こんなことが報道の世界におきている!?。
まずはメディアの現状について、私たちは知ることから始めよう
①【特別寄稿】ス! 官邸への忖度か!? 参院選静岡選挙区に関する報道をめぐって、『報ステ』から消えた『6分』のVTR!官邸は国民民主候補への支援と引き換えに改憲賛成を要求か!? 2019.7.20 IWJより
(取材・文:「某記者クラブに所属する現役新聞記者」伊藤直也=筆名、前文:IWJ編集部)
(略) そして7月17日、またも報道ステーションで「異常事態」が起こった。
17日の同番組は、参院選の静岡選挙区で立候補している国民民主党の榛葉賀津也(しんば かづや)候補を支援するよう、菅義偉官房長官が各所に要請しているという、衝撃の内容を報じるはずだった。しかし、放送直前になって、用意していた約6分のVTRが丸ごと削除されることになったのである。
IWJは、この選挙報道カットという「異常事態」は、官邸からの「圧力」か、あるいは官邸への「忖度」によるものではないかと推察し、テレビ朝日に取材を試みた。テレビ朝日から返ってきた回答は、「そのような事実はありません」ということだった。
この回答を受け取った瞬間は腑に落ちなかったが、冷静に振り返ってみると、確かに「そのような事実はない」のかもしれない。これまで、権力から執拗な圧力を加えられてきたメディアは、次第に萎縮し、忖度するようになっていった。こうして忖度を何重にも積み重ねていった結果、今や、「忖度の城壁」のようなものを築き上げてしまったのではないか。
しかし、そんな「忖度の城壁」の中から、この報ステVTR削除の内実に迫った貴重なレポートがIWJへ寄せられた。記者クラブ所属のある新聞社の現役記者・伊藤直也氏の寄稿である。これは、テレ朝内部の報道ステーション関係者からの証言にもとづいて書かれたスクープ記事である。(IWJ編集部)
「用意していた約6分の枠がすっ飛んだんです」~「報道ステーション」が報じようとした官邸による静岡選挙区介入疑惑
17日夜、その日の放送開始まで1時間となった午後9時、テレビ朝日系列の「報道ステーション」で異例の事態が起きていた。当時の状況を知る報ステ関係者は明かす。
「用意していた約6分の枠がすっ飛んだんです」
問題は突然霧散したその映像内容だ。17日の新聞のテレビ欄にはこう記載されていた。
「激しい駆け引き…静岡選挙区」。用意されていたVTRの概要はこうだ。
菅義偉官房長官が静岡選挙区で立候補している国民民主党の榛葉賀津也候補を支援するよう地元有力者に要請している――。
自民党幹部にして官邸のトップが、野党である国民民主党の候補の支援を呼びかけているという驚きの事実を報じる内容だったが、これが丸ごと削られた。
静岡新聞と静岡朝日放送が官邸による静岡選挙区介入疑惑を報道! 菅官房長官が国民民主・榛葉賀津也候補を支援!?国民民主を改憲勢力に引きずり込む狙い!?
ここに至るまでには曲折があった。元々この「官邸が静岡選挙区に介入か」というネタは、地元の静岡新聞が13日朝刊一面トップで報じた。
- 参院選静岡選挙区 野党激突に「不思議」な動き、官邸介入か(静岡新聞、2019年7月13日)
これまで自民党を支援してきたことで知られる大手自動車メーカー「スズキ」の鈴木修会長が、榛葉氏支援を明言したことや、自民党関係者による発言として「首相官邸からの依頼だ。(参院選後の)改憲を意識しているのだろう」といったコメントを紹介していた。
さらにこの2日後の15日。静岡朝日放送(SATV)が、約9分枠で「官邸参戦?静岡に異変」とタイトルを打ち報じた。
鈴木修会長の支援表明のほか、関係者への取材にもとづくとした上で、菅官房長官が直接電話で「榛葉氏を落とすわけにいかない。榛葉氏を助けてやってほしい」と要請してきたことなどを放送した。
この中では、榛葉氏本人が支援要請自体を否定していたり、国民民主党の前原誠司氏が「自民党が(榛葉氏に)手を差し伸べることはありえない」と話す姿が盛り込まれていた。
この背景には、静岡選挙区の情勢が深く関わっている。
定数2の静岡選挙区には、自民党・牧野京夫氏、国民民主党・榛葉賀津也氏、立憲民主党・徳川家広氏、共産党・鈴木千佳氏、諸派・畑山浩一氏の5人が立候補している。
報道各社の情勢調査では、牧野氏が抜け出し、榛葉氏が優勢、徳川氏が追い上げていると報じられている。このため、榛葉氏を引き上げれば、自動的に立憲民主の徳川氏が落選する構図となっている。
そうした構図を見越してか6月、東京都内のホテルで安倍晋三首相が自民静岡県連関係者に向けてこう問いかけた、と時事通信は今月12日午前の配信記事で報じていた。「立憲民主が当選したら困るよね」
- 立憲が国民に「刺客」=官邸参戦で対立激化-静岡【注目区を行く】(時事通信、2019年7月12日)
「改憲勢力3分の2」を維持できるかどうか微妙な情勢にある自民党にとって、選挙後に協力関係が築ける可能性のある国民民主党と関係を深めておきたい――。そうした思惑が透けて見えるというわけだ。
菅官房長官会見が引き金か!? 番組チーフプロデューサーから「こんなの放送できるわけないだろ!」と怒号が響く!
