ペロキャン

服大好きな管理人が日常やオタク趣味などについてだらだら垂れ流すブログです。

1/2の騎士~harujion

2009-02-24 22:15:34 | 読書
初野晴先生の「1/2の騎士~harujion~」を読みました。

最初に言ってしまいますが、ものすごく面白かったです。
そして感動で泣けました。
まさか泣くとは思ってませんでした意外な伏兵。

まずこの本を手に取ったきっかけは
雑誌メフィストの書評に取り上げられたので興味を持ちました。
実際手に取るとわかるんですが、表紙がすごく可愛い!
裏表紙まで絵が続いていて水彩タッチのお花が描かれています。
裏表紙のあらすじには「女子高生・マドカが恋に落ちた相手—それは最強の騎士『サファイア』。」(一部抜粋)。
それを見て、「おお、この表紙のロングヘアの可愛い女の子がマドカちゃんで
抱きしめられてる短髪の男の子がサファイアか~
二人はラブラブ(死語)になるんだろうな☆」
と、少女漫画チックな展開を期待しつつ読み始めました。
心の奥底では「まーた講談社ノベルスお得意のラノベ系ミステリ(風味)かよ( ゜д゜) 、ペッ」
と冷めた目で見ながら…。(ゴミまほろで痛い目見たからな…)

…そしたら…そしたら…
主人公マドカ(苗字)はガチレズ女子高生で
サファイア(仮名)はロン毛の女装趣味変態少年(しかも幽霊?)かよ!
表紙の絵は想像と男女逆なのかよ!(´ω`;)
キモいし…読むのやめようかなあ…と思いつつも惰性で文を追う私。
が、文章はマドカの一人称で読みやすいし
いちいち引きが上手くて先が気になってどんどん読み進めてしまう面白さ。
プロローグまで読む頃にはすっかり引き込まれてしまいました。
何よりマドカのキャラがすごく良いです!
父子家庭の家計を握りつつアーチェリー部の部長を務めるしっかり者で正義感が強く
どんな状況でもへこたれず前向きに行動する姿がとても気持ちよく魅力的です。
レズビアンなことは別に気になりません!
読んでてマドカ頑張れ!って応援したくなります。
ひとつ難点を挙げるなら、彼女は正しい人達に正しく育てられてきているので
言うことは時に綺麗事すぎるかなあという感じですが
綺麗事も言えない人間は嫌いなので無問題。
サファイアも女装や女子が好むようなかわいいものが好きなだけで女々しいわけでもないし
むしろ18歳?とは思えないほど知識量が多く賢いので普通にかっこいいです。
そんな二人が住む東北の地方都市で起きる事件に立ち向かっていく、というのが
全体のあらすじです。
事件は連作短編形式で5つ、それぞれに出てくる登場人物が
後の事件にも関わってきたりして、複雑さというよりは物語に厚みを出しています。
またこれらの事件は現代社会の抱える問題に根ざすもので読んでいて胸が痛かったです。
ミステリとしては「本格」と呼ぶにはちとゆるいですが
ストーリーテリングが上手いので納得いく展開で面白いです。
長くなりますが以下、章を追いつつ感想です。
ネタバレです。

まず、何の章タイトルもなくプロローグなわけですが。
マドカの高スペックぶりにびっくり。
成績は学年二位でアーチェリーではインターハイ五位、しかも部長。
もちろん後輩達からは「マドカ先輩(はぁと)」と人気者。
どこの女手塚国光(^ω^)
でもマドカはレズだったのです!(奥様は魔女風に)
絶賛片思い中の相手にしてマドカにしか見えないサファイアが
男だと知ったとたん恋が冷めるのがさすが(笑)
コミカルな出だしでつかみはばっちりです☆

・騎士叙任式
この章タイトルが面白いです。
まるでファンタジーのレベルアップみたいで。
「もりのさる」事件では携帯メールを使った猿探しと見せかけて
中学生の違法派遣犯罪を取り扱ってるわけですが
昨日ちょうどタイムリーに中学生の違法派遣事件が報道されて
「ああ~…('A`)」と思いました…。
この作品に出てくるのは決して「お話世界の絵空事」じゃないんだなと。
子供の頃は制限が多くて、何かと不満がたまりますが
それにはちゃんと理由があるんですよね。
大人じゃないと読んでもわからないかもしれません。
でも現実のヤクザにこんな良い奴はいねーよ(苦笑)

・序盤戦
盲導犬を狙って殺す屑野郎を追う事件。
ミステリというよりサスペンスな展開でした。
それにしても犯人以外善人だらけですなあ。

・中盤戦
部屋の主が気付かぬうちに自室に侵入し「何か」をしていく犯人・インベイジョンの話。
個人的にこれが一番面白かったです。
「誰か」が自分の部屋に入った「気配」はあるのに
痕跡は無く目的もわからない、といった状況がハラハラできてよかった。
パソコンの中で大麻を育てるというアイデアも意外性があって良いです。
あと最近大麻事件が問題になっているのもありますが
ボットウィルスのように被害者はそのつもりがなくとも
攻撃者に操られ隠れ蓑にされるというのが他人事じゃないなと。
犯人をおびき出すためのサファイアの行動が泣けました。

・終盤戦
毒ガスを散布する無差別テロリストの話。
正直オチは見え見えなんですけどラストに持っていくまでの
伏線の張り方が丁寧で良いです。
突っ込みたくなるような非現実的な設定は「ファンタジックミステリー」らしいので
目を瞑ることにします(´ω`;)
前3つの事件と違って、追い詰められた弱者による犯罪なので痛々しいです…

・一騎打ち
行方不明者の遺族に遺灰?によるガラス細工を送りつける異常者の話…ですが
前章でちょっと触れられた、マドカの亡母の加害者家族について
そしてサファイアの正体解明がメインで事件がふりかけに見えた(´ω`;)
消えかけていく体とは逆に、記憶を取り戻していくサファイア。
被害者遺族と加害者家族の関係って、現実にはどうなんでしょう?
経験したことのない私にはわかりません。
加害者自身のことは一生許せないだろうけど、その家族は関係ない…なんて言えるのは
実際、その立場になったことの無い者の傲慢でしょうか。
ただサファイアはずっとマドカ達のことを気にかけていて
そしてどんな出会いであったにしろ、マドカのことを助けてくれた。
それで充分だと思います。

・後日談
伏せますがサブタイトルが泣ける…
上京する親友との別れ。
その先がどんな風になっても、思い出は消えないし支えになるんですよね。
サファイアがもうサファイアでなくなっても、マドカは彼の助けをする。
サファイアが今までしてくれたように。
二人がまた出会って幸せになる事を祈らずにはいられません。
時折出てくるお花の描写が作品全体に優しい雰囲気を出していて素敵でした。
全部読んで、はじめて表紙の意味がわかりました。