調布駅前はちょっとした祭りのように賑わっていた。先に触れた通り、ラグビーW杯の真只中であったからだ。
調布駅前にはPARCOがあって、レストランフロアにトンカツ「サボテン」がある。妻と月1程度で行っていたところだ。ところが、食堂街が改装とのことで駅ビルのトリエに向かう。そこにはトンカツ「まい泉」がある。
じつはチェーン展開しているレストランがどちらかといえば好きではない。チェーン店にはいかないと決めてしまえば、外食自体がかなり難しくなるので、そんな無理をいう気はさらさらない。社会学で言う「マクドナルド化」の進展、つまり飲食やサービス、さらに日常生活に至る領域全てにおいて合理化、効率化が進んでいることだが、人々の生活全般を企業が覆うようで好きにはなれないのだ。
効率化されれば、どこかに不合理なことが起きる。非正規雇用が増えるとか、色々あるだろう。合理化の不合理性であるし、エントロピーの法則として必然的に無秩序がどこかに生じる。
妻には「そんなこと言ったら、生活できないでしょう」とたしなめられるのだが、この社会が矛盾を抱えながら、ただ進んでいくんだと思うと、どこかやりきれない思いを抱えてしまう。もう強迫神経症かもしれない(笑)この問題に関しては、またの機会に。
と言いながらも、「まい泉」に向かう。ひと通り、食堂街のいくつかの店を見比べながらも、トンカツ好きの私としては向かうしかない。ただ店を決めるのに優柔不断な性格が出てしまう。弟がいるのだが、二人で店を探すと二人とも店を決められないのだ。どうも家系?である。
妻に他の店を見る必要がないでしょうと再度たしなめられながら、店に入り、奥の方のテーブル席に案内される。20日ぶりの病院食以外、外食である。特に感慨などもないのはもちろんだが、そんな時間を気にする事もなく、せっかちの妻は確か“彩御膳”的なセットを頼むといって、私に注文を催促してくる。
一応何を食べるかは決めているが、メニューぐらい見たいと思って、のんびり構えていたのだが、そういうわけにもいかず、妻のペースで事は進む。で、ロースカツ定食注文。
夕食にはかなり早い時間なので、あまり混んでいない。妻には塩分注意と指導を受ける。それぞれ食事が配膳されてくる。店員さんにひとつ小皿をお願いする。トンカツにソースをかけるのではなく、トンカツを小皿に入れたソースにつけるためである。栄養士からの指導である。塩分取りすぎの小さな予防策だ。
キャベツの千切り用のドレシングだが、妻はドボドボかけている。妻はトンカツ屋に来て、肉を食べるより、キャベ千を食べにきているかのようだ。おかわりももちろんする。私は本当に少量をふりかける。ギリ味を感じる程度にだ。
味噌汁を飲もうとすると、妻に取り上げられる。気づきやがった。一口だけ飲んで終わりにした。付け合わせに小鉢と漬物がついているが、塩分を考え、手を付けないでおく。両方妻にあげた。
とはいえ、こんなまともな、つまり病院食ではない食事は久しぶりだ。それでも以前なら、妻が残すご飯を食べたり、それでも足りなければお代わりしていたが、そういう気持ちにならない。十分お腹いっぱいだ。
この1週間ぐらいは病院食では食べ足りないと思っていたが、いつの間にか胃が小さくなってしまったんだろう。満足である。
ごちそうさま。子供連れ4人家族がトンカツを食べていた。なぜか思い出される。