そうした構図と報道を踏まえ、選挙報道の枠として報道ステーションはVTRを用意していった。
15日のSATVによる報道の翌日。16日午前に行われていた菅官房長官会見の場で、テレビ朝日の記者がこう質問していた。
「参院選の選挙区についてお聞きします。静岡選挙区で、選挙後の協力を見据えて、官邸が国民民主党の榛葉候補への支援を行うよう、各所に要請しているという地元の報道がありますが、事実関係をお聞かせください」
菅長官は即答した。
「そうした事実関係はありません」
にべもなく、次の質問へ移った。
▲菅義偉官房長官(首相官邸ホームページより)
そして翌17日。状況が一変したのは午後7時ごろのことだったという。
問題のVTRの原稿をチェックしていたチーフプロデューサーが、30人ほどのスタッフが詰めているニュースルームに怒鳴り込んできた。
企画の担当者を名指し、「こんなの放送できるわけないだろ!」と。
それ以降、番組幹部がバタバタし始めたという。そして午後9時。ニュースルーム全体に一斉連絡としてアナウンスが響いた。
「選挙のVを飛ばします」
約6分間の穴は、既に用意していた別のVTRや、スタジオでのコメントなどを少しずつ伸ばすことで埋めていったという。
番組の最後には、視聴者にとって不可解でしかないテロップが流れた。
「番組の内容を一部変更しました」
テレ朝の関係者は一連の経緯について、こう言った。「あの長官会見での質問をきっかけに、官邸が警戒を強め、圧力をかけ始めたのではないか…」
「BPO案件」を言い訳に使う卑怯!権力におもねり、事実をねじ曲げ、重要な事実を報じないという「報道」の罪
官邸という巨大権力を前に、かしずき、おもねり、萎縮し、忖度する大手メディアの異様は、権力をつけ上がらせ、その暴走を看過するだけにとどまらない。主権者に対し、正確な情報を提供しないことはむしろ権力者の側に偏った立ち位置にあることを意味する。
報道に課せられた「公平中立」は、時の権力への傾倒を許さない規範としての「不偏不党」を意味する。
権力におもねり、事実をねじ曲げ、時に重要な事実を報じないという「報道」を、公共の電波で流し続ける罪を許してはならない。
約6分間の問題のVTRを流さずに終えた17日夜の番組終了後、チーフプロデューサーは、数多くのスタッフを前にこう怒鳴り散らしたという。
「こんなの放送していたらBPO案件だ!」
これは、粗雑な誤導である。BPO(放送倫理・番組向上機構)は放送への苦情や放送倫理、人権、青少年への影響といった問題に対応している第三者機関だが、放送すべき内容を放送しない言い訳や、現場の萎縮や忖度を再生産しかねない「文句」として使っているとしたら、卑怯としか言いようがない。
報道人は、孤立を恐れず、卑怯者の指弾に屈することなく、気概と反骨を胸に、報ずべきことを報じるのがその職責である。
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もはや権力がメディアに圧力を加える必要すらない、「焦土」と化したメディアの惨状! しかし、そこにもわずかな希望が
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報ステの「消された6分間のVTR」は、この国の報道の現状を象徴している。
権力と対峙すべきメディアのありようを見わたせば、「焦土」という言葉がふさわしい。
映画「新聞記者」では権力とメディアが闘う姿が描かれているが、そうした政治権力による圧力が現実にメディアに対して加えられる景色は、もう既にない。
有力政治家がテレビ局に乗り込んで番組改編を迫ったり(2001年、NHK番組改編問題)、時の総務相が放送法を根拠に電波停止の可能性に言及したり(2016年、電波停止発言問題)、政権与党がメディア各社に「公平・公正な報道」を求める文書を配布したり(2014年、2018年)といったことが繰り返されてきた。
こうした蹂躙の積み重ねによって、メディアは萎縮し、忖度し、同調圧力に屈し、そうした配慮を色濃く反映した人事異動が繰り返され、「問題を起こさない人」が要職を埋め尽くしていった。
歴史ある既存メディアの同業者なら思い当たる節があるはずだ。ある記者クラブに属し、記者歴10年余りの私もまた、そうした中にいるからわかる。「あの人も、あの人も、気付けばそういう人じゃないか」と。
その結果、報道の現場では何が起きているか。
