく会えてないから、ちょっと電話でもしようかと思ってたんだよ。出張、もう二週間になるし」
「そうか、そうだよな。ここに缶詰め会議も二週間にもなりゃ煮詰まるわな。邪魔して悪かったな。外すからよ、かければいいし。声、聴きたかったんだろう」
「~~んなんじゃねえよ。時差もあるし、寝てるかもしれんし」
「まあまあ。やせがまんすることねえって。夜だっていいじゃん。少しだけでも話せたらラッキーじゃん。向こうだってきっと寂しがってると思うぜ? 二週間だろう?」
「……」
「さっきさあ、鼻の下でれでれに伸ばしてたからって言ったけど、違うんだ。オマエ、滅茶苦茶優しい顔してたんだよ。携帯見ながら。完璧、オフの顔。あんないい顔すんだなあオマエでもって思ってさ。
 ジョウにそういう表情させられるやつ、他にいねえからな。大事にしてるんだろうなって、なんか羨ましいよ。揶揄ってるわけじゃない。電話、してやれよ。彼女のために」
「……」
「じゃあな。いいか、ちゃんとしろよ。俺外すから。恥ずかしがるなよ。いいな。かならず電話しろ~」
「……なんだよ」


 はあ。
 ジョウは手元に戻された携帯に目を落とした。吐息を漏らす。
 そして、しばし沈思し、その後ためらいがちに連絡先の履歴をさぐった。呼び出しを終えてそこをタップする。
 数回のコールを聴く。えらく長く感じるのは気のせいじゃない。ややあって、
「もしもし? ジョウ?」
 弾んだ声が応答する。たかだかまだ二週間ーーされど二週間。懐かしく感じるのなんて、きっと俺はもう限界だったんだろう。
 君と会えない時間と距離がこんなにも俺にダメージを食らわせてる。
 あいつはそれを見通したんだな。俺が写真を見ているちょっとの間に。
「うん」
「珍しい、ジョウから電話なんて。嬉しい~、ちょうど声聞きたかったところなの。あたしから電話してもいいかなあって迷ってて。会議中なら悪いし」
「いや。大丈夫。ーーなんか、照れるな。こうやって電話で改まって話すと」
「うん。本当ね」
「実は、いまダチに背中を押されて。彼女ンとこに電話しろってせっつかれた」
「彼女」
 アルフィンが言った切り、電話の向こう硬直する気配がする。ジョウは耳たぶまで熱くなった。じわじわと。
「ーーそこは、否定しなかったんだ。ジョウ」
 隠そうとしてもどうしても滲み出る嬉しさを押し隠すみたいに、アルフィンが言う。
「……だって、事実だろ」
 それだけ言うので精いっぱい。情けねえ。
 そんなジョウにアルフィンが言った。
「じゃあその人に感謝しなきゃね。二重の意味で」
「……ん」

 やはり持つべきは友--いや悪友だな。ジョウはうっすら微笑を湛え、数億光年先の<ミネルバ>にいるアルフィンを思いやりながら、他愛ない会話に興じていくのだった。

END


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