もう20年以上前のこと。25年経つかも。まだ学生の身分の頃の話である。
大晦日当直の仕事を終え明けて、朝飯を食べようと松屋に入った。新橋近辺である。普段より客が多いので驚いていたが、元旦なので営業している店も少なく、初詣のついでに若者が立ち寄っているという感じだった。
店員さんが忙しそうに働いている。しかも1人で。そのため、丼系と定食系、そして配膳と片付け、接遇を1人でこなさなければならない。見ると、片付け物と洗い物が溜まってしまっているが、手をつけられないでいる。
その店員は20歳代の男性であったと記憶しているが、その様子から「やってられない」という感じを醸し出している。そのため僕のところには、お茶も出てこない。
それでも客は「お茶まだ」「水ちょうだい」「牛丼まだ」「随分待ってるんだけど、まだ」とこんな感じで、店員を言葉で突く。その度「もう少しお待ちください」などと応えているのだが、顔は真っ赤になっている。怒っているのだ。
1人ぶつくさ言いながら動いている。僕にその声が聞こえているのだが、彼が怒っている1番の理由は、バイトの1人が遅刻し、それでも深夜勤務のスタッフが元旦だからとトットと帰っていったことのようである。だから店内ワンオペになっているのである。
ついに彼は切れた。「やってられねえ!」と言いながら、目の前のプラスチックの容器を鉄板に叩きつけたのだ。「ガシャーン!」店内は静まった。
彼は我に返ったのか、「すみませんでした」と一言述べて、業務に戻った。
今思えば、彼の立場になれるかどうか、彼の気持ちを想像できるかどうかなどと思い出す。働く人をどのように見ているのか反省する経験であった。
当時の僕はぼんやり驚いていただけだった。でも遅刻した人は来たのだろうか、怒られたのだろうか?そんなことを考えていたのを記憶している。