菅官房長官の夜回りでは、番記者たちが紙袋の中に携帯電話とボイスレコーダーを入れて菅長官に見せ、頭を下げてからコメントを取るという異常な振る舞いが行われたと、月刊誌「選択」が報じていた。
- 菅官房長官に屈服する「番記者」 取材の際の「ある儀式」が定着(選択出版)(Yahooニュース、2019年6月10日)
ほぼ毎日行われているその官房長官の定例会見でも、機嫌を損ねないようにと、番記者たちは先回りした配慮を心がけている。
そうした屈折した緊張感の中にあって、ずかずかと土足で踏み込んでくる東京新聞の望月衣塑子記者が展開する質問攻勢は「邪魔」でしかないのだろう。
長官会見を主催する内閣記者会(記者クラブ)は、官邸側から望月記者に加えられ続けている質問制限や質問妨害を問題視せず放置している。
望月記者の質問は、会見終了直前に2問だけとされ、それが終わると幹事社の記者が「それでは以上です」と言う異常が常態化している。この惨状に、内閣記者会を構成する各紙エース級の記者たちは一切口を挟もうとしない。
全国紙の政治部記者はこうも言っていた。
「望月記者の質問によって菅さんの機嫌が悪くなると、その後も取材がやりにくくなる」
焼け野原だ。燃やし尽くされ、毛も生えない。憤怒さえあっけなく吸い込まれ、徒労感しか残らない。何より切ないのは、同じ苦境にあるはずの同業者である記者たちの多くは、現状の問題を語ろうものなら、視線を逸らし冷ややかにうなずく程度だからだ。
そうした焦土にあって、しかし焼き尽くされたからこそ、見通しは良くなり、立っている報道人は互いの存在に気付いている。
活字で、映像で、コメントで、最後の1分、最後の1行に気概を込めようと、今日がダメなら明日だと、腹に力を入れている報道人は、少なからずいることを知る。見わたす限りの焼け野原だからこそ、この焦土はもしかしたら肥沃なのかもしれない。そこにしか希望を見いだせないのは、日々の惨状があまりに残酷であることの裏返しでもある。
(伊藤直也氏による寄稿はここまで)
②東京新聞2019.7.23【首相の1日】より。
↓(日本のメディア 情けない。NHKは例の島田敏男氏です。)
51分、東京・赤坂のイタリア料理店「キッチャーノ」。政治ジャーナリストの田崎史郎氏、石川一郎テレビ東京ホールディングス専務、小田尚読売新聞東京本社調査研究本部客員研究員、粕谷賢之日本テレビ報道局解説委員長、島田敏男NHK名古屋放送局長、曽我豪朝日新聞編集委員、山田孝男毎日新聞政治部特別編集委員と会食。
♢東京新聞Webの原文のありかは以下
https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/shusho/CK2019072402000194.html
【首相の一日】7月23日(火)2019年7月24日 紙面から
【午後】0時34分、井上義行元参院議員。2時、秋葉外務事務次官。17分、金杉憲治外務省アジア大洋州局長加わる。36分、自民党細田派の下村博文事務総長。55分、谷内正太郎国家安全保障局長、外務省の秋葉事務次官、鈴木量博北米局長、高橋防衛事務次官。3時8分、谷内国家安全保障局長、外務省の秋葉事務次官、鈴木北米局長。27分、谷内国家安全保障局長、北村滋内閣情報官、鈴木哲外務省総合外交政策局長、防衛省の槌道明宏防衛政策局長、山崎幸二統合幕僚長。50分、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と電話会談。4時9分、根本匠厚生労働相、厚労省の土生栄二官房長、宮崎雅則健康局長。23分、根本厚労相。45分、麻生太郎副総理兼財務相、財務省の岡本薫明事務次官、太田充主計局長。55分、麻生副総理兼財務相。5時7分、月例経済報告関係閣僚会議。24分、北村内閣情報官、秋葉外務事務次官。38分、北村内閣情報官。6時12分、東京・東麻布の中国料理店「富麗華」。自民党の二階俊博幹事長、加藤勝信総務会長、岸田文雄政調会長ら幹部と参院選の慰労会。51分、東京・赤坂のイタリア料理店「キッチャーノ」。政治ジャーナリストの田崎史郎氏、石川一郎テレビ東京ホールディングス専務、小田尚読売新聞東京本社調査研究本部客員研究員、粕谷賢之日本テレビ報道局解説委員長、島田敏男NHK名古屋放送局長、曽我豪朝日新聞編集委員、山田孝男毎日新聞政治部特別編集委員と会食。9時19分、東京・富ケ谷の私邸。